11 / 39
逸撰隊
5
しおりを挟む
用意された宿所は、山の麓にあった。
巡礼者向けの宿泊所が軒を連ねているので、その中の一間かと思ったが、用意されたのは空き家になった百姓家だった。
「では、何かございましたらお呼びください」
円兼が去ると、すぐに夕餉になった。
膳に出されたのは、精進料理ではなく岩魚の塩焼きだった。他には麦を混ぜた飯と古漬けの沢庵、汁物そして銚子が一本ずつついた。
「肉食妻帯というわけか」
甚蔵の独り言に、安牧が微かに微笑んだ。
夕餉が済むと、伊平次がどこからか現れて明日の段取りについて話し合いが始まった。
まず伊平次が、沢辺村の見取り図を広げた。そこには、赤い印で幾つかの印がついていた。そして、捕縛する六名の人相書き。名前と特徴が添えて書かれている。
作戦は安牧が立案しているという事で、とりあえず甚蔵は聞く事にした。
「まず阿部志摩守様の家人と称し、私と伊平次、そして加瀬さんとで沢辺村へ行き、庄屋の弥左衛門に化けている鎌太郎に面会を求めます。事前に来訪の旨は伝えているので、問題なく村には入れるでしょう。その間、他の皆様は村の外で潜んでもらいます」
村の見取り図に、安牧がどこからか持ってきた将棋の駒を置く。甚蔵と安牧は金と銀、伊平次は桂馬、そして戸来たちは歩だった。
「鎌太郎が出てきたら、適当に話をして油断させます。これは伊平次と加瀬さんにお願いしたいのですが」
「伊平次?」
甚蔵は、一歩退くようにして控える伊平次を一瞥した。
自分は兎も角として、陰気に押し黙ったままの男が、相手を油断させるような会話が出来るとは思えない。
「伊平次は、この辺を縄張りにする貸元の客分でもあるんですよ。明日は音助と呼んでやってください」
「そういう事か」
密偵として動く為の偽装だろう。火盗改で使っている密偵も、渡世人として草鞋を脱ぐ事もあれば、商家の奉公人として働くという事もある。
「そして、油断したところに、笹子の鎌太郎である事を訊いてください。大人しく従えばそれでよし、手向かえば実力行使です」
「安牧殿、私たちは何をしたら?」
戸来が安牧に訊いた。
「我々が庄屋屋敷に辿り着いたのを見計らって、彼らを捕縛してください。野良仕事に出ているかもしれませんが、そうでなければ印をつけた家にいるはずです」
と、安牧は歩の駒を村の中まで動かした。
「この六名を捕縛した後は、村はずれの水車小屋で円兼殿が率いる門徒の皆さんが合流します」
「おい、ここの奴らも加えるなんて聞いてねぇぜ」
甚蔵が言うと、安牧は悪びれる様子もなく、伝え忘れたと答えた。
「それに我々では移送が困難ですからね。場合によっては、捕縛する人数が増えるかもしれませんし。それに、これは慈光宗の方から志願された事です」
「逆恨みされる危険もあるぜ。逸撰隊の皆様は、そこまで考えてないのか?」
「ええ。隊務が第一ですから」
即答だった。それ以上、甚蔵は何も言う気になれず話し合いは散会となった。
安牧と伊平次には、別室が用意されているらしくすぐに姿を消した。すると戸来たちが安牧の態度を非難しだしたが、甚蔵は一喝してやめさせた。気持ちはわかるが、大事の前に話すべき内容ではない。
「俺が死んだら、安牧に従え」
甚蔵は、改めて戸来たちに言った。
「その安牧も殺られたら伊平次に。癪だろうが、この二人はお前たちより経験はある」
「そんな、加瀬様が死ぬなんて」
戸来が大袈裟な反応を見せたが、甚蔵は一笑して頭を叩いた。
