文字の大きさ
大
中
小
187 / 2,093
剣鬼 闘技祭準備編
陽光教会
「……逃げられたか」
屋根の上を飛び移りながらレナは周囲の光景を確認し、消えた女騎士の姿を探す。チェーンの拘束を逃れるために手首と足首の肉を削ぎ落としたのは予想外だったが、傷を負った状態ならそれほど遠くには逃げられないはずだった。しかし、探しても女騎士の姿は見えず、仕方なくレナはアイリスと交信を行う。
『アイリス、あの女は?』
『残念ですが、他の仲間と合流して任務を失敗した事を王妃に報告に向かっています。今から追いかけても追いつけないでしょうね』
『くそっ……折角のチャンスだったのに。あのおじさんのせいだ』
『すいませんね。私がレナさんの未来を見れたらこんな事態にはならなかったのに』
『別にアイリスのせいじゃないよ』
狭間の管理者であるアイリスはこの世界の全ての出来事を把握できるが、元々は別の世界から訪れたレナに関しては未来は見えない。だからこそ彼に襲い掛かる出来事を察知する事は出来ず、ロウガの接近も気付けなかった。
『あのロウガはどうして俺を目の仇にするのかな』
『剣鬼だからですよ。剣鬼という存在は危険視されているんです』
『これ以上に不遇な渾名や職業はいらないよ』
『言われてみればレナさんの職業も能力も不遇な物ばかりですね』
雑談を行いながらもレナは時間が停止された空間の中で考え事を行い、このまま女騎士を追いかけるよりもギルドに尋ねる事が出来ないのかを考える。馬鹿正直にギルドの建物の正面玄関から訪れるよりも、屋根を移動して建物の内部に侵入する方が得策だと気付く。
『仕方ない……ギルドに戻るよ。何か情報を仕入れたら教えてよ』
『それはちょっと難しいですね。少し前までは私からも連絡できましたけど、夢の世界で会えるようになってからこちらの能力は消えちゃったんですよ』
『あ、だから最近は静かだったのか。知らなかった……』
少し前まではアイリス側からレナに連絡を行う事もあったが、現時点ではそちらの能力は扱えないらしく、レナの方から交信を行わないと連絡が取れないらしい。夢の世界で邂逅できるようになった幸いだが、今後はアイリスの助言はレナの方から交信を行わないと会話が出来ない事になる。
『じゃあ、俺はもう戻るよ。用事があったらメールしといて』
『いや、メルアド知らないんですけど』
『LINEかTwitterでもいいよ』
『もう直接電話しますよ』
交信を終えたレナは氷雨のギルドの建物に向かう途中、教会らしき建物を発見する。大勢の人間が押し寄せており、何やら扉の前で騒いでいた。
「なあっ!!ここにあのレミア将軍がいるんだろう!?一目でいいから会わせてくれよ!!」
「ですから困ります!!レミア様は今は祈祷中なのです!!邪魔をしてはいけません!!」
「でもよ、噂では絶世の美女なんだろう?頼むよ、本当に一目だけでも……」
「いい加減にしてください!!あまりにしつこいと警備兵に突き出しますよ!!」
教会の建物の屋根の上に移動したレナは扉の前で騒いでいる人々に視線を向け、話を聞く限りではこの街の住民がレミアという女性に会うために訪れてきたらしい。まるでアイドルを追いかけるファンのように大勢の人間が押し掛けており、教会の修道女が必死に彼等を宥めていた。
「あれ、レミアって……確か大将軍の一人だよな?」
そのまま立ち去ろうとしたレナはレミアという名前に聞き覚えがある事を思い出し、先ほどまで存在した宿屋でアイリスが教えてくれた王国の大将軍の一人である事に気付く。どうやら冒険都市に訪れていたらしく、教会内にて祈りを捧げているらしい。
「大将軍か……少し気になるな。もしかしたら闘技祭で戦うかも知れないし、顔だけでも確認しておくか」
王妃の口調では闘技祭に王国の大将軍も参加する事は確定事項であり、レミアが既に都市に訪れている事を考えれば彼女も闘技祭に参加する可能性はある。そう考えたレナは先ほど刺客から回収しておいたマントを身に着け、建物の二階の窓から中に入り込む。
「念のために隠密と無音歩行も発動しておくか……」
王妃の刺客が身に着けていたマントは動かない事で「擬態」の能力を発揮し、姿を隠す事が出来る。しかし、逆に言えば動いている間は効力を失うらしく、実際に戦闘の際にはレナは刺客の姿をはっきりと認識していた。姿を見られても問題ないように顔までマントで覆い隠し、極力気配を殺して建物を移動する。
(こっちに行けばいいのかな……お、正解みたいだ)
適当に通路を進んでいると階段を発見し、そのまま降ると祭壇と思われる場所に到着した。祭壇は天使のように羽根が生えた美しい女性が描かれた巨大なステンドグラスが存在し、女性の両手には太陽を想像させる紋様が収まっていた。
(これがこの世界の神様なのか……アイリスと少し似ているのは偶然かな?)
