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紹介される。

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 険しい表情の甘路に、くるみは少しシュンとしてしまう。甘路の機嫌を損ねた原因がわからず、どうすればいいか困っているのだ。
 そんなくるみを見た甘路は、急に罪悪感が湧いてくる。
 落ち着いて考えてみれば、くるみはなにも悪くない。それなのに一方的に感情をぶつけるなんて、あまりに自分勝手だ。
 そう思い直した甘路は、短く咳払いをすると、改めてくるみと向き合った。

「あのハロウィンケーキ……今までくるみに言われたことを参考に作ったんだ、毎日鍛えられているからな、絶対に俺が目指した味に仕上がっている」

 いつも通りの優しい口調に、くるみが顔を上げる。
 するとそこには、穏やかな顔つきに戻った甘路がいた。
 その表情と言葉に、くるみはパッと花咲くように笑う。

「嬉しいです、甘路さんのお役に立てて」

 もはや役立つというレベルではなく、右腕のように必需性あるくるみだが。本人は相変わらず無自覚でどこまでも謙虚だ。
 だから甘路は、言うべきことは言わなければならないと思った。

「くるみ、明日は俺とランチしてくれ」
「……あ、はっ、はい、もちろんです」
「それから……俺以外の男と二人きりになるな。これは雇い主としてじゃなく、一人の男としての頼みだ」

 甘路があえて頼みと言ったのは、くるみに選択権を委ねるため。
 雇う側と雇われる側という立場は変えられないが、それだけではないという気持ちを伝えたかった。

「――は、はい……甘路さんがそう言うなら」

 甘路の真剣な瞳に、くるみは吸い込まれそうになりながら答えた。
 それを聞いた甘路は、少し安堵したように笑みを漏らして、くるみの頭をポンを撫でた。
 甘路の台詞が、くるみの脳内に反響する。
 それがどういう意味なのか、求めるにはまだ、くるみの感情が追いつかなかった。
 しかし、少しずつ、少しずつ……穏やかに降る雪のように、甘路の熱と優しさがくるみの中に積もってゆく。
 以前の生活が嘘のように、くるみは温かな環境に包まれていた。
 あの電話が来るまでは――。
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