233 / 2,091
闘技祭 決戦編
ゴウライ(中身)との対話
しおりを挟む
――数十秒後、レナは薬草の粉末を混ぜ合わせた浴槽の中でゴウライと向き直り、彼女と向かい合う形でお湯に浸かる。ゴウライの正体が女性だった事は驚いたが、どうして彼女が風呂の中に乗り込んできたのかをレナは問い質す必要があった。
「がはははっ!!風呂に入るなど久しぶりだな。一か月ぶりぐらいか?」
「はあ……じゃあ、普段はどうやって身体を洗っているんですか?」
「基本的には水浴びだな。それだけで十分に汚れが落ちる」
ゴウライは肩までお湯に浸かりながら身体を伸ばし、男性であるレナが存在するにも関わらずに緊張した様子も見せず、身体を見られても動揺しない。あまりに堂々としているため、レナとしてもどう反応すればいいのか分からず、とりあえずは直視しないように顔を反らしながら話しかけた。
「それで……ゴウライさんは俺に何の話があるんですか?」
「おお、そうだった。忘れるところだった」
「いや、立ち上がらないで下さい!!見えちゃいますから!!」
レナの言葉にゴウライは身体を起き上げようとすると、レナは咄嗟に手で顔を抑える。しかし、ゴウライは気にした風もなく自分の胸元を掴み、笑い声をあげる。
「ん?なんだ?吾輩の身体を見て照れているのか?可愛い奴だな」
「なんでそんなに堂々としていられるんですか……」
「気にするな。吾輩は女として生きる事をもう捨てている。それに人と話す時に顔を反らすのは失礼ではないか?」
「じゃあ、せめて風呂に入って下さい……」
「仕方がない奴だ」
渋々とゴウライは湯船につかり、レナと向き合う。彼が顔を向けるのを確認すると、早速本題に入る。
「では話を始めようか」
「あ、待ってください。その前に聞きたいことがあるんですけど……」
「うむ、構わんぞ?何が聞きたい?」
「良く俺の正体に気付きましたね。闘技場で戦っていた時は変装してたのに……」
闘技場でゴウライと遭遇した時のレナはドルトン商会の代表選手の「ルナ」として変装した状態だったが、現在のレナは変装はしていない。レナとルナが同一人物である事を知っているのは一部の人間だけのはずだが、ゴウライが知っていた事にレナは疑問を抱く。
「何だ、そんな事か……吾輩が剣士を見間違えるはずがないだろう。訓練中に見せたお前の剣筋は闘技場で活躍していた剣士と同じ剣筋だった。だからルナというのがお前が変装していた存在だと気づいたのだ」
「剣筋……?」
「特にお前のような剣士は珍しいからな。人間なのに獣人族と似た筋肉の付き方をしている事から珍しいとは思っていた」
流石に最強の剣士と呼ばれるだけはあり、ゴウライの観察能力は凄まじく、試合で見せたルナの剣技と訓練場で見かけたレナの剣技が同じ物である事に気付き、正体を見破ったという。
「さて、聞きたいことはそれだけか?ならば吾輩の話も聞いてもらうぞ」
「どうぞ」
「では率直に尋ねるが、レナと言ったな?お前の相棒に関してだが……」
「……シズネ?」
シズネの話題が出た事にレナは表情を引き締め、まさかゴウライの方から彼女の話をするとは予想外だった。しかし、ゴウライはシズネの父親を討ち取った剣士であり、シズネにとっては父の仇である。そんな彼女が何を言い出すのかとレナは身構える。
「そう、シズネだ。何故かあの娘を冒険者ギルドで見かけてな。顔を見かけただけで話しかけなかったが、他の人間に聞くとお前達が最近はここ寝泊まりしていると聞いたんだが、氷雨のギルドの冒険者になったのか?」
「えっ……?」
だが、ゴウライが質問したのはレナとシズネがギルドに滞在している理由であり、彼はギルドに戻ってきたばかりでレナ達の事情は伝わっていなかったようであり、直接問い質すために訪れたという。
「あの……聞きたいことはそれだけですか?」
「うむ」
「えっとですね……その、色々と理由があって俺達は氷雨のギルドに匿って貰っているんです」
「ほう、そういう事だったのか。複雑な事情か?」
「まあ、一応は……」