「万が一だよ。それに俺はそう簡単にくたばらん」
◆◇◆◇◆◇◆◆◇◆◇◆◇◆
沢辺村は、川沿いの小さな村だった。
庄屋の屋敷を中心に、八戸の百姓家が点在している。
甚蔵と安牧は、道案内の渡世人に変装した伊平次に導かれるようにして、庄屋屋敷へと向かった。
村の外で伏せている戸来たちが心配だが、ここは信じるしかない。それに何かあれば、呼び笛を吹く事になっている。万が一の場合は、円兼も駆け付けるとの事だった。
「こりゃ、音助さん」
田圃の中にいた青年に、伊平次が声を掛けられた。愛想良く笑顔で片手を挙げる。
伊平次は恰好だけでなく、雰囲気も渡世人になり切っている。伊平次がなり切っている音助は、気風のいい陽気な男だ。
「おう三吉じゃねぇか。達者にしてるかい?」
三吉。それは安牧が持っていた書き付けには無かった名前だった。
「達者って、つい最近賭場で会ったばかりじゃねぇですかい」
「そうだった。あん時は大負けしたんで、お前がいたって事も一緒に忘れちまったよ」
「そいつは酷でぇや。それで今日は何か村に用事があんのかい?」
「おう。貸元に頼まれて、阿部様のご家中を弥左衛門さんのところに案内するのさ」
三吉と呼ばれた青年は、白い歯を見せて笑って見送った。
庄屋屋敷が見えてきた。土塀に囲まれているが、小さな村に見合った規模の屋敷だった。他の庄屋に比べて、圧倒的に小さい。本当に三代に渡る盗賊だろうかと思うほどである。
表門で、訪ないを入れた。女中が出て来たので、伊平次が用件を告げた。中に案内されそうになったが、安牧が
「挨拶だけで長居はしない」
と告げて固辞した。
伊平次が女中と共に屋敷に入っていき、暫くして五十路手前の男と出てきた。楽しそうに談笑している。あれが鎌太郎だろうか。頭の半分は白いが肌の艶は良い。人相書きによく似ていた。
「これはこれは、ようこそお越しくださいました。私が沢辺村の庄屋を務めております、弥左衛門でございます」
笑顔で弥左衛門と名乗った鎌太郎が、腰を低くして言った。甚蔵と安牧も姓名と役職を告げた。勿論、それは偽りのものだ。
「音助さんにお話は伺っております。何でも新しく阿部様のご家中に加えられたとかで」
「ああ、その通りだ。それで殿様に、まずは所領を見て来いと言われてね」
手筈通り、甚蔵が答えた。
「なるほど。お役目ご苦労でございます。家の者に聞きましたが、立ち話ではなんでしょう。すぐに酒肴を用意させますが」
「それは構わんでくれ。話を聞くだけさ」
「はぁ」
今の所、鎌太郎に不審がる様子はない。
「それで、この村には問題はあるかい?」
「特にございません。年貢も収めておりますし、何かあれば、すぐに報せております。ですが、最近何やら物騒で」
「物騒とはどういう事だい?」
「ええ。上州では人殺しが流行っておりまして。聞いておりませんか?」
甚蔵は安牧と顔を見合わせて首を振った。
「所領の見聞はこの村が最初でね。だが、上州と言えば長脇差の気風だろう」
「それはそうなのですが、ちょっと事情が違いまして。何でも若い娘に乱暴を働いて殺したり、家に押し込んで一家全員を……。しかも、押し込んだ先の幼い赤子をバラバラにして欄間に吊るしたとか」
「何?」
脳裏に、下谷上野町の尾州屋で目にした惨劇が浮かんだ。あの時も、赤子が吊るされていた。そんな真似をする奴はそうはいない。
「その賊はどこに押し込んだんだ?」
「へぇ、確か多胡の上日野村だったと思います」
「そこに、木簡は無かったか? 木切れに、羅刹天が描かれた」
