不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ

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剣鬼 闘技祭準備編

閑話 〈その頃の仲間達〉

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――レナが外に出向いている間、氷雨のギルドでは彼の仲間が集まっていた。ハンゾウ、コトミン、ダイン、ゴンゾウ、ミナ、そしてシズネの6人はギルドの訓練場にて待機していた。現在の時間帯は人気が少なく、彼等は円を描くように座り込む。


「……それにしても遅いわね。何をしているのかしら?」
「もう用事終わったんだろ?何で戻ってこないんだあいつ?」
「帰りが遅いでござるな。まさかとは思うでござるが、何か事故に遭遇したのでは?」
「えっ!?だ、大丈夫かな?」
「レナならきっと平気」


5人はナオの護衛として立ち去ったレナが未だに帰還しない事に疑問を抱き、冒険者ギルドの前で彼の帰還を待っていた。別に建物の中で待機しても問題はないのだが、ハンゾウとミナ以外の人間にとっては部外者ばかりが集まっているため、どうにも居心地が悪く感じられる。そのため、建物の中で人気が少ない場所に集まっていた。


「それにしても暇だな……誰か面白い話とか知らないの?」
「面白い話とは違うかもしれないでござるが、さっき市場の方で何か起きたそうでござる」
「市場?何か事件でも起きたの?」
「拙者も詳しい事は知らないでござるが、王国の警備兵が駆け付ける姿を見たでござる」
「少し気になるな……見てくるか?」
「私はここに残るわよ。これ以上の面倒事はごめんよ」


市場に向けて警備兵が駆けつけているという報告にゴンゾウは不思議がるが、シズネは黙ってレナの帰りを待つ。彼には色々と話したいことがあり、今後どのように行動するのかを相談する必要がある。


「そういえばミナ殿は冒険者集団パーティの仲間とは話し合ったのでござるか?急に抜け出して拙者達を追いかけてきたから心配しているのでは?」
「ガロとモリモの事?大丈夫だよ、ちゃんとちょっと出かけてくると言ってたから平気平気」
「一か月以上も都市を離れる事をちょっと出かけてくるという説明だけで納得するのか……?」
「あんまり仲間に心配かけさせるのは感心しないわね……ちゃんと謝ってきなさい」
「うっ……分かったよう」


シズネに説教されてミナは渋々と起き上がり、自分の仲間達を探すために訓練場から離れる。しばらくは行動を共にしていたが、彼女は元々は別の冒険者集団の一員であり、レナ達の冒険者集団に参加したわけではない。最もシズネも傭兵なので冒険者ではなく、ハンゾウもそもそもレナの護衛役として行動していたので正式な冒険者集団の一員ではないが。


「それにしてもレナ殿が王子だったとは驚きでござるな。皆は知っていたのでござるか?」
「私は最近聞いたわよ」
「僕達は割と前から聞いてたよ。まあ、まさか本当の話だとは思わなかったけど……」
「普通の人間ではないと思っていたが、まさか王子とは思わなかったがな」
「王子なのに追放されたのは可哀想だと思った」
「そう……貴方達は随分と信頼されているのね」


ハンゾウは事前に報告を受けていたのでレナの身分は知っているが、シズネは彼に直接問い質して正体を知った。しかし、他の人間はレナの方から正体を明かしており、それだけに彼女は疎外感を感じていた。


(信頼、か……彼は私の事をどう思っているのかしら?)


シズネがレナと行動を共にしているのは自分の目的を果たすためであり、そのためには彼の力が必要不可欠だからである。最初は利用するためだけに近づいたはずだが、今ではレナが自分の事をどのような存在として捉えているのか気になるほどに彼女の中ではレナという存在は大きくなっていた。


(私の目的はあくまでも父さんの無念を晴らす事……でも、そのためには彼を……)


父親の仇であるゴウライを打倒し、聖剣を取り戻す。それだけが彼女の目的であり、そのためにはどんな手も使ってでも構わないという覚悟は抱いていた。だが、今更ながらにシズネは本当に自分の行動が正しい事なのか疑問を抱き、彼女は大きな不安を抱く。


(駄目よ……もう後戻りは出来ない。例え、どんな物を失うとしても諦める訳にはいかない。奴を倒す事だけを考えないと……)


シズネが暗い表情を抱きながら俯く姿に他の人間は疑問を抱き、ゴンゾウが話しかける。


「シズネ?どうかしたのか?顔色が悪いぞ?」
「っ……何でもないわ。ちょっと考え事をしていただけよ」
「何だよ考え事って?あ、もしかしてレナの事を心配してたのか?お前等、随分と仲良くなったもんな」
「え、ええっ……そうね」
「むうっ……意外なライバル」


ダインが茶化すように言葉を掛けるとシズネは苦笑いを浮かべ、胸に痛みが走る。もしも彼女が目的を果たした時、レナだけではなく目の前の彼等も傷つける結果になる事は間違いなく、彼女は罪悪感を抱きながらもレナが戻ってくるのを待ち続けた――
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