文字の大きさ
大
中
小
174 / 2,093
剣鬼 闘技祭準備編
紹介状
「どうしてドルトン商会の代表選手の貴方がここに……何か御用ですか?」
「まあ、用事と言えば用事だけど……叔母様から俺の事を聞いてないの?」
「……何の話でしょうか?」
ルナ(レナ)の言葉にジャンヌは不審そうに眉を顰め、やはり彼女はレナの正体に気付いておらず、マリアから知らされていないらしい。レナはここで自分の正体を晒すべきなのか考えたが、事情を説明するにしても場所が悪い。
「ちょっと悪いけど、急いでいるんだ。叔母さ……マリアさんに用事があるから」
「マリア様に……どのような御用でしょうか?それなら私が取り次ぎましょうか?」
「何か警戒してない?俺、君に何かしたっけ?」
「そんな事はありませんが……」
妙に突っかかるジャンヌの態度にレナは疑問を抱き、この姿の時の彼は特に彼女とは接点はないはずだが、ジャンヌは明らかに警戒心を示していた。レナ本人は知らない事だが、彼女は同じギルドに所属する「ロウガ」からレナ(性格にはルナ)が「剣鬼」である事を知らされており、剣鬼の称号を得た人間の危険性はロウガから教えられていた。
ドルトン商会と氷雨のギルドは友好関係を築いているが、それでも剣鬼であるレナ(ルナ)を警戒するようにロウガから釘を差されており、ジャンヌは警戒心を緩めずにレナと向かい合う。そんな彼女にレナはどのように誤魔化して中に入ろうかと考えていると、ジャンヌの所持している剣が変化している事を思い出す。
「ねえ、それって剣なの?斧にも見えるけど……」
「えっ……この剣の事が気になるのですか?」
「そりゃまあ……変わった形しているから」
レナの言葉にジャンヌは自分が背負っている二振りの剣に視線を向け、以前に黒虎のギルドで装備していた長剣とは異なり、現在の彼女は「剣」と「斧」を組み合わせたような剣を身に着けていた。デザインは刀身の先端部が斧のように変形しており、相当な重量を感じさせそうな武器だった。
「それが剣なの?前の時は二つの長剣を持ってなかったっけ?」
「前の時?」
「あ、いや……一か月ぐらい前は別の武器を持っていたところを見かけたから」
「なるほど、そういう事ですか」
ジャンヌはレナの言葉に一応は納得し、彼女は背中の剣を引き抜くと、自慢するように語り掛ける。
「この剣はマリア様に紹介された鍛冶師の方に特注で作ってもらった剣です。私は旋斧と名付けています」
「旋斧?」
「この剣はオリハルコンとミスリルの合金で作り出された剣です。私がA級冒険者として昇格した際、マリア様がお祝いに紹介してくれた鍛冶師の方に頼んで作って貰いました」
「それ……戦えるの?かなり使いにくそうだけど……」
「むっ、その言葉は心外ですね。この旋斧のお陰で私は剣聖の位置にまで上り詰めたのです」
彼女の語る「旋斧」という双剣は外見から見た限りでは相当な重量があるのは間違いなく、しかも刀身部分が特殊なせいなのか鞘の類も装着出来ず、剥き出しのまま背中に背負っていた。
「鞘も付けずに装備するのは危ないよ?」
「問題ありません。この剣の刃は潰れているので触れても切れる事はありません」
「いや、それは剣としてどうなの?」
レナは旋斧に視線を向けると確かにジャンヌの言葉通りに刃が意図的に丸みを帯びており、普通の剣の刃のように鋭利ではない。切れ味ではなく、打撃に特化した武器なのかと不思議に思うが、刀身の表面に魔術痕が刻まれている事に気付く。
「言っておきますがこの旋斧は伝説の聖剣にも劣らない程の硬度と耐久力を誇ります。お疑いとあればこの場で証明してもよろしいですよ?」
「証明って……どうやって?」
「無論、試合を行うのです。正直に言えば貴方とは一度戦ってみたいとは思っていました」
「ええっ……急いでるんだけど」
ジャンヌの言葉にレナは面倒そうに頭を掻くが、彼女は先回りしてギルドの扉の前に移動し、両手に剣を構えた状態で向かい合う。
「申し訳ありませんが私も氷雨の冒険者として怪しい人物を通す事は出来ません」
「怪しいって……一応は俺はドルトン商会の代表の剣士だよ?」
「ですがこの一か月の間、貴方が何処でどのように行動していたのかは誰も知りません。そもそもマリアさんに用事があるのならば事前にアポは取っているのですか?マリア様の客人なら必ずアポを取っているはずです」
「アポって……この世界にもそんなシステムがあったのか」
「そもそもドルトン商会の使いの方は必ずフェリス様からの紹介状を持参しています。紹介状を持っているのならば私がマリア様との面会の手続きを行いますが、お持ちですか?」
「紹介状か……確かに持ってきてないね」
「それならば申し訳ありませんがマリア様と会わせる事は出来ません。お引き取りを願います」
紹介状がなければマリアと会わせられないと頑なに語るジャンヌに対し、レナは今更ながらに自分の叔母がどれほど偉い人物なのかを思い知らされ、この様子ではルナの格好を辞めて普通の姿に戻らなければギルドの中に入れなさそうだった。
「まあ、用事と言えば用事だけど……叔母様から俺の事を聞いてないの?」
「……何の話でしょうか?」
ルナ(レナ)の言葉にジャンヌは不審そうに眉を顰め、やはり彼女はレナの正体に気付いておらず、マリアから知らされていないらしい。レナはここで自分の正体を晒すべきなのか考えたが、事情を説明するにしても場所が悪い。
