不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ

文字の大きさ
167 / 2,090
剣鬼 闘技祭準備編

エリナの忠告

しおりを挟む
「それはそうとエリナは俺に何の用があったの?」
「あ、そうでした!!大変な事になってるんですよ!!今、とんでもない人物がこの宿に訪れています!!」
「とんでもない人物?」


彼女の慌てようからレナは誰が訪れたのか不思議に思うが、最初に思いついたのはマリアである。レナ達を心配して彼女が訪れたのかと尋ねようとしたが、先にエリナが答えた。


「王様っす!!あの王様が来たんですよ!!」
「王様って……」
「兄貴のお父さんが来たんですよ!!」
「……嘘?」


エリナの言葉にレナは目を見開き、まさかバルトロス国王がこの宿に訪れたという言葉に動揺を隠せない。唐突に宿に訪れた国王は現在はデブリ国王と話し込んでいるらしく、レナが戻ってくる前にエリナ注意しに戻ってきたという。


「王女様もあのおっぱいの小さい護衛の人も今は別室で待機させているっす!!兄貴もしばらくはここに隠れて下さい!!」
「お前、シズネに殺されるぞ……でも、なんで親父がここに来たんだ?」
「王妃様も一緒らしいです。なんでも挨拶に訪れたとか……」
「闘技祭か」


闘技祭に王族が訪れる事は世間にも報告しており、どうやら大会前に訪れたヨツバ王国の一行の元に顔を出したらしい。しかし、ヨツバ王国が氷雨のギルドと協力し、ナオを王位を継承するための助力を約束した直後に国王と王妃が訪れた事になり、非常に怪しい。


「もしかして俺達の事もバレてるんじゃないの?」
「それは分からないですけど、別に会話自体は普通でしたよ。闘技祭の時は共に観戦しようと話し合っただけですから。あ、でも……二人の子供も来ていますよ」
「子供?もしかして第二王子!?」


子供という言葉に弟の第二王子も共に訪れたのかとレナは驚くが、エリナは首を振る。


「いえ、王子じゃなくて王女の二人です。ナオさんの双子の妹さんもきてますよ」
「王女!?あ、そういえば……」


ナオには二人の妹が居る事を思い出し、どちらもレナの義姉に当たる人物だが、レナは顔を合わせた事もない。だが、二人の妹はアイラを預かっている貴族が面倒を見ていると聞いていたが、どうしてこの場に居るのか疑問を抱く。


「その双子の様子はどうだった?」
「あんまり元気はなさそうでしたけど、別に変わったところはなかったですよ。それと大将軍の1人も訪れているようです」
「大将軍まで?」


王国に3人しか存在しない大将軍も訪れているという言葉にレナは疑問を抱き、王族の護衛のために連れてきたのかと考えるが、重要な役職を任されている大将軍をわざわざ護衛のためだけに連れてくる事に違和感を抱く。別にそれほどおかしな話ではないが、只の護衛ならば他にも幾らでもいるはずである。


「ちょっと気になるな……今は何の話をしている?」
「別に他愛のない話をしてますよ。兄貴も聞いてみますか?」
「え?どうやって?」
「ちょっと待ってくださいね……準備しますから」


エリナはそういうと窓の方向に向かい、レナを手招きする。まさか忍者のように壁を伝って聞き耳を立てるつもりなのかと思ったが、彼女は窓を開いて身体を乗り出し、国王達が会話している部屋を確認した。ちなみに現在二人が居る部屋は1階の右隅、国王達の部屋は3階の左隅に存在する。壁をよじ登れば会話を聞き出す事も出来るかも知れないが、流石に外の人間に気付かれるだろう。


「よし、窓は開いたままです。実はさっき、抜け出す時に窓の1つを開けておいていたんですよ」
「まさか窓から声を盗み聞きするの?いくら何でもそれは……」
「大丈夫ですよ。精霊さんに協力して貰って風の力で部屋の中を会話をここまで届けてもらうんです」


