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ぼうけんのしょがきえました???
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『仕方ないよ』
とベルは悲しそうに笑った。そして宿屋についてすぐ、待ち構えていた兵士達に拘束され連れて行かれた。
「くそっ」
俺はどうすれば良かったんだ。
おしなべて表情の乏しい兵士達に引っ立てられていく背中を、ただただ眺めているしか出来なかった。
――ベルもまた犯罪集団の仲間として、王都にて処分を受ける。
そう聞いた時、頭が真っ白になった。
でも考えればそうだよな。下っ端で知らなかったとはいえ、彼女もまた仕事をしてきたんだ。
罪に問われないはずがない。
「反逆罪として裁かれる可能性があります」
アメリアは痛ましいといった様子だった。
なんとかしてここまで連れ出してくれたものの、やはりどうにもならなかったらしい。
彼女もまた自らを国家権力の下にいる、と言った。責めることなんてできない。
「でもあいつは騙されて利用されただけで!」
「メイトさん」
静かだが強い声で名を呼ばれる。
「それは通じない言い訳ですわ」
「……」
それ以上何も言い返せなかった。そんな俺に対して、彼女は小さく息を吐く。
「先程言いましたが、貴方がするべき選択は二つ。このまますべてを忘れて日常を送るか、あの少女とともに王都にわたり直談判をするか」
後者はかなり無理のある手段だ。だいたい、身分もはっきりしない冒険者の話なんて聞いてくれるのか。
門前払い、ヘタすると反逆罪や不敬罪やらで捕まりかねない危ない橋だろう。
だいたい俺はあの町に戻りたくない。
「期限は明日の朝ですわ。今夜はゆっくりお休みなさい」
そう言い残し彼女は立ち上がる。
「……」
「……」
残された俺とスチル。眠れるはずなんてない。
「やめといた方がいい」
沈黙を破ったのは彼の方だった。
「忘れなよ、その方がいい」
「んなわけにいかねーだろ」
忘れられるか。見殺しにするって事だぞ。
ほぼ間違いなく死刑だ。首をはねられるか火あぶりになるか。それくらいの違いだろうよ。
それくらい一度、王都に罪人として連れていかれることは絶望的なことなんだ。
「でも行けばアンタがそうなるよ」
俺の思考を読み取ったようにまた彼が言う。
頭を抱えるしかできない。
「分かってんだよ、それくらい」
それに王都エアリクルムに向かうということは、あいつらがいる。
俺を追放し集団リンチした奴ら、恋人だった女。そしてあの異世界召喚勇者が。
「下着ドロもバレるしな」
「うるせっ、あと冤罪だって言ってんだろ!」
そうだ濡れ衣だよ。だから堂々としてろってか? んな単純じゃねーよな。
むしろこっちの方が悩ましいのが本音だ。
未だにろくな装備も武器も持たない、パーティすら組めない現状だしな。
「ま、ウジウジ考えてなよ」
ふんと鼻を鳴らして、スチルは立ち上がる。
「他人のメンタルを気にしてるわりに、アンタ自身こそかなり弱いってのは笑えない冗談だね」
「っ、それはどういう意味だ!」
ひどい言い草に睨みつけるも。
「そのまんまだけど? いくら解呪したって、これじゃあ今まで通り才能無しの弱い奴だよ。むしろ、以前の時の方が良かったかもしれないな」
「てめぇっ!!」
