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一緒にダンジョン編
25 烙印の魔導師は
しおりを挟むレオン殿下達とその後別れ、私とアンくんは再び隠し部屋へとやって来た。
【魔導師さん!】
「うわぁ!!」
部屋に入った途端レッドドラゴンが私へと突進。
私はそのレッドドラゴンを受け止め、よしよしと頭を撫でる。
正直、今の突進私じゃなかったら壁にめり込んでいたと思う。
【魔導師さん! 魔導師さん! 私、お外に行きたいです!】
「もちろん。連れて行ってあげるよ」
【嬉しいです。魔導師さん大好きてす!】
レッドドラゴンはそう言うとすりすりと顔を私へとすり寄せてきた。
人なっつこいドラゴンだなーと思いながらも私はレッドドラゴンの頭を優しく撫でる。そうすればレッドドラゴンは嬉しそうに小さく鳴いた。
【魔導師さん。ずっと気になっていたんですがあの子は?】
レッドドラゴンはアンくんへをじーっと見つめる。
「あの子はアンドレって言って竜人の子なんだよ」
【やはり竜人でしたか! 人間とは違うオーラがあったのでもしやと思っていました!】
レッドドラゴンはそう言うと、アンくんの方へとバサバサと大きな羽を動かしながらアンくんの元へと向かう。そんな姿が可愛いような気がして私は思わず小さく微笑んだ。
「レッドドラゴンだ!!」
【はい! レッドドラゴンです! アンドレさんは何故ここに? 竜人は私達と共に竜の国で生活する筈の生き物のはずでずが……】
それ聞いちゃうかぁ……。
私は慌ててレッドドラゴンにその話を辞めるよう二人の間に入り込む。
「レッドドラゴンのその話は……!」
アンくんにとって地雷だよ。
そう言いかけた時だった。
「お師匠、その……こいつ何言ってるの?」
「え?」
「だ、だから……このレッドドラゴン何言ってるの? 俺は……ドラゴンの言葉が分からないから……」
下を俯くアンくん。
唇をギュッと噛み締めるその姿を見て、私は思わずアンくんを抱き寄せた。
やっぱりアンくんには私と似てるとこがある。
それは行き場が無いという事。
だから私は行き場の亡くなったアンくんを弟子として迎える事にした。なにせアンくんの行き場を失わせてしまった原因は私にもある訳だし、あの時のアンくんの絶望に充ちた瞳は忘れられない。
「っ……離せよ! お師匠は強くて……何でも出来る! だから俺の気持ちなんて分からないだろう! 竜人なのに人間のお師匠に負けて居場所が無くなって! 竜人なのにドラゴンの言葉も分からない落ちこぼれの俺の気持ちなんて分からないだろっ!」
ドンッとアンくんに押され、私はよろめく。
ギラりと光る鋭い瞳でアンくんが私を睨み付ける。
その言葉は凄く刺々しくて私の胸に強く突き刺さった。
それと同時にアンくんはやっぱり私と同じなんだという確証も生まれた。
期待されて生まれ、だけどその期待に答えられずに苦しみながら生きてきた。何となくだけど私には分かったのだ。
「…………私は分かるよ」
「同情なんていらない! お師匠になんかに分かりっこない!」
涙目になりながらそう叫ぶアンくんに、私は小さく深呼吸をした後、ゆっくりと前髪をかきあげその下にある失格を意味する烙印を見せた。
アンくんが目を大きく見開く。
「私ね、実は生まれつき魔力が無くて跡継ぎ失格の烙印を押されたの。だけどね、ある日大好きだった人に婚約を破棄されたら全部のステータスがマックスの1000になったんだ。有り得ないと思うでしょ? でもね、本当の話なの。アンくん、私はね、ずっと苦しい日々を送ってた。苦しくて苦しくて……逃げ出したい日々だった。でもね、そんな私を婚約者であるセリア様が助けてくれた。私にとってセリア様は本当に大切な人だった。だからね、アンくん。私は君を助けられる人になりたい。君の場所を奪ってしまったから……恨まれてもいい。でもね、その償いの意味も込めて君を助けたいの。何がなんでも」
もう……私みたいな思いをする人は私以外には要らない。
居場所がなくて、苦しくて狭い世界に居て欲しくないから。
私は前髪を下ろす。
やっぱり前髪があると落ち着くな……。
何だか守られてるような、そんな感じがした。
「…………ご、ごめん」
「うんうん。謝るのは私の方。だって私はアンくんの居場所を奪っちゃった張本人だから」
「違うよ! 元々俺が竜人なのに劣ってたのが原因なんだよ! 竜人なのにドラゴンと会話もできない、それにドラゴンにだって乗れない。俺は竜人の落ちこぼれなんだ。だから……その……当たっちゃってごめん」
アンくんはそう言うと、私に深々と頭を下げた。
私はそんなアンくんを再びギュッと抱き締めた。
やっとアンくんが本心を見せてくれた。それが私は本当に本当に嬉しかった。
思わずわしゃわしゃとアンくんの頭を撫でれば、アンくんが辞めてよ! と頬を赤くして言った。
そんなアンくんにごめんごめん、と謝る私。
「さて……アンくんにレッドドラゴン! 早速ルゲル村に戻ろう。皆、待ってるよ!」
「うん……」
【はい! 魔導師さん!】
くるりと出口へと体を向ける。
そう言えばレッドドラゴンをルゲル村に連れて帰っても大丈夫なのかな?
まぁ、大丈夫だよね?
直ぐに竜の国に連れて帰ればいいだけなんだから。
って……そう言えば私、竜の国の場所知らないんだった……。
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