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第153話 珠理奈ちゃんのふり
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車内で高木さんとの電話中スラが隣で大きなくしゃみをした。
「お前、何してんだこらっ」
俺はスマホの下部分を押さえて高木さんには聞こえないように小声でスラに注意する。
『あたし喋ってないし』
「くしゃみしたら同じだろうが」
『だってしょうがないじゃん。生理現象なんだから』
「そういう言葉は知ってるんだなお前」
スラはアヒル口というのだろうか、口元をぐにゃりと曲げてみせる。
どんな感情なんだ、それ。
『……ゴジラくん、誰か女性と一緒なの?』
その時高木さんの声がスマホから発せられた。
「……え?」
『あ、変なこと訊いてごめんね。別にどうでもいいことだよね。なんか全然関係ないわたしが口出しするようなことじゃないっていうか……』
「あー違う違う。今のは……そ、そう、姪っ子なんだ。今姪っ子と一緒に車に乗ってるところなんだよ、買い物に連れていけってきかなくてさ」
あー、また口から出まかせを言ってしまった。
高木さんに対してどれだけ嘘をつき続けるんだ俺は。
『姪っ子さん?』
「そ、そうそう。ほら挨拶して珠理奈ちゃん」
俺はスマホをスラに向けた。
『え、何?』
スラは丸い目をぱちぱちしてスマホと俺の顔を交互に見比べる。
勘の悪い奴だな。
俺はまたもスマホの下部分を手で遮ると、
「何じゃない。お前が挨拶するんだよ」
小さい声でスラに言う。
『あたし喋っちゃ駄目なんでしょ』
「それはさっきまでだ、今は喋ってくれ。俺の姪っ子の珠理奈ちゃんてことで頼む」
『めんどくない?』
「誰のせいだ。いいから早く頼む」
俺はスラに頭を下げた。
『まあいいけどね……あ、もっしー。あたし珠理奈よろしく』
スラが珠理奈ちゃんのふりをして高木さんと喋り出した。
頼むからうまくやってくれよ。
『うん、そう姪っ子だよ。え、全然違うし……ゴジラ? 何それ、ちょーウケるんだけど――』
駄目だこいつ。
「……高木さんごめん。珠理奈ちゃんちょっと変わってる子でさ~言葉遣いがおかしいんだよ。本当ごめんね」
スラに任せていたらボロが出そうだったのでそうそうに俺が代わる。
『ううん、なんか楽しそうな子だね。今度会ってみたいなぁ』
「いやあ、それはどうかな~。今日はたまたま遊びに来てるだけだから』
『そうなんだ、残念……じゃあわたしそろそろ仕事行くね。わたしの部屋202号室だからね』
「わかった。六時に行くよ」
それだけ言うと高木さんは慌ただしく電話を切った。
仕事の時間が迫っているのだろう。
それにしても……。
「スラ、変なタイミングでくしゃみなんかして。妙な誤解されたらどうするんだよ」
『高木ちゃんて可愛い声してるんだねー』
スラは反省してる様子などおくびにも出さない。
俺はそんなスラをただ恨みがましい目で見続けた。
「お前、何してんだこらっ」
俺はスマホの下部分を押さえて高木さんには聞こえないように小声でスラに注意する。
『あたし喋ってないし』
「くしゃみしたら同じだろうが」
『だってしょうがないじゃん。生理現象なんだから』
「そういう言葉は知ってるんだなお前」
スラはアヒル口というのだろうか、口元をぐにゃりと曲げてみせる。
どんな感情なんだ、それ。
『……ゴジラくん、誰か女性と一緒なの?』
その時高木さんの声がスマホから発せられた。
「……え?」
『あ、変なこと訊いてごめんね。別にどうでもいいことだよね。なんか全然関係ないわたしが口出しするようなことじゃないっていうか……』
「あー違う違う。今のは……そ、そう、姪っ子なんだ。今姪っ子と一緒に車に乗ってるところなんだよ、買い物に連れていけってきかなくてさ」
あー、また口から出まかせを言ってしまった。
高木さんに対してどれだけ嘘をつき続けるんだ俺は。
『姪っ子さん?』
「そ、そうそう。ほら挨拶して珠理奈ちゃん」
俺はスマホをスラに向けた。
『え、何?』
スラは丸い目をぱちぱちしてスマホと俺の顔を交互に見比べる。
勘の悪い奴だな。
俺はまたもスマホの下部分を手で遮ると、
「何じゃない。お前が挨拶するんだよ」
小さい声でスラに言う。
『あたし喋っちゃ駄目なんでしょ』
「それはさっきまでだ、今は喋ってくれ。俺の姪っ子の珠理奈ちゃんてことで頼む」
『めんどくない?』
「誰のせいだ。いいから早く頼む」
俺はスラに頭を下げた。
『まあいいけどね……あ、もっしー。あたし珠理奈よろしく』
スラが珠理奈ちゃんのふりをして高木さんと喋り出した。
頼むからうまくやってくれよ。
『うん、そう姪っ子だよ。え、全然違うし……ゴジラ? 何それ、ちょーウケるんだけど――』
駄目だこいつ。
「……高木さんごめん。珠理奈ちゃんちょっと変わってる子でさ~言葉遣いがおかしいんだよ。本当ごめんね」
スラに任せていたらボロが出そうだったのでそうそうに俺が代わる。
『ううん、なんか楽しそうな子だね。今度会ってみたいなぁ』
「いやあ、それはどうかな~。今日はたまたま遊びに来てるだけだから』
『そうなんだ、残念……じゃあわたしそろそろ仕事行くね。わたしの部屋202号室だからね』
「わかった。六時に行くよ」
それだけ言うと高木さんは慌ただしく電話を切った。
仕事の時間が迫っているのだろう。
それにしても……。
「スラ、変なタイミングでくしゃみなんかして。妙な誤解されたらどうするんだよ」
『高木ちゃんて可愛い声してるんだねー』
スラは反省してる様子などおくびにも出さない。
俺はそんなスラをただ恨みがましい目で見続けた。
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