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剣鬼 闘技祭準備編
迫られる選択肢
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国王の雰囲気が一変し、室内の空気が重くなる。先程までの穏やかな表情が険しい表情へと変化させ、国王はレナに向かい側の席に座るように促す。お互いが向かい合う形で座り、ナオもレナの隣で冷や汗を流す。
「まず、話をする前に娘の件は礼を言っておく。儂のいない間に娘の命を救ってくれて礼を言おう。ライコフの悪事を暴いた件も感謝している」
「あ、いえ……お気になさらず」
「それでは本題に入るが、レナ殿は儂に何を望む?ハヅキ家との仲介役を頼みたいという事ならば喜んで引き受けよう」
「ほ、本当ですか?」
「だが、実はハヅキ家の当主であるアイラ(この場合はレナの祖母)からある報告を受けておってな……自分の娘の子供が儂の元に訪れるかも知れないとな」
予想外の国王の言葉にナオは立ち上がりそうになったが、続けて国王はハヅキ家の当主から既にレナの情報を聞いている事を伝える。既に彼はレナの正体を知っており、その存在価値も十分に理解していた。
「バルトロス王国の王子であり、ハヅキ家の血筋を継ぐ人間は歴史上でもレナ殿だけだろう。問題なのはレナ殿がバルトロス王国に戻るのか、それともハヅキ家の一員として我々の国に赴くのかを問いたい」
「えっ……」
「儂としては別にどちらでも構わんぞ。王家に戻り、自分が第一王子として王位継承権を所有すると宣言し、王位を引き継ぐのか……あるいはハヅキ家と和解し、我が王国に仕えるか、どちらか選ぶがいい」
「デブリ国王!!その選択肢は……」
「無論、娘の恩人を粗末に扱うつもりはない。どちらの道を選んでもレナ殿の安全は国王の名の元で保証しよう」
「そんな……」
「……まあ、当然の反応ね」
どちらの選択肢を選んでもヨツバ王国側に大きな利があり、前者を選べばレナが王国に戻り、ヨツバ王国が後押しすれば十分にレナは王位を引き継げる可能性は高い。仮にレナが国王に即位した場合、ヨツバ王国との力関係が一変するのは間違いなく、ヨツバ王国に大きな借りを築く事になる。後者の場合はハヅキ家にとっては待望の家系の継承者が現れ、更にアイラとマリアも大切な息子と甥をヨツバ王国に預けた事になり、家族を大切にする二人ならばハヅキ家の元へ戻る可能性が高い。
レナがどちらの選択をしてもヨツバ王国側には大きな利が生まれる事は間違いなく、しかもどちらの選択肢もヨツバ王国側に大きな代償はない。前者の場合はレナが王位を引き継げずともバルトロス王国側に大きな混乱を招く事は確かだった。
(さあ、どうでる?)
デブリ国王はレナがどのような選択をするのか観察し、彼の返答を待つ。室内の誰もがレナに視線を向け、彼が次に何を話すのかを考えていると、レナは溜息を吐いて国王に告げる。
「子供の頃、俺は母さんから父親に愛されていると言われていました」
「むっ……?」
「レナ、急に何を……」
「いいから話を聞いて……だけど、俺はある人から父親が俺の事を憎んでいる事を聞きました。母さんは産まれた俺を庇わなければ殺されていた事も、その母さんと一緒に魔物が巣食う場所に存在する屋敷に隔離されました」
「ふむ……」
レナの言葉に国王は黙って話を促し、周囲の人間も彼の話を聞く。レナは自分が父親に愛されず、更に弟が生まれた途端に自分を殺害するように暗殺者を送り込んだことを語る。
「父親は俺が10歳の誕生日を迎える前に屋敷に配備させていた暗殺者に殺させようとしました。だけど、俺はそれに気づいて逃げる事に成功したんですが……後になって疑問を抱いたんです。どうして父親はわざわざ暗殺者を送り込んだのかが気になったんです」
「気になった?」
「別に俺を殺すだけなら暗殺者なんて使わずに兵士を送り込んだり、自分の元に引き寄せて処刑を施せば良い。そもそも弟が生まれてから2年も経過した後に急に殺そうとするなんて不思議に思ったんです」
「ふむ、確かに気になる話ではあるな」
「そして俺はこの都市に辿り着いて叔母と出会い、色々と調べてもらいました。その結果、俺の暗殺指令を降したのは父親ではなく、王妃が進言した事を知りました」
「何っ!?」
「その話は本当なのか!?」
王妃が話題に出た途端に国王とナオが立ち上がり、他の人間も戸惑いを隠せない。しかし、王妃の素性を知っている人間にとってはレナの話には信憑性が高く、王国を裏から支配する王妃の悪名は国王も知っている。否、知り尽くしていると言った方が正しい。
「仮に俺が王子である事を宣言して王国に戻っても、王位を継承する事は絶対に出来ません。俺を見捨てた父親、それに俺の存在を疎んでいる王妃が王位を渡すはずがありません」
「むううっ……」
「レナ……」
デブリ国王はレナの言葉を聞いて唸り声をあげ、万が一にも王妃が彼の存在を知らなかったのならば王位継承の可能性も僅かにあったのだが、国王と王妃から疎まれている彼が王位を引き継げるはずがない。国王の予測ではレナの存在は国王が秘匿し、王妃に黙っていたとしたら彼が王子である事を証明し、国王と王妃の絆に亀裂を生じさせる事が出来るのではないかと考えていたのだが、最初から王妃がレナの存在を知っていたのならば意味はない。
