不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ

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剣鬼 闘技祭準備編

鬼か人か その3

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「ゴンゾウ!!く、くそっ……シャドウ・バイト!!」
「うおっ!?」


ダインは杖がない状態で魔法を繰り出す。杖はあくまでも魔法の力を補助する存在でしかなく、杖を失くしたとしても魔法を発動出来ないわけではない。しかし、通常時よりも小型の影の狼しか生み出せず、顔面に食らいつかせるのが限界だった。


「うがぁっ……!?」
「ひいっ!?い、今のうちに……」


黒狼の頭部に噛みつかれたジンは必死に振り払おうとするが、魔法で作り出した狼は力では引き剥がせず、顔面から離すことが出来ない。その時、ジンの首元の皮膚に異変が生じる。鬼人化を発動した時点で肉体の皮膚は赤褐色に変化するのだが、何故かダインの黒狼に噛みつかれた箇所は鬼人化が解除されていた。


「何だ……あの魔法は?いや、シャドウだと……そうか、影魔法だな!?」
「影魔法?あの最弱魔法と言われた……?」
「おい、誰だ最弱魔法なんて言ったの!!ぶっ叩くぞこの野郎!!」
「す、すいません!!」


シュンがジンの異変に気付き、ダインが放った魔法の正体に気付く。影魔法は闇属性の一種であり、闇属性の特徴としてステータスを低下させるという効果がある。それが原因なのかジンはダインの生み出した黒狼に噛みつかれた箇所は鬼人化が解除される事が判明し、この隙を逃さずにシュンは剣を振り抜く。


「このっ……転びやがれ!!」
「うおっ!?」


発徑の影響で身体が痺れて上手く動けないが、シュンは力を振り絞って刀を振り抜いた瞬間、刀身から風圧が発生してジンの足元を振り払う。ジンは背中から倒れこみ、その隙を逃さないようにシュンはゴンゾウに声を掛ける。


「おい、おっさん!!そいつの頭を狙えっ!!」
「俺は……まだ15だ!!」
『えっ!?』


シュンの言葉を聞いてゴンゾウは言い返しながらも駆け抜け、倒れこんだジンの頭部に視線を向ける。まだダインの生み出した狼の頭部が噛みついており、ゴンゾウはジンの両足を掴み上げ、力尽くで持ち上げると頭部から地面に叩きつけた。


「兜……落とし!!」
「ぐぶぅっ!?」


プロレスのパワーボムのようにジンの身体は頭部から地面に叩きつけられ、強烈な衝撃が走る。その際にダインの魔法の効果も失い、狼の頭部が消失した。気絶してもおかしくは無い程の威力だったが、ジンは鼻血を噴き出しながらも右腕を振り翳す。


「あっ……がああっ!!」
「なにっ!?」
「馬鹿なっ!!まだ動けるのかよ!?」


意識を半ば失いながらもジンは自分の足を掴むゴンゾウの掌に拳を叩きつけ、片足を解放させる。その隙に右足を無我夢中にゴンゾウの脇腹に叩きつける。


「うがっ!!ああっ!!」
「ぐふっ!?ぐぅっ……舐めるなっ!!」
「ぐえっ!?」


しかし、地面に倒れた状態では真面に力が入らず、脇腹に蹴りを叩きこまれながらもゴンゾウは片腕のみでジンの肉体を抱き上げ、再び地面に叩きつけようとした。


「これで、終わりだ!!」
「があっ……!?」


地面にジンの頭部が衝突しようとした瞬間、ゴンゾウの背後から近づく人影が存在し、彼の背中に強烈な風圧が放たれて体勢を崩す。


「うおっ!?」
「ぐぎぃっ!?」
「な、何だ!?」


背中に突風を受けて体勢を崩したゴンゾウとジンは地面に倒れ込み、何が起きたのかとダインは二人の背後に視線を向けると、そこには緑色のマントを羽織った少年の姿があった。それを見たシュンは憎々し気に怒鳴りつける。


「てめえっ!!まだいやがったのか!!」
「…………」


弓矢を構えた状態で少年はシュンを一瞥し、そのまま走り去る。その背中にシュンは風の斬撃を当てようとしたが、その前に意識を覚醒させたジンがゴンゾウを殴りつけて起き上がった。


「ぐがぁあああっ!!」
「ぐはっ!?」
「ゴンゾウ!?くそ、シャドウ……うわぁっ!?」
「危ない!!」


ゴンゾウを殴り飛ばして立ち上がったジンはダインが魔法を発動させる前に細長い腕を伸ばし、彼の足元を振り払う。それを目撃したジャンヌは咄嗟に立ち上がろうとしたが、彼女よりも先に街道を走り抜ける存在が居た。


「螺旋槍!!」
「刺突!!」
「ぐぎゃあっ!?」
「あ、貴女達は……!?」


ジンの背後から刃が回転した槍と青色の刀身の長剣が突き刺さり、そのまま背中を貫通する勢いで突き出される。苦悶の表情を浮かべながらジンは振り返ると、そこにはミナとシズネの姿があり、二人は同時に武器を引き抜くと次の戦技を発動させた。


「「乱れ突き!!」」
「ぐああっ!?」


背中に次々と剣と槍が突き出され、背中に無数の傷跡を形成しながらもジンはその場を踏み止まり、血走った目を二人に向ける。その姿にミナは後退り、シズネも冷や汗を流す。


「き、効いてない!?」
「やせ我慢よ……多分」
「しゃあっ!!」


新たに現れた二人にジンは両腕を伸ばし、彼女達を掴もうとする。しかし、連戦の疲労が遂に祟ったのか、足が崩れて跪いてしまう。
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