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第58話 札束の重み
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地下四階層。
手に入れた金塊を売るためレベル上げと並行してベアさん探しを行っていた俺は期せずしてスキル、ビーコレクターを取得した。
*************************************
マツイ:レベル36
生命力:78/78
魔力:35/35
攻撃力:45
防御力:40
素早さ:35
スキル:魔眼、スライムコレクター、ゴブリンコレクター、ゾンビコレクター、ビーコレクター
魔法:バトルマッチ、ヒール、バトルアイス、キュア、バトルウインド、ハイヒール
*************************************
レベルは28から36へと上がり魔法もヒールの強化版を新しく覚え薬草などのドロップアイテムも多数ゲットしたが、ベアさんは未だみつからずじまいだった。
そしてトウキョウダンジョンに入ってから二日が経過していた。
「マツイさんそろそろ地上に帰った方がよくないですか? ポチさんがお腹を空かせているかもしれませんよ」
横を飛ぶククリが俺の顔を見ながら言ってくる。
「そうしたいけどまだ駄目だ。金塊を売ってからじゃないと」
金塊の売値は百万円。
地上に持ち帰ったところでどこで手に入れたかわからないような金の塊を買い取ってくれる業者がいるのかわからないし、変に騒ぎにでもなって悪目立ちするのも避けたい。
それならばダンジョン内でベアさんに買い取ってもらった方が安心だ。
「でもどんなに歩き回ってもベアさんに会える保証はないですし、この際金塊を売るのは諦めるしかないんじゃないですかね」
ククリの言うこともわかる。
一日近くベアさんを探して地下一階層から地下四階層を行ったり来たりしてもなおみつからないのだ。
俺の頭の中にも諦めの文字が浮かんでいた。
それにもちろんポチのことも気になる。いい加減諦めて帰るべきなのかもしれない。
「そうだなぁ……じゃあこうしよう。あと一回ずつ各フロアを回ってそれでもベアさんに会えなかったらそのまま家に帰るよ」
「そうですか、わかりました。ではそうしましょうか」
このように決めた俺たちは地上へと戻る道すがら最後のベアさん探しを始めた。
だが、やはりそう簡単にはベアさんはみつからず地下三階層、地下二階層と上がっても会うことは出来なかった。
そして俺は地下一階層に一縷の望みを託した。
地下一階層を歩いていると前からスライムが現れた……がしかし俺を見るなりズザザッと逃げ出していく。
「もうスライムはマツイさんに襲い掛かってもきませんね」
とククリが言う。
「俺がそれだけ強くなったってことか?」
「そうですよ。恐怖を感じないモンスターは別ですがそれ以外のモンスターは自分より圧倒的に強い相手には向かっていきませんから」
「へー」
ドロップアイテムを狙う機会は少なくなるが無駄な戦闘をしなくていいのは助かるな。
長い通路を歩きながら、
「ここを抜けると写し鏡の門のある部屋とつながっている部屋ですよ」
とククリ。
「そこが最後のチャンスか」
ベアさんに会える最後のチャンス。
俺たちは長い通路を抜けて部屋に出た。
すると、
「あっ、ベアさんっ!」
俺の耳元でククリが声を張り上げる。
そうなのだ。
運がいいことに最後の最後でようやくベアさんに会うことが出来たのだった。
『おう、ククリじゃねぇか。なんだ大声出して』
「もう~、ベアさんどこにいたんですかっ、私たちずっと探していたんですよっ」
ククリがひゅーんとベアさんのもとに飛んでいく。
『なんだそうだったのか。おうマツイ元気か?』
ベアさんが俺に顔を向けた。
「はい、おかげさまで」
『その様子だと何か売りたいものがあるようだな』
「ええ、実は、よいしょっと……これなんですけど」
俺は皮の袋から金塊を取り出してみせた。
