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第22話 待っていてくれたククリ
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「マツイさんっ! やっぱり来てくれたんですねっ!」
写し鏡の門を通り抜けるとそこにはククリがいた。
石畳の床につまらなそうに体育座りをしていたが俺の姿を見るなり宙に飛び上がって俺の目の前に来る。
「ククリ! もしかしてずっとここにいたのか?」
「はいっ。マツイさんならまた来てくれると思って待っていたんですっ」
満面の笑みで答えるククリ。
一日半もの間俺を待ってくれていたということか。
「悪いな、待たせて」
「いいんですよ。それよりまたマツイさんとダンジョン探索できるの楽しみですっ」
嬉しいことを言ってくれる。
「ククリにもらったダンジョンのすすめ、全部読んだぞ」
「わあ、そうですか。何かわからないところはありましたか?」
「トウキョウダンジョンが地下何階まであるのかとレベルの上限が書いてなかったんだけど」
「あ~、それは私も知らないんです。すいません」
「あ……そうなんだ。まあいいけど」
案内人のククリにもわからないことはあるのか。
「では早速行きましょうか」
言うとククリは小さく狭い通路をひゅーんと進んでいった。
俺も全裸のままはいはいをしてあとに続く。
「そうそう、今さらですけどマツイさん大丈夫ですか?」
途中ククリが振り返る。
「なんのことだ?」
「フロアボスです。マツイさんフロアボスのこと警戒していたじゃないですか」
「あー、そのことならフロアボスと戦う前にしっかりレベル上げしておけば大丈夫さ。そもそもヒューマノイドスライムの時はまだフロアボスの存在を知らなかっただけだからな」
俺はロールプレイングゲームでも慎重に慎重を期して目標到達レベルよりかなりレベルを上げてから挑む主義なんだ。
前回がイレギュラーだっただけだ。
「そうですか」
俺の先を行っていたククリは一足早く狭い通路を抜け出た。
そして俺も通路を抜け立ち上がる。
見るとそこは前回来た時とは確かに地形が変わっていた。
石壁、石畳は同じだが部屋の広さや通路の配置など全然違っている。
俺は周りを見回しながら、
「本に書いてあった通りだな。一昨日とは別の場所みたいだ」
口にした。
「大丈夫ですよ、地下一階層は前回と同じくスライムしか出ませんしフロアボスは一度倒しているのでもう出てきませんから」
とククリ。
「そうか。じゃあ安心して進めるな」
「はい。とりあえずこの階層で拾えるアイテムはすべて拾ってから下の階に向かいましょう」
俺はククリの提案に従い地下一階層をしらみつぶしに歩き回った。
途中襲ってきたスライムを危なげなく倒しながら頭の中の地図をうめていく。
一時間弱かけて探した結果俺たちはダンジョン内に合計三つの宝箱を発見した。
最初にみつけた宝箱は魔眼で透視した際中身が罠だと見抜けたのでスルーして二つ目、三つ目を開けた。
二つ目にみつけた宝箱の中には布の服が、三つ目にみつけた宝箱の中には象の形をかたどった像が入っていた。
「ククリ、この像なんだ?」
防御力+1の布の服を着て全裸ではなくなった俺が宝箱の中の像を指差す。
「わあ、象の像ですね!」
ククリが元気よく発した。
「……あー。ははっ面白いなククリは」
「ち、違いますよ、ダジャレを言ったわけじゃありませんからねっ。そういう名前のアイテムなんですっ」
顔を赤らめながら首を横に振る。
……なんだ、そうだったのか。
てっきりダンジョン探索の息抜きに笑わせてくれようとしたのかと思って下手な愛想笑いをしてしまった。
「なんなんだ象の像って?」
俺はそれを取り出してみる。
銅像だろうか割とずっしりしている。
「象の像は呪われたアイテムです。持っていると不幸が訪れます」
「おいっ」
俺は象の像を投げ捨てた。
「そういうことは早く言えよな。持っちゃったじゃないか」
