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剣鬼 闘技祭準備編
紹介状
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「どうしてドルトン商会の代表選手の貴方がここに……何か御用ですか?」
「まあ、用事と言えば用事だけど……叔母様から俺の事を聞いてないの?」
「……何の話でしょうか?」
ルナ(レナ)の言葉にジャンヌは不審そうに眉を顰め、やはり彼女はレナの正体に気付いておらず、マリアから知らされていないらしい。レナはここで自分の正体を晒すべきなのか考えたが、事情を説明するにしても場所が悪い。
「ちょっと悪いけど、急いでいるんだ。叔母さ……マリアさんに用事があるから」
「マリア様に……どのような御用でしょうか?それなら私が取り次ぎましょうか?」
「何か警戒してない?俺、君に何かしたっけ?」
「そんな事はありませんが……」
妙に突っかかるジャンヌの態度にレナは疑問を抱き、この姿の時の彼は特に彼女とは接点はないはずだが、ジャンヌは明らかに警戒心を示していた。レナ本人は知らない事だが、彼女は同じギルドに所属する「ロウガ」からレナ(性格にはルナ)が「剣鬼」である事を知らされており、剣鬼の称号を得た人間の危険性はロウガから教えられていた。
ドルトン商会と氷雨のギルドは友好関係を築いているが、それでも剣鬼であるレナ(ルナ)を警戒するようにロウガから釘を差されており、ジャンヌは警戒心を緩めずにレナと向かい合う。そんな彼女にレナはどのように誤魔化して中に入ろうかと考えていると、ジャンヌの所持している剣が変化している事を思い出す。
「ねえ、それって剣なの?斧にも見えるけど……」
「えっ……この剣の事が気になるのですか?」
「そりゃまあ……変わった形しているから」
レナの言葉にジャンヌは自分が背負っている二振りの剣に視線を向け、以前に黒虎のギルドで装備していた長剣とは異なり、現在の彼女は「剣」と「斧」を組み合わせたような剣を身に着けていた。デザインは刀身の先端部が斧のように変形しており、相当な重量を感じさせそうな武器だった。
「それが剣なの?前の時は二つの長剣を持ってなかったっけ?」
「前の時?」
「あ、いや……一か月ぐらい前は別の武器を持っていたところを見かけたから」
「なるほど、そういう事ですか」
ジャンヌはレナの言葉に一応は納得し、彼女は背中の剣を引き抜くと、自慢するように語り掛ける。
「この剣はマリア様に紹介された鍛冶師の方に特注で作ってもらった剣です。私は旋斧と名付けています」
「旋斧?」
「この剣はオリハルコンとミスリルの合金で作り出された剣です。私がA級冒険者として昇格した際、マリア様がお祝いに紹介してくれた鍛冶師の方に頼んで作って貰いました」
「それ……戦えるの?かなり使いにくそうだけど……」
「むっ、その言葉は心外ですね。この旋斧のお陰で私は剣聖の位置にまで上り詰めたのです」
彼女の語る「旋斧」という双剣は外見から見た限りでは相当な重量があるのは間違いなく、しかも刀身部分が特殊なせいなのか鞘の類も装着出来ず、剥き出しのまま背中に背負っていた。
「鞘も付けずに装備するのは危ないよ?」
「問題ありません。この剣の刃は潰れているので触れても切れる事はありません」
「いや、それは剣としてどうなの?」
レナは旋斧に視線を向けると確かにジャンヌの言葉通りに刃が意図的に丸みを帯びており、普通の剣の刃のように鋭利ではない。切れ味ではなく、打撃に特化した武器なのかと不思議に思うが、刀身の表面に魔術痕が刻まれている事に気付く。
「言っておきますがこの旋斧は伝説の聖剣にも劣らない程の硬度と耐久力を誇ります。お疑いとあればこの場で証明してもよろしいですよ?」
「証明って……どうやって?」
「無論、試合を行うのです。正直に言えば貴方とは一度戦ってみたいとは思っていました」
「ええっ……急いでるんだけど」
ジャンヌの言葉にレナは面倒そうに頭を掻くが、彼女は先回りしてギルドの扉の前に移動し、両手に剣を構えた状態で向かい合う。
「申し訳ありませんが私も氷雨の冒険者として怪しい人物を通す事は出来ません」
「怪しいって……一応は俺はドルトン商会の代表の剣士だよ?」
「ですがこの一か月の間、貴方が何処でどのように行動していたのかは誰も知りません。そもそもマリアさんに用事があるのならば事前にアポは取っているのですか?マリア様の客人なら必ずアポを取っているはずです」
「アポって……この世界にもそんなシステムがあったのか」
「そもそもドルトン商会の使いの方は必ずフェリス様からの紹介状を持参しています。紹介状を持っているのならば私がマリア様との面会の手続きを行いますが、お持ちですか?」
「紹介状か……確かに持ってきてないね」
「それならば申し訳ありませんがマリア様と会わせる事は出来ません。お引き取りを願います」
紹介状がなければマリアと会わせられないと頑なに語るジャンヌに対し、レナは今更ながらに自分の叔母がどれほど偉い人物なのかを思い知らされ、この様子ではルナの格好を辞めて普通の姿に戻らなければギルドの中に入れなさそうだった。
