不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ

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剣鬼 闘技祭準備編

閑話 〈王妃〉

――バルトロス王国の王妃「サクラ」彼女の正体は旧帝国の支配者であり、同時に旧帝国が作り出した王国を崩壊するための切り札だった。

彼女の本名は「イレアビト」旧帝国の先代の組織の長の実の娘であり、同時に数多くの姉妹と共に王国を滅ぼすためだけに教育を受けてきた。彼女は他に5人の姉と妹が存在した。しかし、その姉妹と顔を合わせた回数は片手で数える回数にも満たない。

イレアビトは生まれた時から暗殺者として育てられた。10代の前半では男性を篭絡する術を身に付けさせられ、時には王国貴族の慰み者として傍に仕えていた事もある。時には相手は王国の関係者だけではなく、旧帝国に協力する人物や組織の幹部の相手もした。

ここまで聞けば彼女の人生に同情する者も多くいるだろう。しかし、イレアビトは自らの意思で男性を篭絡し、意のままに操作する術を学ぶ。他の姉妹が暗殺者として活動する中、彼女は知略と自分の身体を用いて旧帝国と王国の重要人物と関係を築く。


『私こそが王に相応しい。しかし、その資格を持っていない』


イレアビトが常々考えていたのは自分こそがこの国の王に相応しく、それでいながら自分では王になれないことを理解していた。だからこそ、彼女は王の資格を得るために行動を開始する。


『国王の王妃となり、彼の子供を産めばその子を王として影から支配できる。その時こそ私は国の王さえも操れる存在になれる』


この国を影から操るため、まずはイレアビトが目を付けたのは当時の国王ではなく、その王弟の「シンジ」だった。優秀過ぎる兄を持つ弟は日頃から劣等感を抱いており、それを利用して彼女は頭の固い兄ではなく、弟に近付く。


『今の王は優秀過ぎる。私の企みに気付くだろう……だが、この平凡な男ならば問題ない』


王妃は王弟のシンジに近づき、彼と肉体関係を持つ。既にシンジはアイラと関りを持っていたが、当時はまだ恋人関係ではなく、見事にイレアビトはシンジと関係を結ぶ。


『これでこの男は私の言いなりになった。後は邪魔な王さえ殺せば……』


イレアビトは先代の国王であるバルトロスを事故に見せかけて殺害した。この時、彼を殺したのは吸血鬼のゲインと彼の主のキラウであり、この時からイレアビトは二人と関係を持っていた。


『国王は死んだ。後は子供を産むだけ……だが、その前にアイラを排除しなければならない』


先王が死んだ事で無事にシンジは国王の座に就いた。しかし、シンジは即位するのと同時に妾としてアイラを迎え入れる。二人の間に愛情が芽生えている事に気付いたイレアビトは危機感を抱く。


『アイラを殺す事は出来ない。この女は油断できない……それにマリアを敵に回す』


当時のアイラはS級冒険者として大陸中に名前を知らしめており、実際に彼女の暗殺のためにイレアビトはゲインを送り込んだことがある。しかし、結果としてゲインは返り討ちに遭い、先王のように仕留める事は出来なかった。しかもアイラの背後には氷雨のギルドを創立したマリアが存在し、彼女を殺せば当然だがマリアが動く。


『こんな女に私の計画を邪魔させはしない』


イレアビトがアイラの排除を企てている間、よりにもよってアイラは懐妊してしまう。もしも先にアイラに王国の跡継ぎが生まれた場合、彼女の計画は大きく狂わせる。


『今ならアイラを殺せる?いや、違う。この子供を利用しよう』


アイラが子供を授かったと聞いた時、イレアビトは逆にこの子供を利用して彼女を王都から追放させる手段を思いつく。まずは占術士を呼び出し、生まれてくる子供の職業を調べさせた。


『占術士を利用し、国王に生まれてくる子供の職業を偽る。そうすればきっと短慮な国王は跡継ぎと認めないだろう』


後継ぎが生まれる事を最も望んでいたのは国王だが、イレアビトは占術士を利用してアイラが産む子供が王に相応しくない職業の子供だと伝える事にした。そうすれば国王はアイラが子供を産む前に堕ろすだろうと考えていた。しかし、予想外だったのは本当に生まれてくる子供が「不遇職」であり、彼女が何もせずともアイラの子供は跡継ぎとは認められない事が確定した。


『何という幸運だろう。いえ、これは必然……運命の女神が私を影の王へ導いているのだろう』


この時ばかりはイレアビトは今までに一度も祈った事がないのに神という存在に感謝し、結果的には彼女が手を下さずにアイラは生まれてきた赤子と共に王国から追放される。結果的には国王の判断で追い出されたため、マリアが恨みを抱いたのは国王只一人だけであり、イレアビトにとっては最良の結果をだけを得られる。


『あと少し……もう少しで私は王になれる』


十数年後、遂に愚鈍な国王の跡継ぎを授かり、優秀な配下を手中に収めたイレアビトは闘技祭を利用して自分の長年の計画を果たそうとしていた――
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