「じゃあね。僕は部屋変えてくれって彼女に言ってくる」
怒鳴ってブチギレるも一笑に付しながら、彼はさっさと部屋を出ていった。
「なんだよそれ」
一人取り残された俺は、腹立ちまぎれにベッドを殴った。
※※※
手すらにぎらなかった恋人、いや元恋人。
それがまた目の前にいた。
『メイト』
夢の中のルティアスはやはり俺の知ってる彼女だ。大きな目を優しげに和ませて隣に座っている。
そっと手をのばすと頬を染めた。
『私、いつか孤児院をつくりたい』
ああそうだったな、以前に話していたっけ。慈愛に満ちた聖女である彼女らしいと思ったっけ。
でもそれ以上に夢を語る人の姿は美しいとも。目がさ、キラキラしてんだよ。どんなクズでもそこに多少の煌めきがあるっていうのが、不思議だった。
もちろん俺だってそうなんだろう。
『メイト。ずっと私と一緒に――』
ああ、そう疑わなかったな。俺だってこの時間が永遠だって。
まさかあんな裏切りがあるなんて、思わなかった。
悲しさより虚しさだけで胸が痛む。
俺の未練や執着がこんな夢をみせるんだろうな。すごく納得するけど、やっぱり嫌になっちまう。
……俺は今、どんな顔をしているんだろう。
そんなことを考えながら、背景がまったくない夢の世界でうなずいた。
※※※
「はあぁぁぁ」
またなんか寝覚めが悪い。どんな夢かまるで覚えてないが、それでもあんまりいい夢じゃなかったのは分かる。
ズキズキと軽い痛みを訴える頭をおさえながら身体を起こした。
「まだ、早朝か……」
ベッドの上で、辺りはまだ薄暗い。俺は大きくのびをすると、カーテンを少し開ける。
少しずつ白んでいく空はまだ夜を残しているって感じ。あー、夢見が悪いとこういう妙な表現も浮かんじまうんだな。
俺らしくもない。
「よいしょっと」
少し喉が乾いた。ふと見渡すと、ベッドサイドのテーブルには水差しとコップが。
誰がいつの間に置いたんだろう。
なぜか警戒心の欠片もなく俺はそのコップに水を注ぎ、一気に飲み干した。
「あー、うめぇ」
独り言ばかりだが、誰もこたえてくれない。向こうがわのベッドはぺたんとしていて、スチルはやはり別の部屋に行ったんだろう。
またさらに落ち込んだ。
「くそ」
バカにしやがって。どーせ、ウジウジ野郎だよ。
でも仕方ねえだろ、こっちにはこっちの事情ってもんがあるんだ。
ベルを助けたい、でも助けられるかどうかなんて定かじゃない。むしろその可能性の方が低いんだろ。
さらに俺はあの町に、あいつらとは顔を合わせたくない。
「……」
だめだ、考えがまとまらねえ。なのに目が冴えちまったらしい。
俺は立ち上がり部屋を出た。できる限り足音を立てずに廊下を歩き、下に降りる。
「っ、と」
しんと静まり返ったロビー。手入れが行き届いているのは俺やエル先輩、あと通いの従業員がこまめに掃除しているからだ。
こんな小綺麗な宿屋、そんなに多くない。特に冒険者相手の安宿なんて、古く汚く騒がしいのが当たり前。ここも最安ではないにしろ商人たちが多く泊まってるかからか、雰囲気が少し違うんだよな。
装飾や家具の感じからもそれが滲み出てるというか。
やっぱり女主人が彼女だからだろうか。
少し得体の知れない人だと思っていたが、まさか極秘調査員だったとは。いわゆる秘密警察ってやつだよな。
そういえば、俺がエル先輩から奴隷商人かと疑われてきたっけ。
あれももしかしてヤバかったのか?
