不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ

文字の大きさ
200 / 2,091
剣鬼 闘技祭準備編

暴鬼 その3

しおりを挟む
「がああっ!!」
「その言葉しか喋れねえのか……うおおっ!?」
「シュンさん!!」


移動速度自体はそれ程早くはないが、ジンの繰り出す攻撃はミサイルの爆撃を想像させる程に凄まじく、空振りするだけでも軽い衝撃派が発生する。真面に喰らえば即死は免れない攻撃に対し、シュンは距離を置きながら風の斬撃を繰り出すしかない。


「いい加減に倒れやがれ!!」
「ふんっ!!」


ジンの肉体に次々と斬撃が衝突するが、傷をつける処か皮膚を切り裂く事も出来ず、損傷は与えられない。自分の攻撃を全く受け付けない相手にシュンは苛立ちを覚えるが、同時に危機感を抱く。


(マジでやばい……こいつはもう人の領域を超えてやがる)


異様なまでの怪力、防御力、耐久力を誇るジンに対し、シュンは直感的に相手が人間を超えた存在、つまりは「英雄」の領域に至った人間だと見抜く。英雄とはこの世界でレベルが「70」を超えた人間の事を差しており、どのような職業であろうと70を超える人間は英雄の力を手に入れると言われている。


冒険都市の中でも最大規模を誇る冒険者ギルドの氷雨でさえも「英雄」の領域に至った人間は殆ど存在しない。ギルドマスターのマリアは別として彼女以外にレベル70を超える人間は最強の剣聖のゴウライしか存在しない。


(英雄に至った人間を相手にするのはいつ以来だ……マリアとアイラの嬢ちゃんと初めて会った時ぐらいか?)


普通の人間よりも長い時を生きているシュンは過去に何人か英雄の領域へと至った人間と邂逅した事があるが、彼等を相手に本気で戦った事は一度もない。しかし、直に英雄と会った事がある彼だからこそ、目の前に存在するジンからは英雄特融の覇気を感じ取る。

レナとの一戦以来、シュンは自分を見つめなおすために師の元で一から剣の修行をやり直した。今まで無我夢中に強くなるために強者と言われている相手と戦い続けたが、そのせいで罅の鍛錬を行ってしまった。だが、闘技場のでの敗戦から自分の力の弱さを実感した。

シュンが得意とする「嵐剣」はハヤテから教わった剣技であり、ハヤテも同様の剣技を扱える。しかし、師匠であるハヤテと比べてシュンの嵐剣は攻撃速度を重視し過ぎたあまりに威力が大きく劣る。だが、この二か月の間でハヤテの元で修業をやり直したシュンは新たな剣技を生み出す。


(悔しいがこいつは俺の手に負える相手じゃねえ……だが、このままやられっぱなしで済むかよ!!)


ジンに弱点があるとすれば「移動速度」だけであり、桁外れの怪力を誇りながらも攻撃自体はそれほど早くはなく、冷静に対処すれば回避は容易い。そのため、シュンは相手が攻撃を仕掛けた隙を狙い、最高の一撃を喰らわせるために長剣を鞘に戻す。


「来やがれ化物っ!!」
「ぐおおっ!!」
「シュンさん!?」


正面から迎え撃つようにシュンが立ち止まった事にジャンヌは驚愕するが、ジンはそんな彼に対して右腕を振り翳し、勢いよく貫く。まるで巨大な金属の拳が接近してくるような感覚にシュンは冷や汗を流すが、彼は鞘に納めた剣を引き抜き、ジンの拳を紙一重で回避しながら刃を放つ。


「抜……刀っ!!」
「ぐがぁっ!?」


鞘から引き抜かれた刃がジンの首元に走り、直後に血飛沫が舞い上がる。どれほど攻撃を与えようと損傷を与えられなかったジンの肉体に傷が走り、その光景に旗目から見ていたジャンヌは目を見開くが、シュンは笑みを浮かべる。


「手応え、有りだな」
「ぎゃあああっ!?」


ジンの首筋から派手に血液が噴出し、それを確認したシュンは額から汗を流しながらもその場を離れる。ジンは必死に首から噴き出す血を止めようとするが、傷口から溢れ出す血液は止まらず、徐々にジンの肉体にも異変が訪れ始めた。


「シュンさん!!これは一体……」
「巨人族の鬼人化の反動だ。俺もそんなに詳しくはないが……こいつらの鬼人化は自分の血液を利用して身体能力を限界以上に上昇させる能力らしい。だが、その血液を大量に失えば自然と解除される」
「血液?ですが、この男はこの姿に陥る前に深手を与えていたはずですが……」
「発動前に怪我を与えても意味がねえんだよ。重要なのは発動後に血液を奪う事だ。原理は俺も知らねえが、これでこいつはもう終わりだ……意外と何とかなったな」


シュンとジャンヌの目の前でジンの肉体が元の肌色へと変色し、鬼人化が解除されようとしていた。それを確認したシュンは剣を鞘に納めようとした瞬間、何処からか声が聞こえてきた。



「――聖属性エンチャント



街道に少年のような声が響き渡り、シュンとジャンヌは声の方向に視線を向けると、ジンが崩壊させた建物の残骸の上に緑色のマントを羽織った人物が存在した。まだ子供なのか身長は低く、その手元には弓矢を構えており、そのまま倒れているジンに向けて矢を放つ。


「ぐがぁっ……!?」
「なっ……てめえっ!!」
「一体何をっ!?」


放たれた矢はジンの首筋に的中し、鏃の部分が光り輝く。その光景を目撃したシュンは咄嗟に矢を放った人物に剣を構えるが、既に相手の姿は見えない。移動する時間などなかったはずだが、一瞬にして姿を消してしまう。
しおりを挟む
感想 5,095

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

初期スキルが便利すぎて異世界生活が楽しすぎる!

霜月雹花
ファンタジー
 神の悪戯により死んでしまった主人公は、別の神の手により3つの便利なスキルを貰い異世界に転生する事になった。転生し、普通の人生を歩む筈が、又しても神の悪戯によってトラブルが起こり目が覚めると異世界で10歳の〝家無し名無し〟の状態になっていた。転生を勧めてくれた神からの手紙に代償として、希少な力を受け取った。  神によって人生を狂わされた主人公は、異世界で便利なスキルを使って生きて行くそんな物語。 書籍8巻11月24日発売します。 漫画版2巻まで発売中。

没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。 彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。 優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。 それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。 その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。 しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。 ※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。 詳細は近況ボードをご覧ください。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。