愛と悲しみのカルーラ

「もう我慢ならん。お前との婚約は解消する!」
 見目麗しい紫の髪の伯爵令息は、婚約者カルーラ・ドンマインを自宅に呼びつけて、婚約解消を告げた。

「わかりましたサム様。今までありがとうございました」

 深々と礼をして去っていくカルーラは、悲壮感の欠片もなく慎み深い微笑みだけを浮かべていた。

「なんでだよ、カルーラ。簡単に納得するなんて!」

 婚約解消を言い渡した伯爵令息サム・ロンベサールは、悔しげにその後ろ姿を脱力して眺めた。
 その背後では母親のマリンが、うんうんと頷きながら近づき彼の両肩に手を置いた。
 マリンはこの婚約に反対だったのだ。

「やったー! 婚約解消できた。マジぎりだった」
 カルーラは、婚約解消を心から喜んでいた。

 だって私達は知っていた。
 これは映画で見た《愛と悲しみのカルーラ》に似ていたから。
 それも家族揃って、役柄も一緒だ。

 でも実体はあるし不思議。
 何だか、別の世界にいるような感じなのだ。




(小説家になろうさん、カクヨムさんにも載せています)
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