……なんてつらつらと考えながら、宿屋を出た。
「少し冷えるなぁ」
ここらへんの気候は近くの山から吹く風のせいか、どこか独特だ。
夜明けには妙に肌寒いくせに、夜が明けて日中はジリジリと肌を焼くような日差しになる時期がある。
もちろん雨季も寒気もあるから、その限りじゃないけどな。
とにかく、今は薄手の服越しにひんやりするくらいの気温に思わず身震いした。
「やべ」
腹もへったこともあり、すぐとなりの酒場に飛び込んだ。
「いらっしゃい」
酒場っていっても早朝までやってる個人経営の小さな店。すぐさま気だるげな声がかかる。
「温かいもの頼む」
「はいよ」
そう声をかけると数十秒後には温められた果実酒をだしてくれるのだから、ありがたい。
せまいカウンター席で、俺はそれをすすった。
「あ、美味しいよね。それ」
「えっ」
隣へ移動してする気配がするまで、俺は気づかなかった。他に客がいることに。
「カリア!?」
「ふふ、そんなビックリしないでよ」
ころころと笑う娘はいわゆる同僚、こんな時間に会うとは思いもしなかった。
「ここにはよく来るのか?」
「たまにね」
「そうか」
それ以上は聞かなかった。まあ人それぞれプライベートもあるし。なにより今の俺は会話を楽しむ余裕もなかったから。
「なんか思い詰めた顔してるわ」
彼女の言葉に苦笑いしながらも、冷めかけた酒をあおる。
「ぶっちゃけ少し悩んでるかもしれねえ」
「でしょうねぇ」
事も無げに微笑みながら、カリアは『私も同じの』と店主に声をかけた。
「メイト君は優しいから」
「え?」
もしかして何か知ってるのかと驚くが。
「優しい人が思い悩むときは、いつも自分以外の人のためなのよ」
そうイタズラっぽく言ってウィンクした。
「俺は……」
優しい、のか? むしろ自己中の身勝手野郎じゃないのか。
だって俺があの町に行きたくない理由は、全て自分都合だからだ。つまらない羞恥心。
人の命の前ではおおよそ些細なことだって分かってんだ、俺にだって。
でも今でも耳の奥にこびり付く、嘲笑と罵倒。こりゃ思ったよりトラウマになってるらしい。
厄介だな。
「どの道を選んでも、誰もメイト君を責めないわ。少なくても私はそう」
「カリア」
立ち上るカップの湯気に目を細めながらの彼女の言葉。柑橘系の爽やかな香りが鼻腔をくすぐる。
「だから大丈夫。それより一度決めたらそれ以上は自分を責めちゃダメ。後悔はしてもいいけど、責めるのは何も生まないから」
その言葉に俺は無言でうなずいた。
――まだ窓の外は薄暗い。
とベルは悲しそうに笑った。そして宿屋についてすぐ、待ち構えていた兵士達に拘束され連れて行かれた。
「くそっ」
俺はどうすれば良かったんだ。
おしなべて表情の乏しい兵士達に引っ立てられていく背中を、ただただ眺めているしか出来なかった。
――ベルもまた犯罪集団の仲間として、王都にて処分を受ける。
そう聞いた時、頭が真っ白になった。
でも考えればそうだよな。下っ端で知らなかったとはいえ、彼女もまた仕事をしてきたんだ。
罪に問われないはずがない。
「反逆罪として裁かれる可能性があります」
アメリアは痛ましいといった様子だった。
なんとかしてここまで連れ出してくれたものの、やはりどうにもならなかったらしい。
彼女もまた自らを国家権力の下にいる、と言った。責めることなんてできない。
「でもあいつは騙されて利用されただけで!」
「メイトさん」
静かだが強い声で名を呼ばれる。
「それは通じない言い訳ですわ」
「……」
それ以上何も言い返せなかった。そんな俺に対して、彼女は小さく息を吐く。
「先程言いましたが、貴方がするべき選択は二つ。このまますべてを忘れて日常を送るか、あの少女とともに王都にわたり直談判をするか」
後者はかなり無理のある手段だ。だいたい、身分もはっきりしない冒険者の話なんて聞いてくれるのか。
門前払い、ヘタすると反逆罪や不敬罪やらで捕まりかねない危ない橋だろう。
だいたい俺はあの町に戻りたくない。
「期限は明日の朝ですわ。今夜はゆっくりお休みなさい」
そう言い残し彼女は立ち上がる。
「……」
「……」
残された俺とスチル。眠れるはずなんてない。
「やめといた方がいい」
沈黙を破ったのは彼の方だった。
「忘れなよ、その方がいい」
「んなわけにいかねーだろ」
忘れられるか。見殺しにするって事だぞ。
ほぼ間違いなく死刑だ。首をはねられるか火あぶりになるか。それくらいの違いだろうよ。
それくらい一度、王都に罪人として連れていかれることは絶望的なことなんだ。