「そうか、納得したぞ。それなら好きなだけ居るがいい!!困り事があったら吾輩に相談しても構わんぞ!!」
豪快な笑い声を上げながらゴウライはレナの肩を叩き、聞きたい事を聞けて満足したのか彼女は立ち上がり、浴槽から出ていこうとする。
「じゃあ、吾輩はもう上がるぞ。お前達とは闘技祭で戦える事を楽しみにしているぞ!!」
「ちょ、ちょっと!!聞きたいことはそれだけなんですか?」
「ん?そうだが?」
「シズネの事で他に聞きたいことはないんですか!?」
慌ててレナは風呂場から出ていこうとするゴウライを引き留め、他にシズネに関して何か聞く事はないのかと問い質すが、彼女は手に顎を押し当てて考え込む。
「……ないな。別に吾輩とあの娘はそれほど仲良くはないからな」
「でも、シズネの父親を討ち取ったのは貴女なんでしょう?その事でシズネに何か思う所はないんですか?」
「そうは言ってもな……ギラン殿との試合は吾輩としても色々と思う所はある。しかし、吾輩はあくまでも正々堂々と戦ったつもりだ。ギラン殿も最後まで誇り高き剣士として戦ってくれた。だから吾輩が勝ち、ギラン殿が負けた。それだけの話だ。過程はどうであろうと吾輩が勝利した事に違いはない」
「でも、そのせいでシズネは貴女を恨んでますよ」
「まあ、それは仕方ないだろう。結果的には吾輩がギラン殿を殺したことに変わりはないからな。その事で恨まれても仕方がない。しかし、だからといって吾輩があの娘に謝罪も同情もするつもりはない。吾輩とギラン殿はお互いに正々堂々と決闘をしたつもりだからな」
「……そうですか」
ゴウライの言葉を聞いてレナは引き下がり、彼女がシズネに対して特に哀れみや同情の感情は抱いていない事を知る。しかし、ゴウライの言い分も決して間違いではなく、過程はともかく決闘で敗れたのはギランである事に間違いはない。
「がはははっ!!風呂に入るなど久しぶりだな。一か月ぶりぐらいか?」
「はあ……じゃあ、普段はどうやって身体を洗っているんですか?」
「基本的には水浴びだな。それだけで十分に汚れが落ちる」
ゴウライは肩までお湯に浸かりながら身体を伸ばし、男性であるレナが存在するにも関わらずに緊張した様子も見せず、身体を見られても動揺しない。あまりに堂々としているため、レナとしてもどう反応すればいいのか分からず、とりあえずは直視しないように顔を反らしながら話しかけた。
「それで……ゴウライさんは俺に何の話があるんですか?」
「おお、そうだった。忘れるところだった」
「いや、立ち上がらないで下さい!!見えちゃいますから!!」
レナの言葉にゴウライは身体を起き上げようとすると、レナは咄嗟に手で顔を抑える。しかし、ゴウライは気にした風もなく自分の胸元を掴み、笑い声をあげる。
「ん?なんだ?吾輩の身体を見て照れているのか?可愛い奴だな」
「なんでそんなに堂々としていられるんですか……」
「気にするな。吾輩は女として生きる事をもう捨てている。それに人と話す時に顔を反らすのは失礼ではないか?」
「じゃあ、せめて風呂に入って下さい……」
「仕方がない奴だ」
渋々とゴウライは湯船につかり、レナと向き合う。彼が顔を向けるのを確認すると、早速本題に入る。
「では話を始めようか」
「あ、待ってください。その前に聞きたいことがあるんですけど……」
「うむ、構わんぞ?何が聞きたい?」
「良く俺の正体に気付きましたね。闘技場で戦っていた時は変装してたのに……」
闘技場でゴウライと遭遇した時のレナはドルトン商会の代表選手の「ルナ」として変装した状態だったが、現在のレナは変装はしていない。レナとルナが同一人物である事を知っているのは一部の人間だけのはずだが、ゴウライが知っていた事にレナは疑問を抱く。
「何だ、そんな事か……吾輩が剣士を見間違えるはずがないだろう。訓練中に見せたお前の剣筋は闘技場で活躍していた剣士と同じ剣筋だった。だからルナというのがお前が変装していた存在だと気づいたのだ」
「剣筋……?」
「特にお前のような剣士は珍しいからな。人間なのに獣人族と似た筋肉の付き方をしている事から珍しいとは思っていた」