「まず、話をする前に娘の件は礼を言っておく。儂のいない間に娘の命を救ってくれて礼を言おう。ライコフの悪事を暴いた件も感謝している」
「あ、いえ……お気になさらず」
「それでは本題に入るが、レナ殿は儂に何を望む?ハヅキ家との仲介役を頼みたいという事ならば喜んで引き受けよう」
「ほ、本当ですか?」
「だが、実はハヅキ家の当主であるアイラ(この場合はレナの祖母)からある報告を受けておってな……自分の娘の子供が儂の元に訪れるかも知れないとな」
予想外の国王の言葉にナオは立ち上がりそうになったが、続けて国王はハヅキ家の当主から既にレナの情報を聞いている事を伝える。既に彼はレナの正体を知っており、その存在価値も十分に理解していた。
「バルトロス王国の王子であり、ハヅキ家の血筋を継ぐ人間は歴史上でもレナ殿だけだろう。問題なのはレナ殿がバルトロス王国に戻るのか、それともハヅキ家の一員として我々の国に赴くのかを問いたい」
「えっ……」
「儂としては別にどちらでも構わんぞ。王家に戻り、自分が第一王子として王位継承権を所有すると宣言し、王位を引き継ぐのか……あるいはハヅキ家と和解し、我が王国に仕えるか、どちらか選ぶがいい」
「デブリ国王!!その選択肢は……」
「無論、娘の恩人を粗末に扱うつもりはない。どちらの道を選んでもレナ殿の安全は国王の名の元で保証しよう」
「そんな……」
「……まあ、当然の反応ね」
どちらの選択肢を選んでもヨツバ王国側に大きな利があり、前者を選べばレナが王国に戻り、ヨツバ王国が後押しすれば十分にレナは王位を引き継げる可能性は高い。仮にレナが国王に即位した場合、ヨツバ王国との力関係が一変するのは間違いなく、ヨツバ王国に大きな借りを築く事になる。後者の場合はハヅキ家にとっては待望の家系の継承者が現れ、更にアイラとマリアも大切な息子と甥をヨツバ王国に預けた事になり、家族を大切にする二人ならばハヅキ家の元へ戻る可能性が高い。
レナがどちらの選択をしてもヨツバ王国側には大きな利が生まれる事は間違いなく、しかもどちらの選択肢もヨツバ王国側に大きな代償はない。前者の場合はレナが王位を引き継げずともバルトロス王国側に大きな混乱を招く事は確かだった。
(さあ、どうでる?)
デブリ国王はレナがどのような選択をするのか観察し、彼の返答を待つ。室内の誰もがレナに視線を向け、彼が次に何を話すのかを考えていると、レナは溜息を吐いて国王に告げる。
「子供の頃、俺は母さんから父親に愛されていると言われていました」
「むっ……?」
「レナ、急に何を……」
「いいから話を聞いて……だけど、俺はある人から父親が俺の事を憎んでいる事を聞きました。母さんは産まれた俺を庇わなければ殺されていた事も、その母さんと一緒に魔物が巣食う場所に存在する屋敷に隔離されました」
「ふむ……」
レナの言葉に国王は黙って話を促し、周囲の人間も彼の話を聞く。レナは自分が父親に愛されず、更に弟が生まれた途端に自分を殺害するように暗殺者を送り込んだことを語る。
「父親は俺が10歳の誕生日を迎える前に屋敷に配備させていた暗殺者に殺させようとしました。だけど、俺はそれに気づいて逃げる事に成功したんですが……後になって疑問を抱いたんです。どうして父親はわざわざ暗殺者を送り込んだのかが気になったんです」
「気になった?」
「別に俺を殺すだけなら暗殺者なんて使わずに兵士を送り込んだり、自分の元に引き寄せて処刑を施せば良い。そもそも弟が生まれてから2年も経過した後に急に殺そうとするなんて不思議に思ったんです」
「ふむ、確かに気になる話ではあるな」
「そして俺はこの都市に辿り着いて叔母と出会い、色々と調べてもらいました。その結果、俺の暗殺指令を降したのは父親ではなく、王妃が進言した事を知りました」
「何っ!?」
「その話は本当なのか!?」
王妃が話題に出た途端に国王とナオが立ち上がり、他の人間も戸惑いを隠せない。しかし、王妃の素性を知っている人間にとってはレナの話には信憑性が高く、王国を裏から支配する王妃の悪名は国王も知っている。否、知り尽くしていると言った方が正しい。
「仮に俺が王子である事を宣言して王国に戻っても、王位を継承する事は絶対に出来ません。俺を見捨てた父親、それに俺の存在を疎んでいる王妃が王位を渡すはずがありません」
「むううっ……」
「レナ……」
デブリ国王はレナの言葉を聞いて唸り声をあげ、万が一にも王妃が彼の存在を知らなかったのならば王位継承の可能性も僅かにあったのだが、国王と王妃から疎まれている彼が王位を引き継げるはずがない。国王の予測ではレナの存在は国王が秘匿し、王妃に黙っていたとしたら彼が王子である事を証明し、国王と王妃の絆に亀裂を生じさせる事が出来るのではないかと考えていたのだが、最初から王妃がレナの存在を知っていたのならば意味はない。
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