「おい、それは当家に関係の無い話だ」
安牧が会話に割って入った。突然の変化に、鎌太郎は戸惑いの表情を見せている。
甚蔵は舌打ちをした。もっと訊きたいと思ったが、どうせ捕縛すればじっくり話を聞く事が出来る。
「庄屋様」
不意に、百姓が屋敷に駆けこんで来た。来るときに出会った三吉だった。
「そいつら、庄屋様を捕まえにきた役人だ」
「なにっ」
鎌太郎が、安牧を突き飛ばした。踵を返して逃げると思いきや、鎌太郎の懐から白い閃光が伸びてきた。
それは迅く、的確だった。甚蔵は咄嗟に跳び退き、腰の同田貫正国に手を掛けた時、伊平次が鎌太郎に組み付いた。襟を掴んで、地面に叩きつけるように投げ飛ばす。背中を激しく打った鎌太郎は、息が出来ないのか大きく口を開けて喘いでいる。甚蔵は三吉の方へ眼を向けたが、安牧が易々と制圧していた。
騒ぎを聞きつけて奉公人たちが、屋敷からわらわらと出て来た。縄を打たれた鎌太郎と三吉を見て悲鳴を挙げたが、甚蔵は同田貫正国の切っ先を突き付けて制した。
「大人しくしてりゃ、お前たちはお目こぼししてやる。だから、手向かいすんじゃねぇよ」
巡礼者向けの宿泊所が軒を連ねているので、その中の一間かと思ったが、用意されたのは空き家になった百姓家だった。
「では、何かございましたらお呼びください」
円兼が去ると、すぐに夕餉になった。
膳に出されたのは、精進料理ではなく岩魚の塩焼きだった。他には麦を混ぜた飯と古漬けの沢庵、汁物そして銚子が一本ずつついた。
「肉食妻帯というわけか」
甚蔵の独り言に、安牧が微かに微笑んだ。
夕餉が済むと、伊平次がどこからか現れて明日の段取りについて話し合いが始まった。
まず伊平次が、沢辺村の見取り図を広げた。そこには、赤い印で幾つかの印がついていた。そして、捕縛する六名の人相書き。名前と特徴が添えて書かれている。
作戦は安牧が立案しているという事で、とりあえず甚蔵は聞く事にした。
「まず阿部志摩守様の家人と称し、私と伊平次、そして加瀬さんとで沢辺村へ行き、庄屋の弥左衛門に化けている鎌太郎に面会を求めます。事前に来訪の旨は伝えているので、問題なく村には入れるでしょう。その間、他の皆様は村の外で潜んでもらいます」
村の見取り図に、安牧がどこからか持ってきた将棋の駒を置く。甚蔵と安牧は金と銀、伊平次は桂馬、そして戸来たちは歩だった。
「鎌太郎が出てきたら、適当に話をして油断させます。これは伊平次と加瀬さんにお願いしたいのですが」
「伊平次?」
甚蔵は、一歩退くようにして控える伊平次を一瞥した。
自分は兎も角として、陰気に押し黙ったままの男が、相手を油断させるような会話が出来るとは思えない。
「伊平次は、この辺を縄張りにする貸元の客分でもあるんですよ。明日は音助と呼んでやってください」
「そういう事か」
密偵として動く為の偽装だろう。火盗改で使っている密偵も、渡世人として草鞋を脱ぐ事もあれば、商家の奉公人として働くという事もある。
「そして、油断したところに、笹子の鎌太郎である事を訊いてください。大人しく従えばそれでよし、手向かえば実力行使です」
「安牧殿、私たちは何をしたら?」
戸来が安牧に訊いた。
「我々が庄屋屋敷に辿り着いたのを見計らって、彼らを捕縛してください。野良仕事に出ているかもしれませんが、そうでなければ印をつけた家にいるはずです」
と、安牧は歩の駒を村の中まで動かした。
「この六名を捕縛した後は、村はずれの水車小屋で円兼殿が率いる門徒の皆さんが合流します」