人間であるレナは聴力が特段に優れているわけではなく(一般人よりは優れてはいるが)、窓が開いているからと言っても階層も違う部屋の話を正確に聞き取る事が出来るはずがない。しかし、エリナが両手を差し出すと彼女の手元に先ほどの球体が近寄り、そのまま3階の部屋の窓まで移動する。そして球体が分離して二つに分かれると片方は国王の部屋の中に入り、もう片方はエリナの元に戻ってきた。


「これで大丈夫っす。ほら、聞こえてきました」
「あ、本当だ」
『それではバルトロス王よ。今日は本当に挨拶に来ただけなのか?』
『うむ……妻が久しぶりにお主の顔を見たいと言ってな』
『御迷惑でしたか?』


球体にエリナが耳をかざすと、確かに別室のデブリ国王達の声が聞こえ、精霊の力を借りて部屋の中の会話を聞き取る。レナは彼女の精霊魔法に感心しながらも、約十数年ぶりに聞こえてくる父親の声を聞いて不思議な感覚を味わう。


(これがこの世界の俺の父親か……なんか、変な気分だな)


父親に関してはレナは複雑な感情を抱いており、別に赤ん坊の自分を王家から追放された事に関して恨みを抱いているわけでもない。酷い父親とは思ってはいるが、アイリスの話では父親の判断は国王としては間違いとは言い切れず、仮にレナが王都に残り続けたとしたら厳しい人生を送っていただろう。

最も母親を追放し、自分を殺そうとした相手に愛情を抱けるはずがなく、レナにとってはこの世界の父親は別に敬愛の対象ではない事に変わりはない。憎んでいるわけでもないが尊敬できるわけもなく、強いて言えばもう二度と関わりたくはない人物である。
しおりを挟む
感想 5,092

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

侯爵家三男からはじまる異世界チート冒険録 〜元プログラマー、スキルと現代知識で理想の異世界ライフ満喫中!〜【奨励賞】

のびすけ。
ファンタジー
気づけば侯爵家の三男として異世界に転生していた元プログラマー。 そこはどこか懐かしく、けれど想像以上に自由で――ちょっとだけ危険な世界。 幼い頃、命の危機をきっかけに前世の記憶が蘇り、 “とっておき”のチートで人生を再起動。 剣も魔法も、知識も商才も、全てを武器に少年は静かに準備を進めていく。 そして12歳。ついに彼は“新たなステージ”へと歩み出す。 これは、理想を形にするために動き出した少年の、 少し不思議で、ちょっとだけチートな異世界物語――その始まり。 【なろう掲載】

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

Re:Monster(リモンスター)――怪物転生鬼――

金斬 児狐
ファンタジー
 ある日、優秀だけど肝心な所が抜けている主人公は同僚と飲みに行った。酔っぱらった同僚を仕方無く家に運び、自分は飲みたらない酒を買い求めに行ったその帰り道、街灯の下に静かに佇む妹的存在兼ストーカーな少女と出逢い、そして、満月の夜に主人公は殺される事となった。どうしようもないバッド・エンドだ。  しかしこの話はそこから始まりを告げる。殺された主人公がなんと、ゴブリンに転生してしまったのだ。普通ならパニックになる所だろうがしかし切り替えが非常に早い主人公はそれでも生きていく事を決意。そして何故か持ち越してしまった能力と知識を駆使し、弱肉強食な世界で力強く生きていくのであった。  しかし彼はまだ知らない。全てはとある存在によって監視されているという事を……。  ◆ ◆ ◆  今回は召喚から転生モノに挑戦。普通とはちょっと違った物語を目指します。主人公の能力は基本チート性能ですが、前作程では無いと思われます。  あと日記帳風? で気楽に書かせてもらうので、説明不足な所も多々あるでしょうが納得して下さい。  不定期更新、更新遅進です。  話数は少ないですが、その割には文量が多いので暇なら読んでやって下さい。    ※ダイジェ禁止に伴いなろうでは本編を削除し、外伝を掲載しています。

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。