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幕間……彼らの休息

①そう気づいてしまった

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「く、クラウスさんはその……」
「なんだろうか、ヒルデ」
「えっとですね……す、好きなタイプとかってあるんですか?」


 ラプスからマルリダへと戻ったクラウスはルールエのぬいぐるみの材料探しに付き合っていた。素材屋でルールエたちが話ながら材料を物色しているのを少し離れた先で見ていたクラウスにブリュンヒルトは問う。

 突然の質問にクラウスは目を瞬かせる。好きなタイプとはどういったものだろうかと首を傾げてみれば、「ほら、じょ、女性のタイプとか」と言われた。


「あ、アンジェさんみたいな感じの女性がやっぱりタイプなんですか?」
「特に考えたこともなかったな……」


 クラウス自身、女性のタイプというのを考えたことはなかった。アンジェとは幼馴染ということもあって少しずつ惹かれていっただけだ。今は特にそんな感情はないので、これといって好みがあるわけではないのだと思う。と、言ってみるのだがブリュンヒルトは納得していないふうだ。

 何かありませんかと問われてクラウスは少し考えてみる。容姿は気にしないし、多少性格がきつくても好きになったのならば許容範囲だ。なんだろうかと考えて、「嘘をつかない女性だろうか」と答える。

 クラウスは嘘が嫌いだ。誰かを想う嘘ならば許せるがそうではない、自分本位な嘘は苦手なのでそういったことを平気でしない人が望ましい。


「そ、それだけなんですか?」
「あぁ、容姿も見た目も性格も好きになったならば気にしない。悪いことをしているのならば、止めるが……それがどうしたんだ?」


 ブリュンヒルトの質問の意図が分からずクラウスが問えば、彼女は「そ、その気になったので」と慌てたように返す。


「気になることだっただろうか?」
「いや、だって、クラウスさんの好みってちょっと気になって……」
「アンジェに関してはもう何とも思っていないが?」
「そ、それは知ってますけど……どんな女性なら惹かれるのかなぁって……」


 もじもじと話すブリュンヒルトにクラウスはふむと考える。どんな女性に惹かれるのかとは考えたこともなかったなと。自然と相手に惹かれていることが多いので意識したことはなかった。

 素直にそう答えると、ブリュンヒルトは「自然と……」と考え込む。何が引っかかっているのだろうかとクラウスは彼女を眺める。


「あ、あのですね」
「なんだろうか?」
「えっと、それは誰にでも可能性があるってことですよね?」


 誰かに惹かれて好きになるということはどんな相手でもあるのかという問いにクラウスは頷いた。その可能性はなくはないのだ。どんな存在かは分からないけれど、自分自身が惹かれて好きになるということもある。

 だから、クラウスは「そうだな」と頷いた。


「それは仲間とか信頼している人とでもですよね!」
「まぁ、……そうだが……」
「よ、よし!」


 ブリュンヒルトはよしっと拳を握る。彼女は何を考えているのかクラウスには分からなかったけれど、納得した答えが聞けたのだろうと思っておく。


「聞きたいことはそれだけか?」
「はい、それだけです! ありがとうございます!」
「あぁ……」
「ヒルデー! この毛皮どう思う―!」


 ルールエがブリュンヒルトを呼ぶ。呼ばれた彼女は「ちょっと待ってください」と返事をしながら駆けていく。その背を眺めがらクラウスはぼんやりと考えた。

(仲間に惹かれる……か)

 ルールエやブリュンヒルトをそういった対象として考えたことはなかったなと。彼女たちのことは信頼している仲間だから。

(……惹かれる)

 ふと、ブリュンヒルトの笑みが浮かんだ。彼女の微笑みは陽ざしのように温かくてふっと心に残る。


「……なくはないのか」


 ぽつりとクラウスは呟く。その言葉はルールエの「クラウスお兄ちゃん!」という言葉にかき消されてしまった。

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