不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ

文字の大きさ
163 / 2,090
剣鬼 闘技祭準備編

祖母からの手紙

しおりを挟む
『それにしてもまさかあの女が母上や叔母さんの姉だったなんて……あれ、という事はあいつも俺の叔母さん?』
『そういう事になりますね。だから前の時は黙っていたんですよ。親戚と意識していたら戦意が鈍るでしょ?』
『うわっ……なんかそう考えると確かに知らなくて良かったかも』


腐敗竜戦の前にアイリスが死霊使いの正体をレナに教えていた場合、戦闘の際に相手が自分の親戚であると意識してしまうとレナも本気では戦えなかったかも知れない。そう考えるとアイリスがレナに黙っていたのは間違いではなく、結果的に相手が自分と無関係の人間だと思い込んでいたからこそレナも全力で戦えた事は否定できない。


『けど、まさかあの手紙を用意したのが死霊使いのアイラなんて……ややこしいな、今度からはデスアイラと呼ぼう。略してデスラ』
『何ですか、その怪獣映画に出てきそうな名前は……まあ、確かにややこしいですね。レナさんの知り合いだけでアイラという人は4人もいますからね』
『母上に御祖母様にホネミンに死霊使い……4人もいるのか』
『確かに面倒なので今後は死霊使いのアイラは別の名前で呼びましょう。そうですね、裏社会ではあの女は殺人狂で有名だからキラウと呼ばれています』
『キラウ?殺人鬼キラーだから?』
『いえ、そのままの意味です。皆が嫌っているから「キラウ」と呼ばれています』
『安直な名前の付け方だな……』
『それだけ嫌われているんですよ。あの女が動くと敵味方とか関係なく大勢の死亡者が生まれますから』


今後は死霊使いのアイラは「キラウ」と呼ぶことに決め、本題に戻る。キラウが手紙の差出人だと判明したが、問題なのはこの事実を知っているのはレナだけであり、マリアもキラウの手紙に騙されていた事になる。しかし、この真相をどのように伝えるべきか悩む。


『キラウに叔母様も御祖母様も騙されていた事は分かったけど、どうやって教えればいいんだろう……捕まえて突き出す?』
『それはちょっと危険ですよ。いくらレナさんが強くなったと言っても相手は裏社会の中でもいかれた殺人鬼ですよ?常に命を狙われる立場だからこそ身を守る術も身に着けています』
『また腐敗竜みたいな化物を呼び出されたら面倒だな……』
『それに現在のキラウは王妃に保護されています。腐敗竜の一件で彼女が旧帝国に止めを刺したと言っても過言ではないですからね。王妃としては目障りな配下を一掃してくれた優秀な手駒なので腕利きの護衛も用意しています』
『くそうっ……』


キラウを拘束し、彼女をハヅキ家とマリアに突き出して罪を白状させるのが手っ取り早い方法なのだが、流石に王妃も優秀な能力(性格面はともかく)を持つ手駒を失う訳にはいかないと考えて先手を打っていた。


『ここでレナさんがキラウの存在を話しても逆に怪しまれるだけですし、この際にハヅキが直にマリアと会って和解をするように頼んでみたらどうですか?』
『聞いてくれるかな……』
『年寄りの堅物キャラは孫には優しいのが定番ですよ』


アイリスとの交信を中断すると、現実の時間が流れ始め、レナは長時間の交信を行っていた影響で軽く眩暈を起こす。


「うっ……」
「ど、どうしたのです?気分が悪くなったのですか?」
「あ、いえ……ちょっと寝不足でして」
「……体調の管理には気を付けなさい。これからはどんどんと寒くなりますからね」


唐突に目元を抑えたレナにハヅキが慌てふためき、身体の心配をする。最後のアイリスの冗談混じりの言葉を思い出し、レナは試しにハヅキに質問する。


「あの……御祖母様」
「なんですか?」
「その……もしも、もしもの話なんですけど……マリア叔母様と会ってくださいと頼んだら会ってくれますか?」
「駄目です。それは受け入れられません」


レナの質問にハヅキは即答で返事を行う。確かに自分にも非はある事は認めたが、それでもハヅキ家の当主である自分が出て行った娘の元に赴き、和解を求めるような行為は出来ないという。


「……アイラとマリアに悪い事をしたとは思っています。しかし、私はハヅキ家の当主です。自分の元を勝手に立ち去った人間エルフの元に頭を下げに会いに向かう事は許されません……そんな行為をすればハヅキ家に従う者達に示しがつきません」
「まあ、そうですよね……」


ハヅキの言い分を聞いてレナは溜息を吐き出し、ハヅキ家とマリアが和解できれば氷雨のギルドとヨツバ王国の関係が強固な物になるのは間違いないが、流石にハヅキの方から謝罪に向かうのは難しい。それにマリア自身も謝罪されたからといってはハヅキを許す保証はない。


「ですが、手紙を記しましょう。娘にどこまで私の気持ちが通じるのかは分かりませんが……少なくとも私の気持ちを伝える事は出来るはずです」
「本当ですか!?」
「ええ、とりあえずはこれまでにマリアに送り付けられた手紙は偽物である事を伝えなければ……手紙は貴方から直に渡して下さい」
「分かりました。必ず渡します!!」


手紙だけでも受け取ればマリアにハヅキの思いを伝わる可能性もある。ハヅキは即座に手紙を用意した――
しおりを挟む
感想 5,092

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―

ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」 前世、15歳で人生を終えたぼく。 目が覚めたら異世界の、5歳の王子様! けど、人質として大国に送られた危ない身分。 そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。 「ぼく、このお話知ってる!!」 生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!? このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!! 「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」 生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。 とにかく周りに気を使いまくって! 王子様たちは全力尊重! 侍女さんたちには迷惑かけない! ひたすら頑張れ、ぼく! ――猶予は後10年。 原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない! お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。 それでも、ぼくは諦めない。 だって、絶対の絶対に死にたくないからっ! 原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。 健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。 どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。 (全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。