「ちょっと悪いけど、急いでいるんだ。叔母さ……マリアさんに用事があるから」
「マリア様に……どのような御用でしょうか?それなら私が取り次ぎましょうか?」
「何か警戒してない?俺、君に何かしたっけ?」
「そんな事はありませんが……」
妙に突っかかるジャンヌの態度にレナは疑問を抱き、この姿の時の彼は特に彼女とは接点はないはずだが、ジャンヌは明らかに警戒心を示していた。レナ本人は知らない事だが、彼女は同じギルドに所属する「ロウガ」からレナ(性格にはルナ)が「剣鬼」である事を知らされており、剣鬼の称号を得た人間の危険性はロウガから教えられていた。
ドルトン商会と氷雨のギルドは友好関係を築いているが、それでも剣鬼であるレナ(ルナ)を警戒するようにロウガから釘を差されており、ジャンヌは警戒心を緩めずにレナと向かい合う。そんな彼女にレナはどのように誤魔化して中に入ろうかと考えていると、ジャンヌの所持している剣が変化している事を思い出す。
「ねえ、それって剣なの?斧にも見えるけど……」
「えっ……この剣の事が気になるのですか?」
「そりゃまあ……変わった形しているから」
レナの言葉にジャンヌは自分が背負っている二振りの剣に視線を向け、以前に黒虎のギルドで装備していた長剣とは異なり、現在の彼女は「剣」と「斧」を組み合わせたような剣を身に着けていた。デザインは刀身の先端部が斧のように変形しており、相当な重量を感じさせそうな武器だった。
「それが剣なの?前の時は二つの長剣を持ってなかったっけ?」
「前の時?」
「あ、いや……一か月ぐらい前は別の武器を持っていたところを見かけたから」
「なるほど、そういう事ですか」
ジャンヌはレナの言葉に一応は納得し、彼女は背中の剣を引き抜くと、自慢するように語り掛ける。
「この剣はマリア様に紹介された鍛冶師の方に特注で作ってもらった剣です。私は旋斧と名付けています」
「旋斧?」
「この剣はオリハルコンとミスリルの合金で作り出された剣です。私がA級冒険者として昇格した際、マリア様がお祝いに紹介してくれた鍛冶師の方に頼んで作って貰いました」
「それ……戦えるの?かなり使いにくそうだけど……」
「むっ、その言葉は心外ですね。この旋斧のお陰で私は剣聖の位置にまで上り詰めたのです」
彼女の語る「旋斧」という双剣は外見から見た限りでは相当な重量があるのは間違いなく、しかも刀身部分が特殊なせいなのか鞘の類も装着出来ず、剥き出しのまま背中に背負っていた。
「鞘も付けずに装備するのは危ないよ?」
「問題ありません。この剣の刃は潰れているので触れても切れる事はありません」
「いや、それは剣としてどうなの?」
レナは旋斧に視線を向けると確かにジャンヌの言葉通りに刃が意図的に丸みを帯びており、普通の剣の刃のように鋭利ではない。切れ味ではなく、打撃に特化した武器なのかと不思議に思うが、刀身の表面に魔術痕が刻まれている事に気付く。
「言っておきますがこの旋斧は伝説の聖剣にも劣らない程の硬度と耐久力を誇ります。お疑いとあればこの場で証明してもよろしいですよ?」
「証明って……どうやって?」
「無論、試合を行うのです。正直に言えば貴方とは一度戦ってみたいとは思っていました」
「ええっ……急いでるんだけど」
ジャンヌの言葉にレナは面倒そうに頭を掻くが、彼女は先回りしてギルドの扉の前に移動し、両手に剣を構えた状態で向かい合う。
「申し訳ありませんが私も氷雨の冒険者として怪しい人物を通す事は出来ません」
「怪しいって……一応は俺はドルトン商会の代表の剣士だよ?」
「ですがこの一か月の間、貴方が何処でどのように行動していたのかは誰も知りません。そもそもマリアさんに用事があるのならば事前にアポは取っているのですか?マリア様の客人なら必ずアポを取っているはずです」
「アポって……この世界にもそんなシステムがあったのか」
「そもそもドルトン商会の使いの方は必ずフェリス様からの紹介状を持参しています。紹介状を持っているのならば私がマリア様との面会の手続きを行いますが、お持ちですか?」
「紹介状か……確かに持ってきてないね」
「それならば申し訳ありませんがマリア様と会わせる事は出来ません。お引き取りを願います」
紹介状がなければマリアと会わせられないと頑なに語るジャンヌに対し、レナは今更ながらに自分の叔母がどれほど偉い人物なのかを思い知らされ、この様子ではルナの格好を辞めて普通の姿に戻らなければギルドの中に入れなさそうだった。
感想 5,097
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
『ベルンハルト・フォン・バーデンは平穏に暮らしたい』
GamaFrog男爵家三男、ベルンハルト・フォン・バーデン。
家督継承権はなく、本来ならどこかの官職に就くか、他家へ仕えるか、婿入りするか――そんな将来が待っているはずだった。
しかしベルは少しだけ優秀すぎた。
小遣い稼ぎのつもりで始めた商売は成功し、気付けば父親より金を持ち、長男より領地経営に詳しく、次男より商売が上手くなっていた。
本人に出しゃばる気はない。
ただ普通に生きていただけだ。
それでも、優秀すぎる三男の存在は家族との距離を少しずつ広げていった。
家に居場所がなくなった。
