不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ

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剣鬼 闘技祭準備編

事故の真相

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「この手紙をマリアに届けてください。それと……これも一緒に渡してくれますか?」
「あれ、これって……」


ハヅキが手紙をレナに渡すと、懐から「銅製の髪飾り」を取り出し、レナに渡す。何処かで見覚えのあるデザインの髪飾りであり、すぐにレナはマリアから渡された髪飾りと同じ物である事に気付く。


「それはあの人が昔、私に渡してくれたお守りです」
「え?これが……?」
「当主としての立場上、安上がりな装飾品を付ける事は出来ませんが……捨てる事が出来ませんでした」


アイラとマリアの父親であるカイルは娘達だけではなく、ハヅキにもお手製の髪飾りを渡していたらしく、ハヅキによると初めてのカイルからの贈り物だったらしい。


「その髪飾りは夫がまだ15才の時に渡してくれた物です。当時はまだ駆け出しの冒険者だったので収入も少なく、この程度の物しか贈れないと言っていましたが、私は嬉しかったです」
「でも、母上と叔母さんに怒ったんじゃ……」
「確かに私は二人から貴族に相応しくない物を身に着けてはならないと注意して回収しました。ですが、あの人が作り上げた物を処分する事が出来ず、使用人に保管するように命じたせいであんな事に……」
「え?あの、ちょっといいですか?保管という事は……返すつもりだったんですか?」
「ええ、私が没収したのはあの二人が堂々と髪飾りを付けて過ごしていたからです。人前で身につけないと約束すれば返すつもりでしたが……まさかあんな事になるなんて」


昔の事故を思い出したのかハヅキは目元を抑え、ハンカチで涙を拭う。しかし、そんな彼女の言葉にレナは疑問を抱き、マリアから聞いていた話と少しだけ事情が違う事に違和感を感じた。


「その、御婆様に髪飾りを任された使用人はどうして保管しないで甲殻獣の首飾りにしたんですか?」
「……貴方には話しておきましょう。私が髪飾りを預けた使用人はもうこの世にはいません。その使用人は私が処刑しました」
「えっ!?」


予想外のハヅキの言葉にレナは驚き、彼女は今までにない程に怒りに満ちた表情を浮かべ、両手を強く握りしめながらカイルの自己の真相を話す。


「ハヅキ家に仕えている使用人の多くは森人族です。ですが、その中に一人だけ罪を犯した奴隷がいました」
「奴隷?」
「ヨツバ王国では罪人の中でも模範囚は奴隷として雇う事があります。仕事で成果を出せば刑期が短くなり、逆に失敗すれば刑期が伸びます。私の屋敷に仕えていた使用人も罪人から奴隷になった人間エルフでした」
「その人はどうして罪人になったんですか?」
「本来は教える事は禁じられていますが……貴方ならいいでしょう。その使用人の罪状は奴隷商に関わっていた事が発覚し、200年の懲役を命じられていました」
「奴隷商……?」
「その前に説明しておきましょう。森人族の中でも3~400年以上も生きている者の多くは多種族を見下しています。彼等が多種族を嫌う理由は他国との戦争が関わっています」
「戦争?」
「これまでにヨツバ王国は何百回も他国のから侵攻された事があります。しかし、我等の方から他の国に攻め込む事は殆どありませんでした。理由は森人族にとって心地よい環境は緑の自然に囲まれた土地だけだからです。だからヨツバ王国は自然が乏しい他国に攻め入る理由がなく、緑豊かな領地を守り続けていました」


ヨツバ王国の領地は森で埋め尽くされており、実際に領地の7割近くが密林と言っても過言ではない。普通の人間には暮らしにくい環境だが、森人族にとっては緑の自然に覆われた場所こそが最高の環境のため、わざわざ人間のように領地を増やすような真似はしなかった。

しかし、彼等が平穏に暮らす事を望んでいるにも関わらず、長い歴史の間で何度も他国がヨツバ王国の侵攻を試みた。彼等がヨツバ王国を狙う理由は王国内に存在する「世界樹」と呼ばれる存在が大きくかかわっており、その他にも森人族の魔法の技術を狙う国も多かった。しかし、六種族の中でも魔法の優れた森人族を打倒できる国家は存在せず、今日に至るまでヨツバ王国は平和を守り続けていた。


「年配の森人族の多くは戦争を経験しています。その際に欲望にまみれた侵略者の姿を見た事で多種族を見下す者も多いと聞きます」
「じゃあ、もしかしてその使用人も……」
「ええっ……彼女は先代の当主の代から仕え、真面目で面倒見がよく、罪人とは思えない程に礼儀正しい人間でした。しかし、カイルがハヅキ家に訪れてから態度が変わり、何度も私に彼を追い出すように進言してきました」
「使用人なのに!?」


領主であるハヅキの夫を長く仕えているとはいえ、一介の使用人に過ぎない人間が追放するように領主に言いつけるなど普通は考えられないが、ハヅキは頭を抑えながら当時の事を語る。


「私も彼女の事は幼い頃から面倒を見てもらっていたので尊敬もしていました。だからこそカイルを追放するように言いつけられても罰する事が出来ず、人間である彼も受け入れてくれるように頼んだのですが……その甘さが命取りになりました」
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