「まあ、用事と言えば用事だけど……叔母様から俺の事を聞いてないの?」
「……何の話でしょうか?」
ルナ(レナ)の言葉にジャンヌは不審そうに眉を顰め、やはり彼女はレナの正体に気付いておらず、マリアから知らされていないらしい。レナはここで自分の正体を晒すべきなのか考えたが、事情を説明するにしても場所が悪い。
「ちょっと悪いけど、急いでいるんだ。叔母さ……マリアさんに用事があるから」
「マリア様に……どのような御用でしょうか?それなら私が取り次ぎましょうか?」
「何か警戒してない?俺、君に何かしたっけ?」
「そんな事はありませんが……」
妙に突っかかるジャンヌの態度にレナは疑問を抱き、この姿の時の彼は特に彼女とは接点はないはずだが、ジャンヌは明らかに警戒心を示していた。レナ本人は知らない事だが、彼女は同じギルドに所属する「ロウガ」からレナ(性格にはルナ)が「剣鬼」である事を知らされており、剣鬼の称号を得た人間の危険性はロウガから教えられていた。
ドルトン商会と氷雨のギルドは友好関係を築いているが、それでも剣鬼であるレナ(ルナ)を警戒するようにロウガから釘を差されており、ジャンヌは警戒心を緩めずにレナと向かい合う。そんな彼女にレナはどのように誤魔化して中に入ろうかと考えていると、ジャンヌの所持している剣が変化している事を思い出す。
「ねえ、それって剣なの?斧にも見えるけど……」
「えっ……この剣の事が気になるのですか?」
「そりゃまあ……変わった形しているから」
レナの言葉にジャンヌは自分が背負っている二振りの剣に視線を向け、以前に黒虎のギルドで装備していた長剣とは異なり、現在の彼女は「剣」と「斧」を組み合わせたような剣を身に着けていた。デザインは刀身の先端部が斧のように変形しており、相当な重量を感じさせそうな武器だった。
「それが剣なの?前の時は二つの長剣を持ってなかったっけ?」
「前の時?」
「あ、いや……一か月ぐらい前は別の武器を持っていたところを見かけたから」
「なるほど、そういう事ですか」
ジャンヌはレナの言葉に一応は納得し、彼女は背中の剣を引き抜くと、自慢するように語り掛ける。
「この剣はマリア様に紹介された鍛冶師の方に特注で作ってもらった剣です。私は旋斧と名付けています」
「旋斧?」
「この剣はオリハルコンとミスリルの合金で作り出された剣です。私がA級冒険者として昇格した際、マリア様がお祝いに紹介してくれた鍛冶師の方に頼んで作って貰いました」
「それ……戦えるの?かなり使いにくそうだけど……」
「むっ、その言葉は心外ですね。この旋斧のお陰で私は剣聖の位置にまで上り詰めたのです」
彼女の語る「旋斧」という双剣は外見から見た限りでは相当な重量があるのは間違いなく、しかも刀身部分が特殊なせいなのか鞘の類も装着出来ず、剥き出しのまま背中に背負っていた。
「鞘も付けずに装備するのは危ないよ?」
「問題ありません。この剣の刃は潰れているので触れても切れる事はありません」
「いや、それは剣としてどうなの?」
レナは旋斧に視線を向けると確かにジャンヌの言葉通りに刃が意図的に丸みを帯びており、普通の剣の刃のように鋭利ではない。切れ味ではなく、打撃に特化した武器なのかと不思議に思うが、刀身の表面に魔術痕が刻まれている事に気付く。
「言っておきますがこの旋斧は伝説の聖剣にも劣らない程の硬度と耐久力を誇ります。お疑いとあればこの場で証明してもよろしいですよ?」
「証明って……どうやって?」
「無論、試合を行うのです。正直に言えば貴方とは一度戦ってみたいとは思っていました」
「ええっ……急いでるんだけど」
ジャンヌの言葉にレナは面倒そうに頭を掻くが、彼女は先回りしてギルドの扉の前に移動し、両手に剣を構えた状態で向かい合う。
「申し訳ありませんが私も氷雨の冒険者として怪しい人物を通す事は出来ません」
「怪しいって……一応は俺はドルトン商会の代表の剣士だよ?」
「ですがこの一か月の間、貴方が何処でどのように行動していたのかは誰も知りません。そもそもマリアさんに用事があるのならば事前にアポは取っているのですか?マリア様の客人なら必ずアポを取っているはずです」
「アポって……この世界にもそんなシステムがあったのか」
「そもそもドルトン商会の使いの方は必ずフェリス様からの紹介状を持参しています。紹介状を持っているのならば私がマリア様との面会の手続きを行いますが、お持ちですか?」
「紹介状か……確かに持ってきてないね」
「それならば申し訳ありませんがマリア様と会わせる事は出来ません。お引き取りを願います」
紹介状がなければマリアと会わせられないと頑なに語るジャンヌに対し、レナは今更ながらに自分の叔母がどれほど偉い人物なのかを思い知らされ、この様子ではルナの格好を辞めて普通の姿に戻らなければギルドの中に入れなさそうだった。
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