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第50話
しおりを挟む『『『『『ウゴオオオォォォォッ……』』』』』
変異種ゴーレムが咆哮するのと同時に分裂し、俺たちの前でその数を一気に激増させるが、そこからすぐに襲い掛かってくることはなかった。
それどころか、じっとこちらの様子を窺っている感じだ。
おそらく、飼い主である錬金使いのハンスが俺の話の続きを聞くために待機させてるんだろう。多少の動揺や威嚇の意味合いも込めて。
「フフッ、僕の負けだって……? 実に奇怪なことを言うもんだね~。ラウル、よかったらその理由を迅速に説明してくれないかなあ? あ、お得意の強がりとかジョークとかは一切なしでね」
「……ハンス、さっきも言ったはずだ。なのに信じられないっていうのか? 俺は強がりなんて言わないし、冗談を言うつもりもない。その理由はお前の近くにいるそいつがよく知っている」
俺は杖の先で本体のゴーレムを指し示しつつ言葉を続けた。
「学習能力が格段に優れているっていうそいつに、徹底的に負け方を教え込んでやったからだよ」
「……負け方?」
「そうだ。ゴーレムはひたすら同じように俺を攻撃し続けることで、その動きは徐々にワンパターン化していった。それで俺自身余裕ができたのもあって、避ける際に少しずつ自分の動きも劣化させていった。つまり、鈍くなった動作を学習したゴーレムもまた比例して鈍化していったってわけだ」
「……はあぁ? そ、そんな見え透いた出鱈目をよく言えるね。たったそれだけのことで、今まで蓄えてきた膨大な戦闘経験が台無しになるわけがないだろ……!」
「ハンス、まだわからないのか? ヒントは、ゴーレムの唯一の弱点である知能だ」
「ち、知能だって……?」
「そうだ。ゴーレムは身体能力があるから戦闘面における学習能力は高いが、知能はいくら変異したところで低いものは低い。それに、知能は記憶とも関係していて、知力が低いゴーレムの頭にはもう俺をひたすら追い回した記憶しかない。疑うなら試してみるか?」
「……そ、そんなの、ハッタリだ……ハッタリに決まってるし、今からそれを証明してやる! 行けっ、ゴーレムッ……!」
『『『『『ウゴオオォォッ――!』』』』』
「――ルエス、ユリム、カレン、頼んだっ……!」
いつもの如く、変異種ゴーレムの分身をルエスたちに託し、俺は本体だけを引き取ることにする。
「了解っ! ラウル君、僕たちはもう手慣れたもんだよ!」
「ですね。しっかり引き受けますです……!」
「丁重にお預かりするわねっ!」
実に頼もしい声が返ってくる。
ゴーレムは何度も分裂して増殖することができるといっても、増やせる数には限度があり、一定数減らない限り再び分裂することはできないということがわかっている。
なので、ルエスたちが大量のゴーレムを預かってくれている間、俺は本体のみを相手にできるってことで凄く楽になるんだ。
「さて……そろそろ終わらせてやろう」
変異種ゴーレムの進化がもうすぐそこまで近付いてきているのは、『感知魔法』によっていつもと違う匂いがし始めているのでわかっている。
とはいえ、進化が起きる前にやつを倒すにしても充分間に合う自信があるし、ゴーレムの経験値をリセットしたことでその準備は完了している。
そういうわけで、俺は回避中に使用してなかった『筋肉強化魔法』『覚醒魔法』に加え、杖の強度を活性化させる『武器強化魔法』も使用してゴーレムに殴りかかり、文字通り緩急の差というものを見せつけてやった。
『ウグアアアアアアアァァァッ!』
「……な……な……?」
強靭なゴーレムの体と、飼い主の余裕の表情が見る見る崩れていくのがわかる。自慢の再生能力がまったくといっていいほど追いつかないレベルで。
それもそうだろう。それまで間一髪で避けるだけだった貧弱な獲物が、突如として屈強になり牙を剥けばこんなものだ。
しかも、変異種ゴーレムはやたらとタフなだけに殴り甲斐もあって気分爽快だ。さあ、一気にとどめを刺して終わらせてやるとしようか。
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