「おい、ここの奴らも加えるなんて聞いてねぇぜ」
甚蔵が言うと、安牧は悪びれる様子もなく、伝え忘れたと答えた。
「それに我々では移送が困難ですからね。場合によっては、捕縛する人数が増えるかもしれませんし。それに、これは慈光宗の方から志願された事です」
「逆恨みされる危険もあるぜ。逸撰隊の皆様は、そこまで考えてないのか?」
「ええ。隊務が第一ですから」
即答だった。それ以上、甚蔵は何も言う気になれず話し合いは散会となった。
安牧と伊平次には、別室が用意されているらしくすぐに姿を消した。すると戸来たちが安牧の態度を非難しだしたが、甚蔵は一喝してやめさせた。気持ちはわかるが、大事の前に話すべき内容ではない。
「俺が死んだら、安牧に従え」
甚蔵は、改めて戸来たちに言った。
「その安牧も殺られたら伊平次に。癪だろうが、この二人はお前たちより経験はある」
「そんな、加瀬様が死ぬなんて」
戸来が大袈裟な反応を見せたが、甚蔵は一笑して頭を叩いた。
「万が一だよ。それに俺はそう簡単にくたばらん」
◆◇◆◇◆◇◆◆◇◆◇◆◇◆
沢辺村は、川沿いの小さな村だった。
庄屋の屋敷を中心に、八戸の百姓家が点在している。
甚蔵と安牧は、道案内の渡世人に変装した伊平次に導かれるようにして、庄屋屋敷へと向かった。
村の外で伏せている戸来たちが心配だが、ここは信じるしかない。それに何かあれば、呼び笛を吹く事になっている。万が一の場合は、円兼も駆け付けるとの事だった。
「こりゃ、音助さん」
田圃の中にいた青年に、伊平次が声を掛けられた。愛想良く笑顔で片手を挙げる。
伊平次は恰好だけでなく、雰囲気も渡世人になり切っている。伊平次がなり切っている音助は、気風のいい陽気な男だ。
「おう三吉じゃねぇか。達者にしてるかい?」
三吉。それは安牧が持っていた書き付けには無かった名前だった。
「達者って、つい最近賭場で会ったばかりじゃねぇですかい」
「そうだった。あん時は大負けしたんで、お前がいたって事も一緒に忘れちまったよ」
「そいつは酷でぇや。それで今日は何か村に用事があんのかい?」
「おう。貸元に頼まれて、阿部様のご家中を弥左衛門さんのところに案内するのさ」
三吉と呼ばれた青年は、白い歯を見せて笑って見送った。
庄屋屋敷が見えてきた。土塀に囲まれているが、小さな村に見合った規模の屋敷だった。他の庄屋に比べて、圧倒的に小さい。本当に三代に渡る盗賊だろうかと思うほどである。
表門で、訪ないを入れた。女中が出て来たので、伊平次が用件を告げた。中に案内されそうになったが、安牧が
「挨拶だけで長居はしない」
と告げて固辞した。
伊平次が女中と共に屋敷に入っていき、暫くして五十路手前の男と出てきた。楽しそうに談笑している。あれが鎌太郎だろうか。頭の半分は白いが肌の艶は良い。人相書きによく似ていた。
「これはこれは、ようこそお越しくださいました。私が沢辺村の庄屋を務めております、弥左衛門でございます」
笑顔で弥左衛門と名乗った鎌太郎が、腰を低くして言った。甚蔵と安牧も姓名と役職を告げた。勿論、それは偽りのものだ。
「音助さんにお話は伺っております。何でも新しく阿部様のご家中に加えられたとかで」
「ああ、その通りだ。それで殿様に、まずは所領を見て来いと言われてね」
手筈通り、甚蔵が答えた。
「なるほど。お役目ご苦労でございます。家の者に聞きましたが、立ち話ではなんでしょう。すぐに酒肴を用意させますが」
