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第206話 サイボーグサイクロプス

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サイボーグサイクロプスが大きな拳を振り下ろしてきた。
俺は左によけてかわすとサイボーグサイクロプスの足元まで駆けていき足を斬りつけた。

だが刀の長さより足の直径の方が長く浅い傷にとどまってしまう。
しかも自己再生能力で斬られた部分がぶくぶくと再生していった。

『ウガアァー!』

再生した足で俺は蹴り飛ばされてしまった。
壁に激突する。

「がはっ……!」

「マツイさんっ」
『今度はあたしの番だかんねっ』
そう言うとスラは息を吸い込んでからゴオォォォー!!! っと灼熱の炎をサイボーグサイクロプスにお見舞いした。

サイボーグサイクロプスは両手を前にクロスさせてこれをガードする。

『ウガアァーッ!』

灼熱の炎に身を焼かれながらも途端に再生していく。


……ォォン。

『これでどうよ……ってうそ、マジでっ!?』

スラが炎を吐き終わりサイボーグサイクロプスを見上げるとただれた両腕が再生していくところだった。

『あたしの炎も効かないわけっ!?』

『ウガアァー!』

サイボーグサイクロプスは手を振り上げるとスラをバシッとはじき飛ばした。

『きゃあっ』
スラが悲鳴を上げて地面を転がる。

「くそっ」
俺は高くジャンプすると、
「これでもくらえっ、バトルフレア!」
サイボーグサイクロプスの目を狙って巨大な火の玉を放った。

サイボーグサイクロプスは火の玉を両手を顔の前に出し、両手のひらで受け止める。
だが手は一瞬で燃え尽き目を襲った。

『ウガアァーッ……!?』

ドオォン!

バトルフレアはサイボーグサイクロプスの目に直撃した。
その途端に体がボロボロと崩壊していく。


『マツイさん、やったじゃん』
「スラっ、大丈夫だったか?」
『平気平気!』
スラは傷付いた体でこっちに跳んでくる。

結局サイボーグサイクロプスは自己再生することなくそのまま消滅していった。


ゴゴゴゴゴ……と石の壁がなくなり階段が姿を見せる。
サイボーグサイクロプスのいた場所から宝箱も出てきた。

「スラ、薬草やるよ」

スラに薬草を与えさっき受けたダメージを回復させると俺は宝箱に近付いた。

「マツイさんは回復しなくてもいいんですか? マツイさんも攻撃くらってましたよね」
ククリがひゅーんと飛んできて訊いてくるが、
「俺のダメージは大したことないから平気だよ」
やせ我慢ではなく実際そうだったので断っておいた。
スラの防御力と俺の防御力とではだいぶ差があるからな。

俺は宝箱を開けた。
「……ん? これなんだ?」

宝箱の中にははだかで置かれたアメ玉のようなものが一粒だけ入っていた。

「あっ、これはしあわせのアメですよっ」
ククリが言う。

『しあわせのアメってなーに?』
「食べるとレベルが20上がるんです」
『えー、ちょーすごいじゃん。よかったねマツイさんっ』
「早速食べますか?」
スラとククリが俺の顔を見てくる。

うーん、レベルが20上がるのか。
でも俺は正直充分強くなっていると思うんだよなぁ。
ここまでピンチらしいピンチもなく、というのは言い過ぎだが、それなりに進めてこれている。
むしろスラの方が俺は心配だ。

「スラ、これお前にやるよ」

だから俺はしあわせのアメをスラにやることにした。

『え、いいってマツイさん食べなよー』
「俺はいいんだよ」
『あたしもいいってば。マツイさんがみつけたんだからマツイさん食べてよ』
「遠慮すんなってば」
『だから――』
「じゃあ私がもらいましょうか?」
「ククリは必要ないだろっ」

「スラ、お前に食べてほしいんだよ」
『あたしもマツイさんに食べてほしいんだって言ってんじゃん』
スラは顔を左右に振り俺に遠慮するも、
「俺はいいからほらっ」
キリがなさそうなので俺はしあわせのアメをスラの口に放り込んでやった。

『あっ……』

ごくん。

『……食べちゃった』
「スラさんの背中が光ってますっ」

見るとスラの背中に358の文字が浮かび上がっていた。

「レベルが上がったみたいだな。よかったよかった」
『マジバカじゃないのマツイさん。自分のレベル上げとけばよかったのにさー』
「いいんだよこれで」
スラの方が俺より圧倒的に弱いんだから少しでも強くなってもらっとかないとな。
死なれたりしたら困る。

『マツイさんのバーカ』

そう言ったスラの顔は言葉とは裏腹になんだか嬉しそうだった。
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