ステンドグラスの女性の姿にアイリスの面影を感じ取り、レナは不思議に思いながらも他の場所の様子を伺う。祭壇には数人の修道女の姿が存在し、そして壁際のステンドグラスの前には全身を白色のローブで包み隠した女性が立っていた。
屋根の上を飛び移りながらレナは周囲の光景を確認し、消えた女騎士の姿を探す。チェーンの拘束を逃れるために手首と足首の肉を削ぎ落としたのは予想外だったが、傷を負った状態ならそれほど遠くには逃げられないはずだった。しかし、探しても女騎士の姿は見えず、仕方なくレナはアイリスと交信を行う。
『アイリス、あの女は?』
『残念ですが、他の仲間と合流して任務を失敗した事を王妃に報告に向かっています。今から追いかけても追いつけないでしょうね』
『くそっ……折角のチャンスだったのに。あのおじさんのせいだ』
『すいませんね。私がレナさんの未来を見れたらこんな事態にはならなかったのに』
『別にアイリスのせいじゃないよ』
狭間の管理者であるアイリスはこの世界の全ての出来事を把握できるが、元々は別の世界から訪れたレナに関しては未来は見えない。だからこそ彼に襲い掛かる出来事を察知する事は出来ず、ロウガの接近も気付けなかった。
『あのロウガはどうして俺を目の仇にするのかな』
『剣鬼だからですよ。剣鬼という存在は危険視されているんです』
『これ以上に不遇な渾名や職業はいらないよ』
『言われてみればレナさんの職業も能力も不遇な物ばかりですね』
雑談を行いながらもレナは時間が停止された空間の中で考え事を行い、このまま女騎士を追いかけるよりもギルドに尋ねる事が出来ないのかを考える。馬鹿正直にギルドの建物の正面玄関から訪れるよりも、屋根を移動して建物の内部に侵入する方が得策だと気付く。
『仕方ない……ギルドに戻るよ。何か情報を仕入れたら教えてよ』
『それはちょっと難しいですね。少し前までは私からも連絡できましたけど、夢の世界で会えるようになってからこちらの能力は消えちゃったんですよ』
『あ、だから最近は静かだったのか。知らなかった……』
少し前まではアイリス側からレナに連絡を行う事もあったが、現時点ではそちらの能力は扱えないらしく、レナの方から交信を行わないと連絡が取れないらしい。夢の世界で邂逅できるようになった幸いだが、今後はアイリスの助言はレナの方から交信を行わないと会話が出来ない事になる。
『じゃあ、俺はもう戻るよ。用事があったらメールしといて』
『いや、メルアド知らないんですけど』
『LINEかTwitterでもいいよ』
『もう直接電話しますよ』
交信を終えたレナは氷雨のギルドの建物に向かう途中、教会らしき建物を発見する。大勢の人間が押し寄せており、何やら扉の前で騒いでいた。
「なあっ!!ここにあのレミア将軍がいるんだろう!?一目でいいから会わせてくれよ!!」
「ですから困ります!!レミア様は今は祈祷中なのです!!邪魔をしてはいけません!!」
「でもよ、噂では絶世の美女なんだろう?頼むよ、本当に一目だけでも……」
「いい加減にしてください!!あまりにしつこいと警備兵に突き出しますよ!!」
教会の建物の屋根の上に移動したレナは扉の前で騒いでいる人々に視線を向け、話を聞く限りではこの街の住民がレミアという女性に会うために訪れてきたらしい。まるでアイドルを追いかけるファンのように大勢の人間が押し掛けており、教会の修道女が必死に彼等を宥めていた。
「あれ、レミアって……確か大将軍の一人だよな?」
そのまま立ち去ろうとしたレナはレミアという名前に聞き覚えがある事を思い出し、先ほどまで存在した宿屋でアイリスが教えてくれた王国の大将軍の一人である事に気付く。どうやら冒険都市に訪れていたらしく、教会内にて祈りを捧げているらしい。
「大将軍か……少し気になるな。もしかしたら闘技祭で戦うかも知れないし、顔だけでも確認しておくか」
王妃の口調では闘技祭に王国の大将軍も参加する事は確定事項であり、レミアが既に都市に訪れている事を考えれば彼女も闘技祭に参加する可能性はある。そう考えたレナは先ほど刺客から回収しておいたマントを身に着け、建物の二階の窓から中に入り込む。
「念のために隠密と無音歩行も発動しておくか……」
王妃の刺客が身に着けていたマントは動かない事で「擬態」の能力を発揮し、姿を隠す事が出来る。しかし、逆に言えば動いている間は効力を失うらしく、実際に戦闘の際にはレナは刺客の姿をはっきりと認識していた。姿を見られても問題ないように顔までマントで覆い隠し、極力気配を殺して建物を移動する。
(こっちに行けばいいのかな……お、正解みたいだ)
適当に通路を進んでいると階段を発見し、そのまま降ると祭壇と思われる場所に到着した。祭壇は天使のように羽根が生えた美しい女性が描かれた巨大なステンドグラスが存在し、女性の両手には太陽を想像させる紋様が収まっていた。
(これがこの世界の神様なのか……アイリスと少し似ているのは偶然かな?)