「でも行けばアンタがそうなるよ」
俺の思考を読み取ったようにまた彼が言う。
頭を抱えるしかできない。
「分かってんだよ、それくらい」
それに王都エアリクルムに向かうということは、あいつらがいる。
俺を追放し集団リンチした奴ら、恋人だった女。そしてあの異世界召喚勇者が。
「下着ドロもバレるしな」
「うるせっ、あと冤罪だって言ってんだろ!」
そうだ濡れ衣だよ。だから堂々としてろってか? んな単純じゃねーよな。
むしろこっちの方が悩ましいのが本音だ。
未だにろくな装備も武器も持たない、パーティすら組めない現状だしな。
「ま、ウジウジ考えてなよ」
ふんと鼻を鳴らして、スチルは立ち上がる。
「他人のメンタルを気にしてるわりに、アンタ自身こそかなり弱いってのは笑えない冗談だね」
「っ、それはどういう意味だ!」
ひどい言い草に睨みつけるも。
「そのまんまだけど? いくら解呪したって、これじゃあ今まで通り才能無しの弱い奴だよ。むしろ、以前の時の方が良かったかもしれないな」
「てめぇっ!!」
「じゃあね。僕は部屋変えてくれって彼女に言ってくる」
怒鳴ってブチギレるも一笑に付しながら、彼はさっさと部屋を出ていった。
「なんだよそれ」
一人取り残された俺は、腹立ちまぎれにベッドを殴った。
※※※
手すらにぎらなかった恋人、いや元恋人。
それがまた目の前にいた。
『メイト』
夢の中のルティアスはやはり俺の知ってる彼女だ。大きな目を優しげに和ませて隣に座っている。
そっと手をのばすと頬を染めた。
『私、いつか孤児院をつくりたい』
ああそうだったな、以前に話していたっけ。慈愛に満ちた聖女である彼女らしいと思ったっけ。
でもそれ以上に夢を語る人の姿は美しいとも。目がさ、キラキラしてんだよ。どんなクズでもそこに多少の煌めきがあるっていうのが、不思議だった。
もちろん俺だってそうなんだろう。
『メイト。ずっと私と一緒に――』
ああ、そう疑わなかったな。俺だってこの時間が永遠だって。
まさかあんな裏切りがあるなんて、思わなかった。
悲しさより虚しさだけで胸が痛む。
俺の未練や執着がこんな夢をみせるんだろうな。すごく納得するけど、やっぱり嫌になっちまう。
……俺は今、どんな顔をしているんだろう。
そんなことを考えながら、背景がまったくない夢の世界でうなずいた。
※※※
「はあぁぁぁ」
またなんか寝覚めが悪い。どんな夢かまるで覚えてないが、それでもあんまりいい夢じゃなかったのは分かる。
ズキズキと軽い痛みを訴える頭をおさえながら身体を起こした。
「まだ、早朝か……」
ベッドの上で、辺りはまだ薄暗い。俺は大きくのびをすると、カーテンを少し開ける。
少しずつ白んでいく空はまだ夜を残しているって感じ。あー、夢見が悪いとこういう妙な表現も浮かんじまうんだな。
俺らしくもない。
「よいしょっと」
少し喉が乾いた。ふと見渡すと、ベッドサイドのテーブルには水差しとコップが。
誰がいつの間に置いたんだろう。
なぜか警戒心の欠片もなく俺はそのコップに水を注ぎ、一気に飲み干した。
「あー、うめぇ」
独り言ばかりだが、誰もこたえてくれない。向こうがわのベッドはぺたんとしていて、スチルはやはり別の部屋に行ったんだろう。
またさらに落ち込んだ。
「くそ」
バカにしやがって。どーせ、ウジウジ野郎だよ。
でも仕方ねえだろ、こっちにはこっちの事情ってもんがあるんだ。
ベルを助けたい、でも助けられるかどうかなんて定かじゃない。むしろその可能性の方が低いんだろ。
さらに俺はあの町に、あいつらとは顔を合わせたくない。
「……」
だめだ、考えがまとまらねえ。なのに目が冴えちまったらしい。
俺は立ち上がり部屋を出た。できる限り足音を立てずに廊下を歩き、下に降りる。
「っ、と」
しんと静まり返ったロビー。手入れが行き届いているのは俺やエル先輩、あと通いの従業員がこまめに掃除しているからだ。
こんな小綺麗な宿屋、そんなに多くない。特に冒険者相手の安宿なんて、古く汚く騒がしいのが当たり前。ここも最安ではないにしろ商人たちが多く泊まってるかからか、雰囲気が少し違うんだよな。
装飾や家具の感じからもそれが滲み出てるというか。
やっぱり女主人が彼女だからだろうか。
少し得体の知れない人だと思っていたが、まさか極秘調査員だったとは。いわゆる秘密警察ってやつだよな。
そういえば、俺がエル先輩から奴隷商人かと疑われてきたっけ。
あれももしかしてヤバかったのか?
