不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ

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剣鬼 闘技祭準備編

ハヅキ家の刺客

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「さて……話は纏まったわね。それならしばらくの間は貴方達はこのギルドで面倒を見るわ。バルの方にはもう伝えてあるから安心しなさい」
「ちょっと待って、あの男は……ゴウライはここに居るの?」


マリアの発言にシズネは眉を顰め、彼女としては自分の父親の仇であるゴウライが所属するギルドに世話になる事に拒否感を示すが、マリアは首を振る。


「ジャンヌを除いた剣聖はここにはいないわ。闘技祭に備えてそれぞれが修行を行っているようね。但し、ロウガに関しては私の方から任務を与えて離れさせているけど」
「任務?」
「私の可愛い甥に手を出そうとした罰も兼ねているわ」


ロウガは闘技場にてドルトン商会の代表選手の「ルナ」として出場したレナに対し、彼を「剣鬼」である事を見抜くと命を狙った。その試みは失敗に終わったが、ロウガはよりにもよってレナの叔母であるマリアに彼の危険性を伝え、排除するように申し付けたが、それが彼女の逆鱗に触れて現在は都市から離された場所の任務を与えられていた。


「剣鬼だが何だか知らないけど、無断で人の甥を狙った罰としてロウガには今回の闘技祭の参戦は拒否させたわ。今頃は王都で潜伏中のはずだけど、また貴方の命を狙うような事があれば私にすぐ報告しなさい」
「はあ……あ、そういえばカゲマルさんとハンゾウは……」
「あの二人にも仕事を与えているわ。戻ってくるとしたら闘技祭の開催日の予定よ」
「仕事?」


マリアの側近であり、常に彼女に控えていたカゲマルの姿が見えない事に疑問を抱いたレナが質問すると、マリアによればハンゾウも含めた二人は、既に都市に訪れているバルトロス王国とヨツバ王国の王族の監視を任せているらしく、王妃とハヅキ家がどのように動くのかを見晴らせているらしい。


「今のところ、バルトロス王国側に大きな動きはないわ。逆にそれが不気味ではあるけれど……ハヅキ家に関しては既に貴方の調査を行っているようね」
「そういえばレナ、お前って王国の王女様と仲良かったよな?その人に頼んでハヅキ家から守ってもらうように頼んだらどうなの?」
「あ、そういえばティナの事を忘れてた……」


ダインの言葉にレナは今更ながらにヨツバ王国の王女である「ティナ」の存在を思い出す。彼女とはライコフやサイクロプスのアインをの件で親しい間柄であり、彼女に力を頼めば快く承諾してくれるだろう。


「レナ、あのお姫様に助けてもらう?」
「う~んっ……まあ、話を聞いてもらうだけでもいいかな」
「そういえばレナはティナ姫と面識があるそうね。報告は受けていたけど、凄い人脈じゃない」
「えっ!?レナ君は王女様とお友達なの!?」
「聞いてないわよ!?」


レナがヨツバ王国の王女と友人関係であるという話にミナとシズネは驚くが、仮にティナに事情を話して彼女から父親である国王にこの件を伝えてもらえば問題解決に繋がる可能性もある。


「そういえばリンダさんから前に国王が娘を助けてくれた俺と会いたいとか言っていたような……」
「なら王様に会って事情を説明したら解決する」
「そんな簡単にいくとは思えないけど……でも、確かに王族を味方に引き入れればハヅキ家も逆らう事は出来ないわね」


いくら王国の中でも権力が強い貴族だとしても、王族の命令には逆らう事が出来ない。どうにかティナと連絡を取り、レナがヨツバ王国の国王と面会し、ハヅキ家の問題を解決するように頼み込めばどうにかできるかも知れない。レナは国王の娘であるティナを二度も救っており、良好な関係を築いている。ダインの思い付きで告げた提案だが、意外と悪くはない考えだった。


「仮にティナに頼んで国王様と会えばどう話せばいいかな……」
「そこは私が上手く説明するわ。国王様とは何度か顔を合わせているから安心しなさい」
「え?叔母様はヨツバ王国の国王様とも面識があるの?」
「ええ、といっても実家を抜け出す前の話だけど……でも、あの人なら話をすれば信じてくれると思うわ。数少ない私が尊敬する人物なのだから」


マリアが語るにはヨツバ王国の国王は彼女でさえも尊敬に値する人物らしく、幼少の頃は姉と共に母親に連れられて何度か顔合わせもした事もあるという。


「だけど、その王女と連絡を取り合うとしてもどうするのよ?ハヅキ家の人間が傍に控えている以上、迂闊には会う事は出来ないわよ?」
「そこが問題だよな……叔母様の力でどうにか出来ない?」
「難しいわね……私もハヅキ家に警戒されているわ」
「あの……それなら私が力になれると思う」


どのような手段でティナと王族と巡り合うのかを考えていると、父親と対立する覚悟を抱いて緊張していたナオが反応し、彼女は既にヨツバ王国の王族が宿泊している宿屋を知っており、そしてバルトロス王国の王女である彼女が面会を求めれば相手側も無碍には出来ないだろう。
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