「でもベアさんなら千円で買い取ってくれますよ」
「やだよ。不幸が訪れるんだろ」
ベアさんが近くにいるならともかく千円のためにこんな呪われたアイテムなんか持っていたくはない。
「武器としても使えますよ」
「武器って……ただの鈍器じゃないか」
「攻撃力は+1です」
「却下だ。もっとましなものを探す」
とは言ったもののこのフロアにはもう宝箱はない。
すぐそこにある階段を下りて地下二階層に行くか、それともスライムを狩ってレベル上げとアイテムドロップを狙うか。
俺は足元に視線を落として考える。
うーん……スライムを倒したところで手に入る経験値はたかが知れているし、アイテムを落とす確率も低いらしいからな。
だったら次の階層に行ってみるのもいいかもしれないな。強いモンスターがいたら地下一階層に戻ってくればいいんだし。
「……さん、マツイさん、聞いてますか? おーい?」
気付くとククリが俺の顔の前で懸命に手を振っていた。
「あ、悪い。聞いてなかった」
考え事に集中していてククリの声が聞こえていなかった。
「マツイさん、もうすぐ地下一階層に入ってから一時間が経ちますよ」
「あー、もうそんなになるのか」
「一つのフロアにとどまっていられる時間は一時間です。それを超えるとアイテムも所持金も持ち物はすべて失って写し鏡の門からダンジョンの外に強制退出させられちゃいます」
「は? そんなことダンジョンのすすめには書いてなかったぞ」
「えへへ、書き忘れましたすいません」
照れくさそうに頬をかくククリ。
「あー、そう……それって一回別の階層に行って戻ったらリセットされるのか?」
「あ、はい。それなら大丈夫です」
「取得したスキルとかレベルは?」
「それも大丈夫です。あくまで持ち物がなくなるだけですから」
「なんだ。だったらまぁ……」
今は幸か不幸か布の服しか持っていないしなくなったところで痛くも痒くもないな。
「スライムはもうマツイさんの敵ではないですしそろそろ地下二階層に行ってみませんか?」
「……そうだな。そうするか」
俺はククリに背中を押され地下二階層への階段を下りていった。
写し鏡の門を通り抜けるとそこにはククリがいた。
石畳の床につまらなそうに体育座りをしていたが俺の姿を見るなり宙に飛び上がって俺の目の前に来る。
「ククリ! もしかしてずっとここにいたのか?」
「はいっ。マツイさんならまた来てくれると思って待っていたんですっ」
満面の笑みで答えるククリ。
一日半もの間俺を待ってくれていたということか。
「悪いな、待たせて」
「いいんですよ。それよりまたマツイさんとダンジョン探索できるの楽しみですっ」
嬉しいことを言ってくれる。
「ククリにもらったダンジョンのすすめ、全部読んだぞ」
「わあ、そうですか。何かわからないところはありましたか?」
「トウキョウダンジョンが地下何階まであるのかとレベルの上限が書いてなかったんだけど」
「あ~、それは私も知らないんです。すいません」
「あ……そうなんだ。まあいいけど」
案内人のククリにもわからないことはあるのか。
「では早速行きましょうか」
言うとククリは小さく狭い通路をひゅーんと進んでいった。
俺も全裸のままはいはいをしてあとに続く。
「そうそう、今さらですけどマツイさん大丈夫ですか?」
途中ククリが振り返る。
「なんのことだ?」
「フロアボスです。マツイさんフロアボスのこと警戒していたじゃないですか」
「あー、そのことならフロアボスと戦う前にしっかりレベル上げしておけば大丈夫さ。そもそもヒューマノイドスライムの時はまだフロアボスの存在を知らなかっただけだからな」
俺はロールプレイングゲームでも慎重に慎重を期して目標到達レベルよりかなりレベルを上げてから挑む主義なんだ。
前回がイレギュラーだっただけだ。
「そうですか」
俺の先を行っていたククリは一足早く狭い通路を抜け出た。
そして俺も通路を抜け立ち上がる。
見るとそこは前回来た時とは確かに地形が変わっていた。