「それは構わんでくれ。話を聞くだけさ」
「はぁ」
今の所、鎌太郎に不審がる様子はない。
「それで、この村には問題はあるかい?」
「特にございません。年貢も収めておりますし、何かあれば、すぐに報せております。ですが、最近何やら物騒で」
「物騒とはどういう事だい?」
「ええ。上州では人殺しが流行っておりまして。聞いておりませんか?」
甚蔵は安牧と顔を見合わせて首を振った。
「所領の見聞はこの村が最初でね。だが、上州と言えば長脇差の気風だろう」
「それはそうなのですが、ちょっと事情が違いまして。何でも若い娘に乱暴を働いて殺したり、家に押し込んで一家全員を……。しかも、押し込んだ先の幼い赤子をバラバラにして欄間に吊るしたとか」
「何?」
脳裏に、下谷上野町の尾州屋で目にした惨劇が浮かんだ。あの時も、赤子が吊るされていた。そんな真似をする奴はそうはいない。
「その賊はどこに押し込んだんだ?」
「へぇ、確か多胡の上日野村だったと思います」
「そこに、木簡は無かったか? 木切れに、羅刹天が描かれた」
「おい、それは当家に関係の無い話だ」
安牧が会話に割って入った。突然の変化に、鎌太郎は戸惑いの表情を見せている。
甚蔵は舌打ちをした。もっと訊きたいと思ったが、どうせ捕縛すればじっくり話を聞く事が出来る。
「庄屋様」
不意に、百姓が屋敷に駆けこんで来た。来るときに出会った三吉だった。
「そいつら、庄屋様を捕まえにきた役人だ」
「なにっ」
鎌太郎が、安牧を突き飛ばした。踵を返して逃げると思いきや、鎌太郎の懐から白い閃光が伸びてきた。
それは迅く、的確だった。甚蔵は咄嗟に跳び退き、腰の同田貫正国に手を掛けた時、伊平次が鎌太郎に組み付いた。襟を掴んで、地面に叩きつけるように投げ飛ばす。背中を激しく打った鎌太郎は、息が出来ないのか大きく口を開けて喘いでいる。甚蔵は三吉の方へ眼を向けたが、安牧が易々と制圧していた。
騒ぎを聞きつけて奉公人たちが、屋敷からわらわらと出て来た。縄を打たれた鎌太郎と三吉を見て悲鳴を挙げたが、甚蔵は同田貫正国の切っ先を突き付けて制した。
「大人しくしてりゃ、お前たちはお目こぼししてやる。だから、手向かいすんじゃねぇよ」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】ふたつ星、輝いて 〜あやし兄弟と町娘の江戸捕物抄〜
上杉
歴史・時代
■歴史小説大賞奨励賞受賞しました!■
おりんは江戸のとある武家屋敷で下女として働く14歳の少女。ある日、突然屋敷で母の急死を告げられ、自分が花街へ売られることを知った彼女はその場から逃げだした。
母は殺されたのかもしれない――そんな絶望のどん底にいたおりんに声をかけたのは、奉行所で同心として働く有島惣次郎だった。
今も刺客の手が迫る彼女を守るため、彼の屋敷で住み込みで働くことが決まる。そこで彼の兄――有島清之進とともに生活を始めるのだが、病弱という噂とはかけ離れた腕っぷしのよさに、おりんは驚きを隠せない。
そうしてともに生活しながら少しづつ心を開いていった――その矢先のことだった。
母の命を奪った犯人が発覚すると同時に、何故か兄清之進に凶刃が迫り――。
とある秘密を抱えた兄弟と町娘おりんの紡ぐ江戸捕物抄です!お楽しみください!
※フィクションです。
※周辺の歴史事件などは、史実を踏んでいます。
皆さまご評価頂きありがとうございました。大変嬉しいです!
今後も精進してまいります!
