本当に、愛してる

双子のたまご

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第三章

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「ねぇ、ちょっと」

「…お帰り、兄さん」

今日の彼女の迎えは兄さんの日だった。

「ただいま。
…ねぇ、龍海。翠ちゃんと仲良くなった?」

「は?」

いつも兄さんの話は急だ。

「翠ちゃんと話してる?」

先日、彼女と少し話したことを思い出す。
彼女が兄さんを話題に出した日。

「…」

「…お前、本当に分かりやすいね。」

兄さんが呆れたようにため息をつく。

「…何が。」

「あのさぁ、好きなんだったら自分から距離詰めないと」

…なんなんだ、兄さんは。
彼女を好きなのは兄さんの方じゃないのか。
彼女も兄さんが好きだろう。

彼女のことになると苛立つことが多い。

「…好きじゃないと、言っている。」

「はぁ?何言ってるの。」

「ずっと前から言っているだろう。
彼女のことはなんとも思ってない。」

「…本気?」

兄さんこそ何を言っているんだ。
思わず食ってかかる。

「…大体、彼女のことが好きなのは兄さんの方じゃないのか。あんなに気にかけて…
彼女だって兄さんのことが好きみたいだぞ。
迎えに行き始めたときだって、彼女は俺に怯えていたが兄さんにはそうじゃなかった。
今だってよく食事に行くんだろう。
俺とは食事なんか行かないからな。
それに…」

「ただいま~ちょっと、たっくん声大きい。
玄関まで聞こえてきたよ。どうしたの。」

琥珀の声に、我に返る。
いつの間にか帰ってきていたようだ。

「…」

「おかえり、琥珀。」

「うん、で、どうしたの?」

兄さんに喧嘩腰でものを言うことなんて、これまで無かった。
言いたいことを一方的に捲し立ててしまって決まりが悪い。
琥珀の質問に答えられないでいると、

「龍海が勘違いして、拗らせて、いじけてる。」

「え、詳しく。」

「ちがっ、兄さん!」

「たっくん黙って。たっくんの意見は後で聞きます。」

全員社会人になってから、家族の話し合い、のような雰囲気になるといつも仕切るのは琥珀だ。
こうなるともう口を出せない。

「はい、皆さん席に着いてください~」

琥珀が声をかけ、兄さんがダイニングチェアに座る。
ひとつ、ため息をついて兄さんのとなりに座った。
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