『おおっ、こりゃまたすげぇもん拾ったな』
「ククリに聞いたんですけど百万円で買い取ってくれるとか……」
『ああ、そうだぜ』
「じゃ、じゃあお願いします」
俺は軽く頭を下げると金塊を地面にそっと置く。
『他に売るもんがあるなら全部出してくれ。まとめて買い取ってやるからよ』
ベアさんが言うので俺は皮の袋に入れていたアイテムをすべて出すとそれらも地面に置いた。
『におい袋に薬草に毒消し草に魔草、こんぼうに鋼のムチに黒曜の玉に目出し帽か、それと皮の袋もだな……おっと、その布の袋は破けてるから買い取れないぜ』
「あっ、すいません」
布の袋は金塊を入れていた時に破けていたか。
『そうなると合計でいくらだ、えーっと……』
「マツイさんマツイさん」
俺の頭の上でククリが俺の名前を呼ぶ。
「なんだククリ」
「どうせもう地上に帰るんですから今着てる装備品全部売っちゃってもいいんじゃないですか?」
言うククリ。
「あーそっか。そう言えばそうだな」
武器も防具も持ち帰っても使い道のないものばかりだ。
俺はククリに言われすぐさま装備品を脱ぎ出すとそれも地面に置いた。
「この武器と防具も買い取ってください」
『あん? なんだよ、せっかく計算してたのによお。ちょっと待ってな……きりがくれと皮の鎧と安全靴と鋼の兜とみかがみだろ……』
ベアさんは毛深い指を上下に動かしながら頭の中で計算を続ける。
『……よしっ。占めて百七万五千六百三十円で買い取ってやる。いいか?』
「はいっ」
俺はベアさんから五千六百三十円と百七枚の一万円札の束を受け取った。
マジかよ!? マジかよっ!? ぃやったーっ!!!
俺は雄たけびを上げたい衝動にかられながらもベアさんに見られないように小さくガッツポーズをする。
『じゃあおれはそろそろ行くぜ。またなククリ、マツイ』
「はい。ベアさんまたよろしくお願いしますね~」
「ありがとうございました、ベアさん」
ベアさんを見送る俺の手に握られた一万円札の束はそんなことあるはずないのに不思議と金塊と同じくらいの重さを感じた。
手に入れた金塊を売るためレベル上げと並行してベアさん探しを行っていた俺は期せずしてスキル、ビーコレクターを取得した。
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マツイ:レベル36
生命力:78/78
魔力:35/35
攻撃力:45
防御力:40
素早さ:35
スキル:魔眼、スライムコレクター、ゴブリンコレクター、ゾンビコレクター、ビーコレクター
魔法:バトルマッチ、ヒール、バトルアイス、キュア、バトルウインド、ハイヒール
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レベルは28から36へと上がり魔法もヒールの強化版を新しく覚え薬草などのドロップアイテムも多数ゲットしたが、ベアさんは未だみつからずじまいだった。
そしてトウキョウダンジョンに入ってから二日が経過していた。
「マツイさんそろそろ地上に帰った方がよくないですか? ポチさんがお腹を空かせているかもしれませんよ」
横を飛ぶククリが俺の顔を見ながら言ってくる。
「そうしたいけどまだ駄目だ。金塊を売ってからじゃないと」
金塊の売値は百万円。
地上に持ち帰ったところでどこで手に入れたかわからないような金の塊を買い取ってくれる業者がいるのかわからないし、変に騒ぎにでもなって悪目立ちするのも避けたい。
それならばダンジョン内でベアさんに買い取ってもらった方が安心だ。
「でもどんなに歩き回ってもベアさんに会える保証はないですし、この際金塊を売るのは諦めるしかないんじゃないですかね」
ククリの言うこともわかる。
一日近くベアさんを探して地下一階層から地下四階層を行ったり来たりしてもなおみつからないのだ。
俺の頭の中にも諦めの文字が浮かんでいた。
それにもちろんポチのことも気になる。いい加減諦めて帰るべきなのかもしれない。
