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第230話 最深層

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地下四十階層。
残り魔力39。

敵はこれまでで最強のモンスター、ラストドラゴン。
黄金色の鱗を身に纏い十メートルはあろうかという文字通りの大物だ。

『ギャオオオォォォー!!』

肌がびりびりとしびれる。
雄たけびだけで体がすくんでしまいそうになる。

「うおおおおおぉぉー!」
お返しとばかりに俺も声を張り上げた。
そうでもしないと場の雰囲気に飲み込まれそうになるからだ。

「いくぞ、ダブルアクセルっ!」

俺は消費魔力20、最後のダブルアクセルを唱えるとラストドラゴンの首めがけジャンプした。

断罪の剣を振り上げ斬りかかる。

ズンッ!

ラストドラゴンの首に刺さったはいいが皮膚が分厚くまた硬いため途中で引っかかってしまった。

『ギャオオオォォォー!!』
ラストドラゴンが首を思い切り振ったことによって俺は剣を抜けないまま壁に吹っ飛ばされてしまう。

「ぐあっ……!」
「マツイさんっ」

ラストドラゴンは首に刺さったままの剣を気にすることもなく俺に向かって口から大きな火の玉を連続で吐いてきた。

ドォン!
ドォン!
ドォン!
俺は盾でこれを防ぎながらじりじりと前に進む。

「マツイさん危ないっ!」
とククリの声。

ラストドラゴンはいつの間にか天井まで飛翔していた。
そして大きな翼を羽ばたかせた。

ビュオオォォー!

まるでバトルウインドのような風の刃が無数に降ってくる。

俺は盾を上にかざすが縦横無尽に飛び回る風の刃に体を傷つけられていく。
「ぐあっ、うあぁっ……!」
「マツイさんっ」

このままではじり貧だ。
俺はそう思い盾を構えながら大きく跳び上がった。

ラストドラゴンは長いしっぽをしならせると俺を撃ち落とさんとばかりに勢いよく叩きつけた。

『ギャオオォォ!?』

だが俺は盾の裏側にはいなかった。
盾はおとりで俺は一瞬早くフライの魔法でラストドラゴンの首元まで飛んでいた。

ラストドラゴンの首に刺さった断罪の剣を握る俺。
このチャンスを逃したら勝ち目はない。

俺は、
「うあああぁぁっ!」
断罪の剣を思いきり振り抜いた。

その刹那ラストドラゴンの首が宙を舞い――

そして地面にどすんと落下した。


「……やった、やったぞ!」
俺は地面に下り立つとラストドラゴンの首を眺めたあとククリにガッツポーズをしてみせた。

だがククリは、
「……いえ、マツイさんここからが本番なんです」
思いつめたような表情を浮かべ顔を横に振る。

「え……?」

そういえばいつまで経ってもラストドラゴンが消滅しない。
何かおかしい。
俺もそう思い始めていた時だった。

ラストドラゴンの首と胴体がみるみるうちに縮んでいった。
そしてラストドラゴンの首はドラゴンを模した剣に、胴体は俺と同じくらいの身長の人間のような姿に変化した。

「なっ……!? ど、どういうことだ、ククリ?」
俺の問いにククリが唇をかみしめながら答える。
「あ、あれがラストドラゴンの真の姿です。彼を倒さなければ本当の勝利にはなりません」

『わたくしが真のラストドラゴンです。はじめまして』

人の姿のラストドラゴンは男の俺でも惚れ惚れするような微笑を浮かべると手を上にあげた。

「喋れるのか、お前……」
『ふふ……ではいきますよ。バトルメテオ!』
「なにっ!?」

ラストドラゴンがバトルメテオと口にした瞬間隕石群が俺の頭上に降り注いだ。
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