ステンドグラスの女性の姿にアイリスの面影を感じ取り、レナは不思議に思いながらも他の場所の様子を伺う。祭壇には数人の修道女の姿が存在し、そして壁際のステンドグラスの前には全身を白色のローブで包み隠した女性が立っていた。
感想 5,097
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
『ベルンハルト・フォン・バーデンは平穏に暮らしたい』
GamaFrog男爵家三男、ベルンハルト・フォン・バーデン。
家督継承権はなく、本来ならどこかの官職に就くか、他家へ仕えるか、婿入りするか――そんな将来が待っているはずだった。
しかしベルは少しだけ優秀すぎた。
小遣い稼ぎのつもりで始めた商売は成功し、気付けば父親より金を持ち、長男より領地経営に詳しく、次男より商売が上手くなっていた。
本人に出しゃばる気はない。
ただ普通に生きていただけだ。
それでも、優秀すぎる三男の存在は家族との距離を少しずつ広げていった。
家に居場所がなくなった。
だからベルは学園へ来た。
貴族だから一応入学した。
家にいるより気楽だったから。
静かに暮らしたかったから。
寄付金を積んで手に入れた広い寮部屋で、本を読み、昼寝をし、卒業後は適当な文官になって平穏に生きる
そのはずだった。
だが現実は違った。
男装令嬢に懐かれ。
王太子に目を付けられ。
商会には囲い込まれ。
気付けば平穏はどこへやら。
本人はただ平穏に暮らしたいだけ。
周囲はなぜか放っておいてくれない。
これは、面倒事を嫌う規格外の天才が、静かな人生を目指して失敗し続ける物語である。
私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました
放浪人政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。
だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。
「彼女は可哀想なんだ」
「この子を跡取りにする」
そして人前で、平然と言い放つ。
――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」
その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。
「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」
【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する
エース皇命【HOTランキング1位獲得作品!!】
最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。
戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。
目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。
ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!
彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!!
※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中
異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?
すずなり。ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。
一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。
「俺とデートしない?」
「僕と一緒にいようよ。」
「俺だけがお前を守れる。」
(なんでそんなことを私にばっかり言うの!?)
そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。
「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」
「・・・・へ!?」
『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!?
※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。
※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。
ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。
真の皇帝は俺です ~面倒だから幼なじみに帝位を任せていたら、婚約者に捨てられました。正体を明かしたら全員後悔してももう遅い~
由香皇帝の仕事が面倒だったレインは、信頼する幼なじみアレクシスに表向きの皇帝を任せ、自身は陰から帝国を支えていた。
だがある日、婚約者エミリアは「権力も将来性もない」と彼を見限り婚約破棄を宣言する。
しかし彼女は知らなかった。
帝国を動かしていた真の支配者が誰なのかを。
これは全てを持ちながら隠していた男と、見るべきものを見失った者たちの後悔の物語。
クラス全員で異世界召喚されたが、俺だけ教室に取り残されたのでとりあえず帰宅した
中山(ほ) クラス全員で異世界召喚されたが、先生と俺が残っていた。
魔法もチートスキルもステータス画面すら表示されない、ただの「残され損」
異世界に行けなかった俺を待っていたのは、世知辛い現実だった。
AI使用状況
GoogleのGeminiさん使ってます〜
誤字脱字チェックと調べ物お願いしてます
99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える
ハーフのクロエ 夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。
主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。