「そうだなぁ……じゃあこうしよう。あと一回ずつ各フロアを回ってそれでもベアさんに会えなかったらそのまま家に帰るよ」
「そうですか、わかりました。ではそうしましょうか」
このように決めた俺たちは地上へと戻る道すがら最後のベアさん探しを始めた。
だが、やはりそう簡単にはベアさんはみつからず地下三階層、地下二階層と上がっても会うことは出来なかった。
そして俺は地下一階層に一縷の望みを託した。
地下一階層を歩いていると前からスライムが現れた……がしかし俺を見るなりズザザッと逃げ出していく。
「もうスライムはマツイさんに襲い掛かってもきませんね」
とククリが言う。
「俺がそれだけ強くなったってことか?」
「そうですよ。恐怖を感じないモンスターは別ですがそれ以外のモンスターは自分より圧倒的に強い相手には向かっていきませんから」
「へー」
ドロップアイテムを狙う機会は少なくなるが無駄な戦闘をしなくていいのは助かるな。
長い通路を歩きながら、
「ここを抜けると写し鏡の門のある部屋とつながっている部屋ですよ」
とククリ。
「そこが最後のチャンスか」
ベアさんに会える最後のチャンス。
俺たちは長い通路を抜けて部屋に出た。
すると、
「あっ、ベアさんっ!」
俺の耳元でククリが声を張り上げる。
そうなのだ。
運がいいことに最後の最後でようやくベアさんに会うことが出来たのだった。
『おう、ククリじゃねぇか。なんだ大声出して』
「もう~、ベアさんどこにいたんですかっ、私たちずっと探していたんですよっ」
ククリがひゅーんとベアさんのもとに飛んでいく。
『なんだそうだったのか。おうマツイ元気か?』
ベアさんが俺に顔を向けた。
「はい、おかげさまで」
『その様子だと何か売りたいものがあるようだな』
「ええ、実は、よいしょっと……これなんですけど」
俺は皮の袋から金塊を取り出してみせた。
『おおっ、こりゃまたすげぇもん拾ったな』
「ククリに聞いたんですけど百万円で買い取ってくれるとか……」
『ああ、そうだぜ』
「じゃ、じゃあお願いします」
俺は軽く頭を下げると金塊を地面にそっと置く。
『他に売るもんがあるなら全部出してくれ。まとめて買い取ってやるからよ』
ベアさんが言うので俺は皮の袋に入れていたアイテムをすべて出すとそれらも地面に置いた。
『におい袋に薬草に毒消し草に魔草、こんぼうに鋼のムチに黒曜の玉に目出し帽か、それと皮の袋もだな……おっと、その布の袋は破けてるから買い取れないぜ』
「あっ、すいません」
布の袋は金塊を入れていた時に破けていたか。
『そうなると合計でいくらだ、えーっと……』
「マツイさんマツイさん」
俺の頭の上でククリが俺の名前を呼ぶ。
「なんだククリ」
「どうせもう地上に帰るんですから今着てる装備品全部売っちゃってもいいんじゃないですか?」
言うククリ。
「あーそっか。そう言えばそうだな」
武器も防具も持ち帰っても使い道のないものばかりだ。
俺はククリに言われすぐさま装備品を脱ぎ出すとそれも地面に置いた。
「この武器と防具も買い取ってください」
『あん? なんだよ、せっかく計算してたのによお。ちょっと待ってな……きりがくれと皮の鎧と安全靴と鋼の兜とみかがみだろ……』
ベアさんは毛深い指を上下に動かしながら頭の中で計算を続ける。
『……よしっ。占めて百七万五千六百三十円で買い取ってやる。いいか?』
「はいっ」
俺はベアさんから五千六百三十円と百七枚の一万円札の束を受け取った。
マジかよ!? マジかよっ!? ぃやったーっ!!!
俺は雄たけびを上げたい衝動にかられながらもベアさんに見られないように小さくガッツポーズをする。
『じゃあおれはそろそろ行くぜ。またなククリ、マツイ』
「はい。ベアさんまたよろしくお願いしますね~」
「ありがとうございました、ベアさん」
ベアさんを見送る俺の手に握られた一万円札の束はそんなことあるはずないのに不思議と金塊と同じくらいの重さを感じた。
応援ありがとうございます!
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