本当に、愛してる

双子のたまご

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第七章

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「はい、好きなの選んでくださいね。」

「あ、あぁ…」

ドーナツが入った箱を開けて彼女が言う。

「コーヒーか紅茶、どっちがいいですか?」

「あ…コーヒー、で。」

「はい。」

落ち着かない。
ドーナツだって、なんだっていい。
どうすればいいんだ俺は。

「はい、お待たせしました。」

「あぁ…」

コーヒーを俺の目の前においた彼女は、俺の隣に座った。
思わず体が動く。
すると彼女はまたソファから立ち上がろうとした。
彼女が、離れてしまう。
思わず彼女の腕をつかんだ。

「っ、ど、どこへ行く。」

「えっと、少し離れて座ろうかと」

「なぜだ」


離れないで欲しい。


「ち、近いと龍海さん、嫌かなって…」

「嫌ではない!」


勘違いされたくはない。


「そ、うですか…」

彼女の戸惑った顔をみて、自分が必死になりすぎていたことに気付く。

「……」

「あの、ドーナツどれにしますか?」

「…先に選べ。」

なんだか、いたたまれない気持ちになる。

「え、私はどれでも」

もう一度さっとドーナツをみて、その中の一つが目に止まった。

「これじゃないのか。」

中にクリームが入ったドーナツを指差して問いかける。

「え、なんで、」

何故か彼女が恥ずかしそうにあたふたしている。

「クリームたっぷり、が、好きなんだろう」

彼女が俺と兄さんにケーキを買ってくれた日に聞いた言葉だった。

「覚えていたんですか」

あぁ、そうだ。
俺は君のことならなんでも知りたくて、なんでも覚えていたいから。

「ふふっ、そうなんです。これが一番好き。
ばれちゃって恥ずかしい。」

そう照れて笑う顔が、とても可愛い。
何も言えないまま、横顔を見つめる。

「お言葉に甘えて、いただきますね。
龍海さんはどれにしますか?」

「…これで。」

箱の中には普段選ぶことの多い、チョコレートのドーナツもあった。

「龍海さん、甘いもの好きなんですか?」

「…そうだな」

「クリームとかは?」

「…嫌いじゃない」

どちらかというと、兄さんの方が甘いものが好きそうで、俺は甘いものが苦手そう、と思われることが多い。
分かる。
俺のような仏頂面の男が甘い物好きなのは変な感じなんだろう。
彼女にも意外そうな顔をされると思ったが、

「そうだったんですか。
じゃあ私の、半分こしましょう」

そう言ってドーナツを半分に割ろうとした。

「え、いや、」

「まぁまぁ」

半分に割ったドーナツの、少し大きい方を俺に渡す。
…兄さんも俺や琥珀と何かを分けるときは大きい方、量の多い方を渡してくる。
兄や姉というのは、そう言うものなのだろうか。

「いただきます」

ドーナツにかぶりついた彼女の頬にクリームがついた。
彼女はそれを指先でぬぐい取り、クリームのついた指を口元に。
赤い舌がその指を舐めた。
一連の動きが、酷く扇情的に見えた。
自分の心臓の音だけが聞こえる。

頭が、おかしくなりそうだ。
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