与兵衛長屋つれあい帖 お江戸ふたり暮らし
かずえ
歴史・時代
旧題:ふたり暮らし
長屋シリーズ一作目。
第八回歴史・時代小説大賞で優秀短編賞を頂きました。応援してくださった皆様、ありがとうございます。
十歳のみつは、十日前に一人親の母を亡くしたばかり。幸い、母の蓄えがあり、自分の裁縫の腕の良さもあって、何とか今まで通り長屋で暮らしていけそうだ。
頼まれた繕い物を届けた帰り、くすんだ着物で座り込んでいる男の子を拾う。
一人で寂しかったみつは、拾った男の子と二人で暮らし始めた。
『五感の調べ〜女按摩師異聞帖〜』
月影 朔
歴史・時代
江戸。盲目の女按摩師・市には、音、匂い、感触、全てが真実を語りかける。
失われた視覚と引き換えに得た、驚異の五感。
その力が、江戸の闇に起きた難事件の扉をこじ開ける。
裏社会に潜む謎の敵、視覚を欺く巧妙な罠。
市は「聴く」「嗅ぐ」「触れる」独自の捜査で、事件の核心に迫る。
癒やしの薬膳、そして人情の機微も鮮やかに、『この五感が、江戸を変える』
――新感覚時代ミステリー開幕!
【完結】『紅蓮の算盤〜天明飢饉、米問屋女房の戦い〜』
月影 朔
歴史・時代
江戸、天明三年。未曽有の大飢饉が、大坂を地獄に変えた――。
飢え死にする民を嘲笑うかのように、権力と結託した悪徳商人は、米を買い占め私腹を肥やす。
大坂の米問屋「稲穂屋」の女房、お凛は、天才的な算術の才と、決して諦めない胆力を持つ女だった。
愛する夫と店を守るため、算盤を武器に立ち向かうが、悪徳商人の罠と権力の横暴により、稲穂屋は全てを失う。米蔵は空、夫は獄へ、裏切りにも遭い、お凛は絶望の淵へ。
だが、彼女は、立ち上がる!
人々の絆と夫からの希望を胸に、お凛は紅蓮の炎を宿した算盤を手に、たった一人で巨大な悪へ挑むことを決意する。
奪われた命綱を、踏みにじられた正義を、算盤で奪い返せ!
これは、絶望から奇跡を起こした、一人の女房の壮絶な歴史活劇!知略と勇気で巨悪を討つ、圧巻の大逆転ドラマ!
――今、紅蓮の算盤が、不正を断罪する鉄槌となる!
アブナイお殿様-月野家江戸屋敷騒動顛末-(R15版)
三矢由巳
歴史・時代
時は江戸、老中水野忠邦が失脚した頃のこと。
佳穂(かほ)は江戸の望月藩月野家上屋敷の奥方様に仕える中臈。
幼い頃に会った千代という少女に憧れ、奥での一生奉公を望んでいた。
ところが、若殿様が急死し事態は一変、分家から養子に入った慶温(よしはる)こと又四郎に侍ることに。
又四郎はずっと前にも会ったことがあると言うが、佳穂には心当たりがない。
海外の事情や英吉利語を教える又四郎に翻弄されるも、惹かれていく佳穂。
一方、二人の周辺では次々に不可解な事件が起きる。
事件の真相を追うのは又四郎や屋敷の人々、そしてスタンダードプードルのシロ。
果たして、佳穂は又四郎と結ばれるのか。
シロの鼻が真実を追い詰める!
別サイトで発表した作品のR15版です。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
天竜川で逢いましょう 〜日本史教師が石田三成とか無理なので平和な世界を目指します〜
岩 大志
歴史・時代
ごくありふれた高校教師津久見裕太は、ひょんなことから頭を打ち、気を失う。
けたたましい轟音に気付き目を覚ますと多数の軍旗。
髭もじゃの男に「いよいよですな。」と、言われ混乱する津久見。
戦国時代の大きな分かれ道のド真ん中に転生した津久見はどうするのか!!???
そもそも現代人が生首とか無理なので、平和な世の中を目指そうと思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる