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第7話

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「モーゲット子爵は相変わらずだな」
「そうですね」

ピート様に慰謝料を支払うよう催促してから数日、予想通りというべきか、モーゲット子爵は慰謝料の支払いを渋っていた。
進まない交渉に私とお父様は頭を悩ませていた。

「ピート様には慰謝料の支払いに応じるよう伝えたのですけど」
「ピート殿に問題があったのか、あるいはモーゲット子爵に問題があったのか。いずれにせよモーゲット子爵家は信用できないということだ」

ピート様に言っても無駄だったということ。
モーゲット子爵家にどういった事情があったにせよ慰謝料の支払いが済んでないことは問題だ。
信用できないけど慰謝料の件で決着がつかない限りはこの問題からは解放されない。

「こちらを諦めさせる策かもしれないな」
「そうかもしれませんね。どうします?」
「有効な手は思いつかないな」
「そうですか…」

私だって早く決着をつけたいし、このままモーゲット子爵家の自主的な行動を待つだけでは事態は好転しないだろう。
でも私だって名案は思い付かない。

「そういえばピート殿だが、メーベル嬢は相当にご執心のようだな」
「そうだったのですか。確かにそのような噂もありましたけど」

私には遊びの関係だったと説明していたけど、本当は本気の関係だったのかもしれない。
邪魔な私を捨て、慰謝料は支払わず、それでいて自分は本命のメーベル様と一緒になるなんて。

「メーベル嬢を利用してピンクルー伯爵からモーゲット子爵に圧力をかけてもらうか?」
「下手に関わると当家にも被害が及びそうですけど…」
「やはりあまり良い案ではないな」

メーベル様がピート様にご執心なら、それを利用できないだろうか。

「もういっそのこと慰謝料なんて求めないのもありかと思えてきました。慰謝料請求はしているのですから支払わなければ非はモーゲット子爵家にあります。当家は悪くありません」
「そうだが、リブの気持ちはそれでいいのか?」
「…仕方ありません。ですがそれは慰謝料を諦めるということです。そのようなことになった責任はピート様やモーゲット子爵に取ってもらうことにします」
「ほう?何か考えがあるのか?」
「一応は。メーベル様に手紙を書こうかと思います。それでピート様の浮気を匂わせればピート様も痛い目に遭うかもしれません。そうなれば慰謝料を支払わなかったことを後悔するでしょう」
「……リブに被害が及ばなければいいのだが」
「たぶん大丈夫です。メーベル様を上手く誘導しますから」

お父様はしばし考え込んだ。

「…いいだろう」
「ありがとうございます」

こうしてお父様のお許しも得たのでメーベル様に手紙を書くことにした。

ピート様から復縁を申し込まれて困っていること。
復縁すれば慰謝料の支払いをしなくて済むと考えてのことだろうとの推測。
あくまでも慰謝料の支払いから逃れるためであって私との復縁を本当に望んでいるかは疑問だということ。

嘘は書いていないし、嫉妬深いメーベル様なら大げさに捉えてくれるはず。

愛は障害を乗り越えて深まるもの。
この手紙はピート様とメーベル様の愛をいっそう強固にするためのもの。
私は二人の愛を応援してあげる。
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