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2章:日本へ戻ってきました

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 夕食。クマ肉の赤ワイン煮は、すごく美味しかった…パスタは、しばらく水につけていると湯がく時間が短縮されるとかで、赤ワイン煮の中に投入されて味がしみこんだおいしい物になっていた。
 …串焼きも甘みがあって美味しかったけど、赤ワインで煮た事でとろっとろになってて、しかも味がスープに溶け込んでて、もうね…

「これは結構両親も好きなんだよね~大鍋で作って、ご近所に配ったりとかもするよ」
「そうなんですか?」
「うん。一匹仕留めると結構な肉の量になるけど、自分で捌く場合はどうしてもブロック肉になっちゃうし、肉が硬いからこういう煮込み料理になるんだけど…ワインとかあんまり使わないからね」

 オシャレで若者の料理だと言われると言って、困ったように笑う。

「一匹仕留めた場合のお肉って…余ります、よね。どうするんですか?」
「あーでっかい冷凍庫があるし、後はご近所に配ったりとか、流通させる為の処理場もあるけどね。うちは燻製にしたりして保存食にしたり、あとは、ね?」

 あ、はい。マジックバックですね…それでも、旅館をやっていて部屋もあるから、巨大な冷凍庫を3台持っているのだとか。

「特に積極的に狩ってる訳じゃないんだけど、腕が良いからね」

 逃がすことがないのだと自慢気に言う。スキルか魔法でなにかしてそうだなとは思うんだけど、それは言わないでおいた。


 そうして、夜。日が暮れると、早々に寝てしまう事が多い。薪の消費量を抑えるという理由と、ランプもあるけどそれだって燃料が必要な訳で。なので、いつもなら夕飯を終えたら鍋や使った食器を片付けて車へ積み込み、焚火を燃やし尽くしたら火消壺に全て入れて、テントへと引っ込むのだけれど。

「そういえばこっちって…薪どうするの?あっちだと、必ず一人起きてて、火の番しながら獣対策するんだけど」

 と、言われて、あーあっちだとそうなのね。と理解をする。獣の脅威度が違うのね…一応、獣とか虫に食べ物をやられない様に車に片付けるし、寝てる間に火事になっても困るから火も始末するし。
 それを説明すれば、火の始末はしておいてくれるという事で、車から火消壺を持って来てお願いする。

「鍋は冷めたら車に持って行くから、ごめん、網と食器お願いしてもいい?」
「ええ、いつもの事なので」

 火で焼けて炭になってるから、洗うのも大変じゃないしね。食器も今回はお皿にお椀だけだし。
 そうして片付けて、ランプの明かりだけでテント内で過ごすけれど…

「じゃあ、これ置いて行くから…うーん、こっち向きの方が良いのかな」

 早々に向こうへ行くらしい。取り出されたのは、寝袋に詰まったマネキン…に、アイマスクが付けられた物体で。横向きで、私の方を向く様に置かれたけど…アイマスクがあるとこれはこれで違和感が…

「じゃあ、行ってくるね」
「はい。いってらっしゃい」

 そんな会話をすると、ふっと松田さんが消えた。

「…本当に、行ったり来たり出来るんだな…」

 異世界なんて話題を話していたけど、こう、現実的じゃないというか。そんな感覚だったんだけど…こう、目の前で消えられれば、ね。
 私も、行こうと思えば行けるんだよなぁ…と、思ってしまった。


***一方、松田は***

 日本から、この異世界・リュリュクスの…ガルニクス国王都にある自身の住処へ飛び、自室の風景にほっとする。そうして、机の上にある書箱には…封書が入っていた。
 この書箱は魔道具であり、許可した相手限定という縛りはあるものの、まるでメールの様なアイテムだ。
 入っていた封書は、キルギスさんの物。日本へ行く前に、高梨さんと会ってくると出した返事だろう。どんな言葉が返ってくるんだろうとニヤニヤしつつ開けば…

「身体の事とか、病んでないかとか、そういう事ばっかで笑える」

 この世界と違って、魔法は使えないけど医療もしっかりしてるし、心配する事もないのに。本当に心配性だよなぁ。と呆れる。だからこそ…キルギスさんが保護した人間は、優秀であってきちんと職について、能力を発揮して貢献しているのだろうけれど。

「なぁんで日本に帰しちゃったんだろうなぁ…」

 スキルが問題大有りなのは…まあ、分かるけど。あの顔と地位を最大限活用すればコロっと行くだろうに。日本に帰してからこんなに心配するくらいなら、手元に置いておけば良いものを。
 そう…手紙5枚一杯つかって、俺にこんなくだらない心配ごとを言ってくるくらいなら。

「ま、俺も同じ日本人だからね。キルギスさんにはお世話になってるし協力はしてあげたいけど…限度ってものもあるし」

 ともかく、今は…愛すべき家族の顔を見に行こう。キルギスさんへの返事は…明日、高梨さんと別れてからでもいいよな?
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