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1章:癒しを求めたはずが

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 またドライな対応なのかと思っていましたが…あれね。丁寧な対応というか、なんていったらいいのか…うん、そうそう、旅行に行った時のホテルとかそういう対応。

 ただ…これは、キルギスさんが連れて来たからという理由もある、らしい。
 ちょっとね、部屋に案内してくれた女性に…こう、おもわずぽろっと言ってしまったら困った顔で笑って教えてくれた。
 機関という、ある意味身分やら地位とは隔絶されるべき組織だけど、だからといってその土地を治める領主のご子息に対して何も思わない訳ではない、らしい。

「全く…ええ、ぜんっぜん、ふつーに同僚…友達として接しても問題ございません。ございませんが、それでもやはりこの領地に住む者としては」

 だから、そのキルギスさんが保護した私に対しても丁寧になるのだとか。

「じゃあ、他の保護された人は…」
「しっかりきちんと丁寧に対応しますよ? ただ…保護した人の状況とかも様々ございますので」

 恐怖心から接するのに慎重にならなければいけないとか、後は…まあ、保護されて当たり前という態度の人には、どうしても冷たく接してしまったりとかあるらしく、色々大変なんです…と、ぼやく。
 まあ、人間だものね。それはしょうがない。うん。
 案内は勿論それらを説明してくれた女性は、スーザンさんという名前なんだけど、年齢が若い様な、私と同じような、それにしては落ち着いているような…と、イメージがコロコロ変わる人だけど、しっかりと面倒みてもらってます。お茶とかお菓子とかも用意してくれるんだよ…至れり尽くせりだよ。
 
 ということで…夕食です。食堂です。スーザンさんと一緒に来たけど、この食堂は注文形式らしい。とはいえおかずというかメインというか…肉、魚、日替わりの3種類から選べて、ご飯やパンも選べるらしい。もちろん量も。肉体労働な人と、小食な女性では違うもんね…
 何気に麺類も種類が豊富なのだとか。いろんな世界から来る人が、食べたいからと開発するそうで。そんな麺類が日替わりで主に出るらしいけど、今日は野菜たっぷりの煮物だった。最近煮物食べてないなーと思ってそれにしてしまったけど。

「あ。醤油味…」

 その煮物を食べれば、しょうゆ味の煮物だった。色は確かに茶色っぽい色だったけど、世界が違うし同じとは限らないから期待してなかったけど…すごいおいしい。

「いろんな所からいろんな人や物が落ちて来るからね。料理もたくさんの種類があるわよ。急に知らない場所に来てしまった事を不運だとは思わないで、多少は楽しんでもらえると嬉しいわ」
「はい。そうします」

 旅行にでも来たと思えばいいのよね、うん。

「明日、スキルや適性を調べるとは伺ってるけど…少しは遊べるといいのだけれど…あ、キルギスさん、こっち」

 と、食堂にキルギスさんも来たらしい。もう一人と一緒に来たみたいだけど…手続きをしてくれた人かな。キルギスさんは手を軽く上げたと思ったら、なにかその人に言われてこちらへと来た。

「所長はいいんですか?」
「私の分も持って行くからとっとと行けと言われたんだ。…料理は口に合ったか?」

 あの人所長だったのか。それにしては手続きする時に居丈高じゃないというか、すごく柔らかい雰囲気だったけど。

「は、はい。故郷の味付けだったので驚きましたが」
「そうだろうな。貴女の同郷の者もそう言ってたくさんおかわりしていた」

 所長に対してそんな事を考えつつ答えれば、そう言って笑うキルギスさん。…初めて屈託なく笑った顔を見たような。今まで、困ったような笑い方ばかりだったから…ちょっと、その笑顔にどきっとしたのは…気のせいにしたい。
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