不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ

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剣鬼 闘技祭準備編

王妃の願い

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『では本題に入りましょう。冒険都市で開催される闘技祭に関して、ヨツバ王国側の方々のために面白い余興を用意しました』
『余興?』
『もしもヨツバ王国側がお望みならば闘技祭の出場権を4人分だけ渡しましょう』
『出場権……だと?』
『ええ、無条件で闘技祭の本選に参戦できる権利です』


王妃の言葉に困惑気味にデブリ国王は反応し、彼女の目的が分からない。どうして今更ヨツバ王国側に闘技祭の出場権の話を持ち込むのか理解できず、デブリ国王は率直に尋ねる。


『出場権と言われてものう……まさか、この儂の護衛に闘技祭に参戦させろというのか?』
『いえ、別に護衛に拘る必要はありませんよ?ですが、王国四騎士の名声は他国にも知れ渡っています。もしも四騎士の方々が闘技祭に参加されるというのならば非常に面白い余興になるでしょう』
『馬鹿馬鹿しい……我々に見世物になれというのか?』
『アカイさん!!言葉が失礼ですよ!!』
『……ご無礼をお詫び申し上げます』
『いえ、アカイさんの言う事も一理あります。お気になさらずに』


唐突に闘技祭の出場を求められた王国四騎士の筆頭のアカイが不快感を露わにするが、王妃は特に気にした風もなく、説明を続ける。


『ですが話を最後まで聞いて貰えますか?そうしたらきっと納得してくれるはずです』
『……聞かせてもらおうではないか』
『そもそも闘技祭に出場する権利を勝ち取った人間がここまで何人居ると思われますか?』
『むっ……50人ぐらいか?』


王妃の質問にデブリ国王は黙り込み、彼も闘技祭の参加者に関しては詳しい情報は持っていない。それを予測していたかの様に王妃は即座に答えた。


『王国の調査の結果、参加者の数は100人を超えています。予選の参加条件が普通の試合で5勝するという決まりでは緩かったようですね』
『100人だったか……まあ、妥当な数字ではないのか?』


闘技祭は世界中で注目を浴びており、冒険都市で毎年行われていた狩猟祭よりも人気が出ていた。そして闘技祭を参加するために腕に自信がある人間が集まっており、しかも闘技祭の開催予定日が延長された事で更に参加者は増加し、現在では100人を超える猛者が出場権を獲得していた。


『当初の予定では参加者は32人、トーナメント方式で試合が行われる予定でした。しかし、予想よりも試合の参加者が増加し、各地の腕利きの冒険者や傭兵、更には他国から訪れた武芸者も訪ねています。そのお陰で現在では108名の参加者が居ます』
『そこまで大事になっていたのか?只の武芸大会ではなかったのか……』
『はい。ですから闘技祭では予選を設ける事にしましたが、参加者の中には高名な冒険者や傭兵だけではなく、他国の将軍職に就いている人間も存在します』
『何じゃと!?』
『獣人国からは「虎王」と称えられるタイガ、巨人国からは「剛腕」と恐れられるゴウ、更に人魚族の王族の方々も観戦に訪れる予定です』
『タイガ、ゴウ……だと!!』


王妃の言葉にアカイの動揺した声が響き、その反応を待っていたかのように王妃は言葉を続ける。


『そして最後に……我々側からは大将軍も参加させます。つまり、人魚族と森人族を除く各国の将軍職の人間が参加する事になります。まあ、あくまでも武芸大会ですので勝敗など気にせずに結構ですが』
『むうっ……!!』


デブリ国王は王妃の言葉に黙り込み、どうして彼がそんなに動揺しているのかレナは不思議に思うが、隣のエリナが事情を説明する。


「やばいっすよ兄貴……実は王国四騎士のアカイさんはタイガとゴウに因縁があるんです」
「因縁?」
「昔、といってもせいぜい5年ぐらい前の話なんですけど……獣人国と巨人国とヨツバ王国は三国会談を行ったとき、タイガとゴウが騒ぎを起こしたんです。その時にアカイさんも巻き込まれて……結局は3人のせいでいくつかの街の建物が崩壊するほど被害が生まれたっす」
「迷惑な話だな……」
「まあ、住民の方は怪我がなかったのが幸いでしたが、当然ですが三国会談は中止となり、その責任としてアカイさんも処罰を受けました。それ以来、アカイさんは騒動の元凶である二人を恨んで……」
「なるほど……つまり、挑発しているわけね」


王妃の企みに気付き、彼女が王国四騎士の参加を促している事に気付き、こんな簡単な挑発に乗るなど普通は考えられないが、アカイの怒声が響く。


『王妃殿!!その出場権、俺に譲ってほしい!!』
『アカイ様!!何を言い出すのですか!?』
『国王陛下!!どうかお願いします!!この私に奴らを打倒する機会をお与えください!!』
『アカイよ……それほどまでにお主はあの二人の事を』
『どうか!!』


精霊越しでは部屋の中の様子は見れないが、アカイがデブリ国王に頼み込んでいるらしく、跪いて床に額を叩きつけるような音も聞こえてきた。




※風の精霊「まだ聞くの……?結構疲れます……(´・ω・)」
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