……なんてつらつらと考えながら、宿屋を出た。
「少し冷えるなぁ」
ここらへんの気候は近くの山から吹く風のせいか、どこか独特だ。
夜明けには妙に肌寒いくせに、夜が明けて日中はジリジリと肌を焼くような日差しになる時期がある。
もちろん雨季も寒気もあるから、その限りじゃないけどな。
とにかく、今は薄手の服越しにひんやりするくらいの気温に思わず身震いした。
「やべ」
腹もへったこともあり、すぐとなりの酒場に飛び込んだ。
「いらっしゃい」
酒場っていっても早朝までやってる個人経営の小さな店。すぐさま気だるげな声がかかる。
「温かいもの頼む」
「はいよ」
そう声をかけると数十秒後には温められた果実酒をだしてくれるのだから、ありがたい。
せまいカウンター席で、俺はそれをすすった。
「あ、美味しいよね。それ」
「えっ」
隣へ移動してする気配がするまで、俺は気づかなかった。他に客がいることに。
「カリア!?」
「ふふ、そんなビックリしないでよ」
ころころと笑う娘はいわゆる同僚、こんな時間に会うとは思いもしなかった。
「ここにはよく来るのか?」
「たまにね」
「そうか」
それ以上は聞かなかった。まあ人それぞれプライベートもあるし。なにより今の俺は会話を楽しむ余裕もなかったから。
「なんか思い詰めた顔してるわ」
彼女の言葉に苦笑いしながらも、冷めかけた酒をあおる。
「ぶっちゃけ少し悩んでるかもしれねえ」
「でしょうねぇ」
事も無げに微笑みながら、カリアは『私も同じの』と店主に声をかけた。
「メイト君は優しいから」
「え?」
もしかして何か知ってるのかと驚くが。
「優しい人が思い悩むときは、いつも自分以外の人のためなのよ」
そうイタズラっぽく言ってウィンクした。
「俺は……」
優しい、のか? むしろ自己中の身勝手野郎じゃないのか。
だって俺があの町に行きたくない理由は、全て自分都合だからだ。つまらない羞恥心。
人の命の前ではおおよそ些細なことだって分かってんだ、俺にだって。
でも今でも耳の奥にこびり付く、嘲笑と罵倒。こりゃ思ったよりトラウマになってるらしい。
厄介だな。
「どの道を選んでも、誰もメイト君を責めないわ。少なくても私はそう」
「カリア」
立ち上るカップの湯気に目を細めながらの彼女の言葉。柑橘系の爽やかな香りが鼻腔をくすぐる。
「だから大丈夫。それより一度決めたらそれ以上は自分を責めちゃダメ。後悔はしてもいいけど、責めるのは何も生まないから」
その言葉に俺は無言でうなずいた。
――まだ窓の外は薄暗い。
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