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第44話
しおりを挟む「さすが、我が子を殺した仇の相方なだけあって、本当にしつこいねえ」
大鎌使いのクレスが見せる粘りに対し、一時は驚いた様子を見せた青年だったが、すぐにいつもの温和な表情に戻った。
「……へっ。青二才、次はてめえの番だからなぁ、覚悟しやがれ――!」
ゆらりとした構えから一転、驚異的な速度で青年の眼前へと迫ったクレスの大鎌が牙を剥く。それは誰の目にも避けられないと確信できるほどに鋭い一撃だった。
「――ゴーレム、出番だっ!」
「ぐっ……!?」
激しい衝撃音と土埃が生じたその場には、一体のゴーレムが主の青年を庇うような体勢で立っており、体の中心が大きく斜めにズレたのち、異様な速さで元に戻るのだった。
「……な、なんて再生能力だ……。てか、ようやくおでましかよ、本物の変異種ゴーレムさんがよぉ……」
「フフッ……。これから君はとても後悔することになる。本物を呼び出してしまったことで、あの世へ逝くまでの間、余計に苦しみもがくことになるんだからね……」
『ウゴオォォッ……』
青年が得意げに見上げる本物の変異種ゴーレムは、見た目はまったく変わらないものの、明らかに普通のものとは違う空気を発していた。
「どう? 怖い? この子はねぇ、分裂できる能力に加え、体力、防御力、攻撃力、機動力、再生能力、学習能力……どれをとっても超一流だから、怖がるのも無理はないよね。君じゃ到底かなわないんだから、もし望むのであれば、恐れをなして逃げ出したっていいんだよ……?」
「……逃げ出すだぁ? へっ。それどころか逆に面白くなってきたし、俄然やる気が湧き出してきやがった。まったく、俺ってやつはよぉぉ……」
「あっそう。それじゃ、このバカの気の済むまで遊んでやって、ゴーレム!」
『『『『『ウゴオォォォッ――!』』』』』
「――させるかあぁぁっ!」
分裂したゴーレム群の襲撃をクレスの大鎌が迎え撃ち、その強靭かつ分厚い体を手足ごと刃が完全に断ち切った、と思われた。
「はっ……?」
即座に再生した変異種ゴーレムの右拳が、呆然とするクレスの横っ面を捉える。
「ぐあああぁぁっ……!」
クレスがギルドの外壁に背中から激突したのち、ずれ落ちた彼の頭があった場所にゴーレムの左拳が大穴を開ける。
「「「「クレスッ……!?」」」」
「フフッ……。何が死神だよ。分裂したゴーレムたちに戦闘面を学習させ、それを全て吸収できる我が子――変異種ゴーレムには遠く及ばない。言っとくけど、簡単には殺さないよ。ラウルが来るまで沢山苦しんでもらうし、彼が来たらその目の前で無惨に殺してあげる……」
ゴーレムの主が悠然とした面構えを見せる中、対照的に『暗黒の戦士』のダリアたちはこれでもかと悲愴感を滲ませていた。
「――チ、チッキショー! このままじゃクレスがやられちまう! こうなりゃ、私たちで助けるしかねーぜ!」
「リ、リーダー、正直、あっしらの力じゃ無理だと思うっす……」
「……わ、わしもセインの言うように難しいと思うがのう……ただ、ラウル先生の相方をこのまま見殺しにはできんぞい……!」
「……自分も、助けたい……」
「おしっ。反対してるのはセインだけだし、多数決で――」
「――お待ちください!」
「「「「っ……!?」」」」
それまで様子を見ていたイリスが、強い表情でダリアたちの前に立ち塞がる。
「僭越ながら……あなた方の力では、クレス様の足を引っ張るだけだと思いますので、助けに行こうとされるのはどうかおやめください……」
「なっ……お、おいおい、イリス。私たちだってこう見えて一応A級パーティーで、S級に近い立場なんだぜ……!?」
「ダリア様。それはわかりますが、クレス様とあの変異種との戦いはご覧になられたでしょう。下手をすればあなた方まで危険な目に遭いかねないのです。それに、私だって死ぬほど助けにいきたいんですよ。だって、クレス様は昔からの顔馴染みですし、何よりあの方は、私の想い人であるラウル様の大切な友人ですから……」
「「「「……」」」」
涙を浮かべたイリスの懸命な訴えに対し、ダリアたちは納得したのか一様に黙り込むのであった。
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