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第104話 スライムのいる生活

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目を開けると朝日が目に差し込んできて気持ちいい朝――

「ん~、ん~…………ぶはっ!」

息が出来ず俺は飛び起きた。

「な、何やってんだお前っ、殺す気かっ」
『ピキー』

どうも息苦しいと思ったらスライムが俺の顔の上で寝ていたのだった。
おかげでこっちは海でおぼれる夢を見てしまったじゃないか。

床に落ちたスライムはにへらと笑いながら俺を見上げている。

「まったく……」


そう、俺は今スライムと同居している。
姪っ子の珠理奈ちゃんにトウキョウダンジョンからスライムを連れてきてと頼まれたからだが当の珠理奈ちゃんとはまだ会えてはいないからうちで預かっている状態だ。
ちなみに今日で同居して三日になる。

「お前、珠理奈ちゃんのとこにいったらさっきみたいなことは絶対するなよ」
『ピキー』
俺が連れ帰ったスライムのせいで姪っ子が窒息死なんてことになったらシャレにならない。


「お前もポチと一緒に下で寝てたんじゃなかったのかよ」

人間の言葉が理解できているのか定かではないがスライムに話しかけながら着替えると俺は一階に下りていく。
スライムも俺の後に続いて階段をぴょんぴょん跳び下りる。

リビングに入るとソファの上で気持ちよさそうに寝ているポチの寝顔を眺めてからキッチンへと向かった。


「スライム、何食べる?」
俺は昨日スーパーで買った食パンを一枚オーブントースターに入れつつスライムを見やる。

『ピキー!』
「ピキーじゃわからん。俺と同じトーストでいいか?」
『ピキー』
「はいはい」
スライムは雑食のようなので何をあげても食べるからトーストでいいや。


チン! という音とトーストのいいにおいにつられてポチがのそのそとキッチンにやってきた。

「おはようポチ」

俺はスライムにはトーストをポチにはドッグフードを与えてから朝ご飯を食べ始めた。


◇ ◇ ◇


「……ん、いや、いいよ。俺が届けに行くよ……そうか? わかった……うん、じゃあ待ってる。はーい」

ポチとスライムがみつめる中俺は電話を切った。

「くぅん?」
『ピキー?』
「今のは珠理奈ちゃんだよ。今からうちに来るってさ」

約束していたスライムを受け取りに来るらしい。
珠理奈ちゃんの中学校は結構遠いので俺から出向くと行ったのだがさらっと断られた。どうやらもう向かってきているようだ。

「スライム、お前珠理奈ちゃんのとこに行ってもいい子にするんだぞ」
『ピキー』
「うん。初子姉ちゃんにはみつかるなよ、面倒なことになるからな」
『ピキー』

俺はあえてスライムのことはスライムと種族名で呼んでいた。
情が移って手放しにくくなるのを避けるためだ。

「じゃあスライム、珠理奈ちゃんが来るまでポチと遊んでてくれ。俺はちょっと部屋で高木さんに電話してくるから」

スライムを手放すめどがついたので俺は高木さんにポチをまた預かってほしい旨を伝えることにした。

今の時刻は午後三時過ぎ。
ちょうど三時の休み時間だといいのだが……。


俺は部屋のドアを閉めると高木さんに電話をかけてみた。
緊張しながら呼び出し音に耳を傾けていると――

『はい。もしもし』

高木さんが電話口に出た。

「あっもしもし俺だけど、松井」
『うん、ゴジラくんどうしたの?』
「今大丈夫?」
『うん。ちょうど休憩時間だから。あ、もしかしてポチをまた預かってほしいって電話? だったら全然いいよ』
俺が持ちかける前に高木さんが先回りして答える。
話が早くて助かるが高木さんとの会話が短くなるのはちょっと残念だ。

「あ、うん、まあそうなんだけど……えっと、じゃあ今日仕事何時頃終わる?」
『今日は普通に五時に終わるよ』
「今日って宅配の仕事? それともペットホテルの方?」
高木さんは仕事を掛け持ちしているので訊いてみた。

『ペットホテルだよ。あっ、ごめん。そろそろ休憩終わるからまたあとでいい? 仕事終わったら連絡するねっ』
そう言い残して高木さんは電話を切った。

「仕事終わったら連絡するね……か」
なんか恋人同士みたいだ……。などと余韻を楽しんでいると、

ピンポーン!

玄関のチャイムが俺を現実に引き戻す。


「はーいっ」

十中八九珠理奈ちゃんだろうと思いながら玄関に行き、ドアを開けると――

「久しぶりね秀喜」

そこに立っていたのは珠理奈ちゃんではなくその母親で俺の姉の初子姉ちゃんだった。
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