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【癒しの雫】のランク(2)

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 ギルド本部や一般の人々からの評判も著しく悪化しており、ランクダウンは避けられない!と言う判断になっていた【勇者の館】。

 Sランクギルドは国家からの指名依頼は受ける必要があるのだが、ギルドとして通常受ける依頼を達成する事で得られるギルド本部の評価を気にする必要もなく、極論を言えば、国家の指名依頼を除き一切の依頼を受けずともランクが下がる事はない。

 他国入国時の宿泊、食事は無料になり、移動の馬車も無料。

そして、ジャロリア王国からの指名依頼の有無にかかわらず、毎月虹金貨五枚(五億円)が支払われ、希望する素材等の要求も極めて入手しやすい特権が与えられると言う説明だった。

一般的なギルドはCランクが良い所で、対応できる魔獣もCランク。

討伐時に魔獣を相当痛めつけて始末する必要があるので、その報酬は白金貨1枚(百万円)がおおよその相場になっているのだが、使用する武具の補修も高額で、日々の生活もある。

 当然命の危険もある中で数日かけて依頼をこなすのが一般的であり、消耗品も安くないために、決して高額の報酬ではない。

 そんな中、何もせずとも虹金貨五枚(五億円)の報酬が毎月入ってくるのだから、Sランクギルドの厚遇を極めたような特権を聞いて流石のクオウも頬がヒクヒクしており、横で黙って話を聞いているフレナブルは、その表情を見て微笑んでいる。

 ギルドの運営はそのマスターの考えによって大きく異なっており、固定給で雇い、最低限のノルマを決めるギルドも有れば、任意で依頼を受けた成果によって、都度報酬を支払う形式をとっているギルドもある。

 シア率いる【癒しの雫】は固定給としているギルドだが、今回のランク昇格、ギルドへの国家からの報奨金によって、各自の給料が一気に上昇する事は間違いないだろう。

 今正に、Sランクに昇格した事を聞いて固まっている仲間にこの事を話してしまっては、何も理解できないか、更に動けるまでの時間が必要になるだろうと思っているクオウ。

半ばあきらめの境地で、黙って一人でラクロスの話を聞いていた。

「ルーカスは、これほどの厚遇だから手放せなかったんだな……」

 思わずこう口にしてしまうのも仕方がない程の待遇であり、唯一背負うのは、国家からの指名依頼。

 今この場では何も言われていないが、メンバーが落ち着く頃を見計らって間違いなく二つの依頼、魔獣対応と魔王対応の依頼が来る事は容易に想像できる。

 クオウの正直な見解としては、今、自分の腕の中で気持ちよさそうに寝ているラトールを単体で魔王領に放り込んでおけば全て終わるとは思っているが、ラトールは非常に寂しがり屋であり、長期の単独行動は適さない。

 フレナブル単体でも問題はないのだが、何が起きるか分からないために、最低でもフレナブルとラトールで共同作業が良いのか?と考えを巡らせていた。

 結局は、安全を考えると【癒しの雫】の魔族組、辛うじてハーフのペトロも含めて対応するのが良いのか…と思いながらも、今尚ラクロスの話を聞いている。

 暫くして、ようやく解放された【癒しの雫】。

 国家からの依頼については、シアを始めとしたメンバーがもう少し落ち着いてから話すと判断したのだろう。今回直接言われる事はなかった。

 今回の喜びと言うよりも驚きによって、フワフワした足取りで【癒しの雫】に戻るメンバー達。

「皆さん、恐らく明日か明後日にはSランクギルド昇格の報が国家中に流れます。今日はゆっくりと寝て、明日からの騒動に対応できるようにしていた方が良いですよ」

 今日はもう何をどうしても普通には戻らないと判断し、クオウはこれだけを伝えて解散させる事にした。

 本来はシアの役目だが、その本人が最も重症であるから仕方がない。

 その日の深夜、漸くシアも現実を受け売れる事が出来たのか、今は中庭になっている場所からギルドに向かって、両親にSランク昇格を報告していた。

 いつもはシアの両親への報告は各自が部屋からさりげなく様子を伺っているのだが、今日その姿を確認できたのはクオウとフレナブルだけだった……
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