石壁、石畳は同じだが部屋の広さや通路の配置など全然違っている。
俺は周りを見回しながら、
「本に書いてあった通りだな。一昨日とは別の場所みたいだ」
口にした。
「大丈夫ですよ、地下一階層は前回と同じくスライムしか出ませんしフロアボスは一度倒しているのでもう出てきませんから」
とククリ。
「そうか。じゃあ安心して進めるな」
「はい。とりあえずこの階層で拾えるアイテムはすべて拾ってから下の階に向かいましょう」
俺はククリの提案に従い地下一階層をしらみつぶしに歩き回った。
途中襲ってきたスライムを危なげなく倒しながら頭の中の地図をうめていく。
一時間弱かけて探した結果俺たちはダンジョン内に合計三つの宝箱を発見した。
最初にみつけた宝箱は魔眼で透視した際中身が罠だと見抜けたのでスルーして二つ目、三つ目を開けた。
二つ目にみつけた宝箱の中には布の服が、三つ目にみつけた宝箱の中には象の形をかたどった像が入っていた。
「ククリ、この像なんだ?」
防御力+1の布の服を着て全裸ではなくなった俺が宝箱の中の像を指差す。
「わあ、象の像ですね!」
ククリが元気よく発した。
「……あー。ははっ面白いなククリは」
「ち、違いますよ、ダジャレを言ったわけじゃありませんからねっ。そういう名前のアイテムなんですっ」
顔を赤らめながら首を横に振る。
……なんだ、そうだったのか。
てっきりダンジョン探索の息抜きに笑わせてくれようとしたのかと思って下手な愛想笑いをしてしまった。
「なんなんだ象の像って?」
俺はそれを取り出してみる。
銅像だろうか割とずっしりしている。
「象の像は呪われたアイテムです。持っていると不幸が訪れます」
「おいっ」
俺は象の像を投げ捨てた。
「そういうことは早く言えよな。持っちゃったじゃないか」
「でもベアさんなら千円で買い取ってくれますよ」
「やだよ。不幸が訪れるんだろ」
ベアさんが近くにいるならともかく千円のためにこんな呪われたアイテムなんか持っていたくはない。
「武器としても使えますよ」
「武器って……ただの鈍器じゃないか」
「攻撃力は+1です」
「却下だ。もっとましなものを探す」
とは言ったもののこのフロアにはもう宝箱はない。
すぐそこにある階段を下りて地下二階層に行くか、それともスライムを狩ってレベル上げとアイテムドロップを狙うか。
俺は足元に視線を落として考える。
うーん……スライムを倒したところで手に入る経験値はたかが知れているし、アイテムを落とす確率も低いらしいからな。
だったら次の階層に行ってみるのもいいかもしれないな。強いモンスターがいたら地下一階層に戻ってくればいいんだし。
「……さん、マツイさん、聞いてますか? おーい?」
気付くとククリが俺の顔の前で懸命に手を振っていた。
「あ、悪い。聞いてなかった」
考え事に集中していてククリの声が聞こえていなかった。
「マツイさん、もうすぐ地下一階層に入ってから一時間が経ちますよ」
「あー、もうそんなになるのか」
「一つのフロアにとどまっていられる時間は一時間です。それを超えるとアイテムも所持金も持ち物はすべて失って写し鏡の門からダンジョンの外に強制退出させられちゃいます」
「は? そんなことダンジョンのすすめには書いてなかったぞ」
「えへへ、書き忘れましたすいません」
照れくさそうに頬をかくククリ。
「あー、そう……それって一回別の階層に行って戻ったらリセットされるのか?」
「あ、はい。それなら大丈夫です」
「取得したスキルとかレベルは?」
「それも大丈夫です。あくまで持ち物がなくなるだけですから」
「なんだ。だったらまぁ……」
今は幸か不幸か布の服しか持っていないしなくなったところで痛くも痒くもないな。
「スライムはもうマツイさんの敵ではないですしそろそろ地下二階層に行ってみませんか?」
「……そうだな。そうするか」
俺はククリに背中を押され地下二階層への階段を下りていった。
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