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57話 内部調査 その3
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「パウムデン院長は、ようやく帰ったかって今頃思ってそうですね」
「そうかもしれないが……どうだ、エステル?」
「わ、私ですか?」
私はレヴィン様に急に話しかけられ、急いでそちらを見ることになった。ルールーとレヴィン様は何か会話していたと思うけど、ほとんど聞こえていなかった。
「ああ、済まない。考え中だったかな?」
「いえ、そんなことはありません。パウムデン院長先生のことですよね?」
「そうだ。私からは怪しい人物にしか見えなかったが……エステルの目線からはどのように映っていたのかな?」
「そうですね……いつもの院長先生の態度にも見えましたが……」
私は正直に答えてみせる。私への優しい応対はいつものパウムデン院長先生と変わらなかった。いつでも孤児院に戻ってこい、という言葉も非常に嬉しかった。でも……。
「ただ、レヴィン様と話していた時の院長先生は……少しだけ、様子が違うように見えました」
「そうか、結界を通してみて、パウムデン院長や他の孤児院に居る者達に変化はあったか?」
「そこははっきりとは申し上げられませんが……少なくとも、私達に敵意を持っていた人は孤児院内には居なかったと思います」
「それはそうでしょうね。敵意を持っていたら、今頃はリキッドみたいになっていたでしょうから」
「ええ……そうですね」
パウムデン院長先生自身も多少、顔色が変化していたけど特に結界が反応する程の敵意は出していなかったことになる。ルールーの予想は正しいと言える。
「こう言ってしまうと、エステルに失礼かもしれないが……私はパウムデン院長がどうしても無関係とは思えない。才能ランキングで6位の者が白い大蛇を率いてシャラハザード王国に攻め入って来たのは事実なのだし。何かしらの関係性はあるのだろう」
私達は孤児院から相当に離れたところで話している。だから、今のレヴィン様の言葉がパウムデン院長に聞こえていることはないだろうけど……私は無意識に孤児院の方を向いてしまっていた。
「この後はどうしますか、レヴィン王子殿下。もう少し、調査を続けますか?」
「いや、一度、仕切り直すとしようか。どのみち、これ以上粘ったとしてもボロを出しそうにないからな」
「それでは一度、シャラハザード王国に戻るんですね?」
私の問い掛けにレヴィン様は軽く頷いた。
「ああ、そうだな。一旦、戻るとしようか……エステルもそれで大丈夫か?」
「は、はい……大丈夫です」
気のせいか、孤児院の方から視線を感じたけれど……誰が見ていたかまでは分からなかった。小さい子供たちが私達が訪ねて来たから、珍しくて見ていたのかしら? 私達はその後、馬車に乗ってシャラハザード王国を目指した。
「そうかもしれないが……どうだ、エステル?」
「わ、私ですか?」
私はレヴィン様に急に話しかけられ、急いでそちらを見ることになった。ルールーとレヴィン様は何か会話していたと思うけど、ほとんど聞こえていなかった。
「ああ、済まない。考え中だったかな?」
「いえ、そんなことはありません。パウムデン院長先生のことですよね?」
「そうだ。私からは怪しい人物にしか見えなかったが……エステルの目線からはどのように映っていたのかな?」
「そうですね……いつもの院長先生の態度にも見えましたが……」
私は正直に答えてみせる。私への優しい応対はいつものパウムデン院長先生と変わらなかった。いつでも孤児院に戻ってこい、という言葉も非常に嬉しかった。でも……。
「ただ、レヴィン様と話していた時の院長先生は……少しだけ、様子が違うように見えました」
「そうか、結界を通してみて、パウムデン院長や他の孤児院に居る者達に変化はあったか?」
「そこははっきりとは申し上げられませんが……少なくとも、私達に敵意を持っていた人は孤児院内には居なかったと思います」
「それはそうでしょうね。敵意を持っていたら、今頃はリキッドみたいになっていたでしょうから」
「ええ……そうですね」
パウムデン院長先生自身も多少、顔色が変化していたけど特に結界が反応する程の敵意は出していなかったことになる。ルールーの予想は正しいと言える。
「こう言ってしまうと、エステルに失礼かもしれないが……私はパウムデン院長がどうしても無関係とは思えない。才能ランキングで6位の者が白い大蛇を率いてシャラハザード王国に攻め入って来たのは事実なのだし。何かしらの関係性はあるのだろう」
私達は孤児院から相当に離れたところで話している。だから、今のレヴィン様の言葉がパウムデン院長に聞こえていることはないだろうけど……私は無意識に孤児院の方を向いてしまっていた。
「この後はどうしますか、レヴィン王子殿下。もう少し、調査を続けますか?」
「いや、一度、仕切り直すとしようか。どのみち、これ以上粘ったとしてもボロを出しそうにないからな」
「それでは一度、シャラハザード王国に戻るんですね?」
私の問い掛けにレヴィン様は軽く頷いた。
「ああ、そうだな。一旦、戻るとしようか……エステルもそれで大丈夫か?」
「は、はい……大丈夫です」
気のせいか、孤児院の方から視線を感じたけれど……誰が見ていたかまでは分からなかった。小さい子供たちが私達が訪ねて来たから、珍しくて見ていたのかしら? 私達はその後、馬車に乗ってシャラハザード王国を目指した。
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