不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ

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剣鬼 闘技祭準備編

聖痕

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「あ、そういえば……さっき街道で大将軍と出会ったんだ」
「大将軍?ああ、そういえば街道で何か騒ぎが起きたていたらしいわね」


街道で起きた事件に関してはマリアも耳にしていたらしく、ジャンヌに救援を頼み込んだ人間以外にも氷雨のギルドに助けを求めに来た人間も居た。本来、街中の問題を解決するのは警備兵の仕事なのだが、この街では兵士よりも冒険者が信頼されている。


「囚人が脱走して暴れていたらしいけど、大将軍が現れて囚人を捕まえたんだよ。でも、その時に俺を襲った刺客も連れていかれて……」
「そうだったの……その大将軍の名前は分かるの?」
「確か……レミアと言ってたよ」
「レミアね」


マリアはレミアの名前を聞いても驚いた様子はなく、彼女は既にレミアが街に訪れていた事を把握していた。事前に自分の側近のシノビから情報は受け取っており、マリアは机の上を片付けながらレミアの情報をレナに教える。


「レミアは王妃の忠実な僕よ。あの娘が大将軍に無事に就けたのは王妃の手助けもあったからよ」
「僕……」
「王妃とは大将軍になる前からの付き合いらしいわ。だけど、私が話した限りでは正義感が強い根は正直な娘よ。彼女が王妃に従っているのは忠誠心ではなく、あくまでも恩義を返すためね」


王国の大将軍であるレミアが王妃に従うのはマリアの予測では大将軍に就任させてもらった恩があるからであり、実際の彼女の考えは間違ってはいなかった。


「レミアが闘技祭に参加するの?」
「そうよ。よく知っていたわね?闘技祭で彼女と戦うなら気を付けた方が良いわ」
「さっき、少しだけ力を見たよ。あの人の使っている術ってもしかして……」
「私は見た事はないけど、魔力を実体化させて鎧のように身に付ける魔術らしいわ」


マリアの言葉を聞いてレナはレミアが使用していた術が「魔鎧術」である事を確信し、まさか今の時代にも大迷宮のホネミンが生きていた頃に存在した魔法が残っていた事に驚く。だが、相手の扱う魔法を事前に知れた事は幸いであり、対策を立てられる。


(大会で戦うとしたら厄介な相手だけど……ホネミンに魔鎧術の弱点を聞いておいてよかったな)


闘技祭に出場する以上、レミアとの戦闘も考慮しなければならず、レナは彼女を打ち倒す方法を考える。相手は国の将軍を務めるほどの強者であり、しかもアイリスの情報によれば腐敗竜を倒せる程の実力者らしい。


(でも、確かに強いとは思うけど腐敗竜を倒せる程の力を持っているとは思えないけどな……)


レミアが実力者である事は間違いはないが、それでもレナは自分達があれほど苦戦した腐敗竜を単独で打ち倒せる程の力を持っているとは考えられなかった。まだ力を隠している可能性もあるが、それでもこの街の冒険者全員が力を合わせて倒した腐敗竜を撃破出来る程の実力を有しているとは考えにくく、マリアにレミアの情報を尋ねる。


「レミアの事を叔母様は何処まで知ってるの?」
「あら……彼女に興味が湧いたの?まあ、綺麗な娘だから仕方ないわね」
「別にそういうわけじゃないけど……」
「冗談よ。何が聞きたいのかしら?」


レナの言葉を聞いてマリアは意地悪そうな笑顔を浮かべ、質問に答える。まずレナが気になったのはレミアの戦闘方法であり、魔鎧術を利用する事は分かったが、他にどのような技を持っているのかを問う。


「レミアが魔力を実体化させる事は分かったけど、それ以外にどんな能力があるの?」
「そうね。レミアは素手の状態で武器系の戦技を扱えるとは聞いているわ。知っているかも知れないけど、武器を利用した戦技は素手で扱う事は出来ないのに彼女の場合は扱えるらしいわ」
「それは知ってる」


武器系の戦技をレミアが素手で扱えるのは「魔鎧術」の応用で魔力で実体化させた武器を作り出しているからであり、実際の所は素手で扱っているわけではない。レナが訪ねたいのは他にどのような能力があるのかだが、マリアは腕を組んで豊満な胸を支えながらレミアの情報を思い返す。


「後は……あくまでも噂話だけど、レミアは聖痕の所有者ではないかと言われているわ」
「聖痕?」
「聖痕というのは魔法の力を強める紋様の事よ。ハヅキ家が扱う紋様術と似ているけれど、聖痕を持つ人間は1つの属性しか扱えない代わりに強大な魔力な身に宿す事が出来るの」
「魔法の力を強める紋様……本当にそんなのがあるの?」
「レミアが聖痕の所有者かどうかは知らないけれど、実際に聖痕と呼ばれる力は存在するわ。私も1人だけ聖痕の所有者を知っているもの」


聖痕という新しい単語にレナは不思議に思い、マリアの話が本当ならばレミアが扱える魔法の属性は1つだけとなる。そしてジンとの戦闘で見せた彼女の魔力の色合いから考えてもレミアは「聖属性」の使い手で間違いはない。
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