流石に最強の剣士と呼ばれるだけはあり、ゴウライの観察能力は凄まじく、試合で見せたルナの剣技と訓練場で見かけたレナの剣技が同じ物である事に気付き、正体を見破ったという。
「さて、聞きたいことはそれだけか?ならば吾輩の話も聞いてもらうぞ」
「どうぞ」
「では率直に尋ねるが、レナと言ったな?お前の相棒に関してだが……」
「……シズネ?」
シズネの話題が出た事にレナは表情を引き締め、まさかゴウライの方から彼女の話をするとは予想外だった。しかし、ゴウライはシズネの父親を討ち取った剣士であり、シズネにとっては父の仇である。そんな彼女が何を言い出すのかとレナは身構える。
「そう、シズネだ。何故かあの娘を冒険者ギルドで見かけてな。顔を見かけただけで話しかけなかったが、他の人間に聞くとお前達が最近はここ寝泊まりしていると聞いたんだが、氷雨のギルドの冒険者になったのか?」
「えっ……?」
だが、ゴウライが質問したのはレナとシズネがギルドに滞在している理由であり、彼はギルドに戻ってきたばかりでレナ達の事情は伝わっていなかったようであり、直接問い質すために訪れたという。
「あの……聞きたいことはそれだけですか?」
「うむ」
「えっとですね……その、色々と理由があって俺達は氷雨のギルドに匿って貰っているんです」
「ほう、そういう事だったのか。複雑な事情か?」
「まあ、一応は……」
「そうか、納得したぞ。それなら好きなだけ居るがいい!!困り事があったら吾輩に相談しても構わんぞ!!」
豪快な笑い声を上げながらゴウライはレナの肩を叩き、聞きたい事を聞けて満足したのか彼女は立ち上がり、浴槽から出ていこうとする。
「じゃあ、吾輩はもう上がるぞ。お前達とは闘技祭で戦える事を楽しみにしているぞ!!」
「ちょ、ちょっと!!聞きたいことはそれだけなんですか?」
「ん?そうだが?」
「シズネの事で他に聞きたいことはないんですか!?」
慌ててレナは風呂場から出ていこうとするゴウライを引き留め、他にシズネに関して何か聞く事はないのかと問い質すが、彼女は手に顎を押し当てて考え込む。
「……ないな。別に吾輩とあの娘はそれほど仲良くはないからな」
「でも、シズネの父親を討ち取ったのは貴女なんでしょう?その事でシズネに何か思う所はないんですか?」
「そうは言ってもな……ギラン殿との試合は吾輩としても色々と思う所はある。しかし、吾輩はあくまでも正々堂々と戦ったつもりだ。ギラン殿も最後まで誇り高き剣士として戦ってくれた。だから吾輩が勝ち、ギラン殿が負けた。それだけの話だ。過程はどうであろうと吾輩が勝利した事に違いはない」
「でも、そのせいでシズネは貴女を恨んでますよ」
「まあ、それは仕方ないだろう。結果的には吾輩がギラン殿を殺したことに変わりはないからな。その事で恨まれても仕方がない。しかし、だからといって吾輩があの娘に謝罪も同情もするつもりはない。吾輩とギラン殿はお互いに正々堂々と決闘をしたつもりだからな」
「……そうですか」
ゴウライの言葉を聞いてレナは引き下がり、彼女がシズネに対して特に哀れみや同情の感情は抱いていない事を知る。しかし、ゴウライの言い分も決して間違いではなく、過程はともかく決闘で敗れたのはギランである事に間違いはない。
12
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
離婚する両親のどちらと暮らすか……娘が選んだのは夫の方だった。
しゃーりん
恋愛
夫の愛人に子供ができた。夫は私と離婚して愛人と再婚したいという。
私たち夫婦には娘が1人。
愛人との再婚に娘は邪魔になるかもしれないと思い、自分と一緒に連れ出すつもりだった。
だけど娘が選んだのは夫の方だった。
失意のまま実家に戻り、再婚した私が数年後に耳にしたのは、娘が冷遇されているのではないかという話。
事実ならば娘を引き取りたいと思い、元夫の家を訪れた。
再び娘が選ぶのは父か母か?というお話です。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。