だからベルは学園へ来た。
貴族だから一応入学した。
家にいるより気楽だったから。
静かに暮らしたかったから。
寄付金を積んで手に入れた広い寮部屋で、本を読み、昼寝をし、卒業後は適当な文官になって平穏に生きる
そのはずだった。
だが現実は違った。
男装令嬢に懐かれ。
王太子に目を付けられ。
商会には囲い込まれ。
気付けば平穏はどこへやら。
本人はただ平穏に暮らしたいだけ。
周囲はなぜか放っておいてくれない。
これは、面倒事を嫌う規格外の天才が、静かな人生を目指して失敗し続ける物語である。
私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました
放浪人政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。
だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。
「彼女は可哀想なんだ」
「この子を跡取りにする」
そして人前で、平然と言い放つ。
――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」
その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。
「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」
【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する
エース皇命【HOTランキング1位獲得作品!!】
最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。
戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。
目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。
ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!
彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!!
※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中
異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?
すずなり。ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。
一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。
「俺とデートしない?」
「僕と一緒にいようよ。」
「俺だけがお前を守れる。」
(なんでそんなことを私にばっかり言うの!?)
そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。
「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」
「・・・・へ!?」
『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!?
※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。
※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。
ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。
真の皇帝は俺です ~面倒だから幼なじみに帝位を任せていたら、婚約者に捨てられました。正体を明かしたら全員後悔してももう遅い~
由香皇帝の仕事が面倒だったレインは、信頼する幼なじみアレクシスに表向きの皇帝を任せ、自身は陰から帝国を支えていた。
だがある日、婚約者エミリアは「権力も将来性もない」と彼を見限り婚約破棄を宣言する。
しかし彼女は知らなかった。
帝国を動かしていた真の支配者が誰なのかを。
これは全てを持ちながら隠していた男と、見るべきものを見失った者たちの後悔の物語。
クラス全員で異世界召喚されたが、俺だけ教室に取り残されたのでとりあえず帰宅した
中山(ほ) クラス全員で異世界召喚されたが、先生と俺が残っていた。
魔法もチートスキルもステータス画面すら表示されない、ただの「残され損」
異世界に行けなかった俺を待っていたのは、世知辛い現実だった。
AI使用状況
GoogleのGeminiさん使ってます〜
誤字脱字チェックと調べ物お願いしてます
99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える
ハーフのクロエ 夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。
主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。