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闘技祭 決戦編
ルトリア家の悲願
「ちょっと、何処まで進むつもりよ?」
「……ここまで移動すればいいでしょう」
通路を歩いてから数十秒後、いい加減に痺れを切らしたシズネがレミアに話しかける。すると彼女は通路の前後を見渡して兵士が居ないことを確認すると頭を下げた。
「申し訳ありません。レナ様の部屋はこちらではありません」
「だろうね。途中で見かけたもん」
「通路から少し離れた場所にあったでござるな」
「それで、わざわざ私達をここまで呼び出したのはどんな理由があるのよ」
レナの部屋は階段側の通路から少し離れた場所に存在し、既に通り過ぎていた。それでも3人がレミアの後に続いたのは彼女の目的を確かめるためであり、シズネが尋ねるとレミアは頷く。
「先日、私の元に手紙が届きました。差出人は氷雨のギルドマスターからです」
「手紙?」
「おお、無事に届いていたでござるか!!」
レミアは一通の手紙を取り出し、それを見たハンゾウが嬉しそうに声を上げる。どうやら内密にレミアの元にマリアは手紙を送ったらしく、彼女は深刻な表情を浮かべながらレナに問い質す。
「我がルトリア家が王国の忠誠の証として預かっていた神器「アスカロン」を氷雨が所有している旨が記されていました。とても信じられませんが、もしも事実ならば見過ごす事は出来ません」
「だから返せと言うの?」
「はい……あの神器はルトリア家が何百年も守り続けてきた家宝なのです。どうかお返しください」
懇願するような言葉とは裏腹にレミアの表情は険しく、返答次第によっては戦闘を行う覚悟もあるのか、両手の拳を握りしめていた。しかし、レナとしても初めて知った話であり、困った風にハンゾウに振り返る。
「どうしようか?神器は叔母様が持っているだろうし、俺達に言われてもね」
「そうでござるな。後でマリア殿も訪れるようでござるし、その時に本人と話してみてはどうでござる?」
「それは無理です……私が自由に動ける時間は限られています。選手として試合に出場し、他の時間は王妃様の護衛部隊と協力して闘技場の警備も行わなければなりません。とても貴方達のギルドマスターと会う暇はありません」
「別に私とレナは氷雨の冒険者ではないけど……要するにマリアに話を通せばいいのね」
「ご理解いただけたようで助かります」
シズネの言葉にレミアは頷き、安心した表情を抱く。そんな彼女の反応に3人は疑問を抱き、妙に緊張感を抱いているレミアにレナは問い質す。
「随分と張りつめているようだけど、何かあったの?」
「……神器アスカロンの奪還こそルトリア家の悲願だからです。私の母も祖母も盗まれたアスカロンを捜索し続けていましたが、犯人の手掛かりさえ見つかりませんでした」
「そこが不思議な話よね。どうしてルトリア家はアスカロンを奪われたの?それほど大切な物なら大事に保管していたのでしょう?」
「それは……」
レミアは一瞬だけ口ごもるが、意を決したようにアスカロンを奪われた日の事を話す。
「まだ私が生まれる前の話になりますが、アスカロンは表向きは盗難された事になっていますが、実際は奪われたのです」
「奪われた……誰に?」
「正体は分かりません。しかし、恐ろしく強い剣士がルトリア家に乗り込み、厳重に保管されていたアスカロンを奪い、逃走したと聞いています。相手は吸血鬼だったそうです」
「吸血鬼……?」
吸血鬼の剣士と聞いてレナの脳裏に「ゲイン」が思い浮かび、もしかしたら彼がルトリア家から神器を盗み出したのかと考えたが、確証はない。別人の可能性もある以上、敢えて口を挟まずにレミアの話の続きを聞く。
「アスカロンを奪われた事で当然ながらルトリア家は王家からの信頼を失い、一時期は貴族の位も奪われそうになりました。しかし、神器が奪われてから数日後に王都周辺に牙竜が出現し、当時のルトリア家の当主が命と引き換えに牙竜の討伐を果たしたことで功績が認められ、家の取り潰しは避けられたと聞いています」
「牙竜?」
「竜種の中でも獰猛で危険な竜でござる」
レナが知っている竜種は大迷宮で遭遇した「白竜」と冒険都市を襲撃した「腐敗竜」のみであり、牙竜という名前の竜種は知らない。しかし、破壊剣聖であるゴウライはこの都市に帰還する前に牙竜の討伐を果たしており、彼女の場合は3日も戦い続けて討伐を果たしている。
「結果的にはルトリア家の失態は当時の当主の最期の功績によって償われました。しかし、それ以降はアスカロンの奪還こそがルトリア家の宿命であり、今は亡き先祖の名誉を回復させるためにも私はどうしてもアスカロンを取り戻さなければなりません」
レミアは強い意思を感じさせる瞳を向け、ルトリア家の宿願を果たすため、彼女はアスカロンの返却を要求する。しかし、アスカロンをただで彼女に渡す訳にはいかず、レナは言いにくそうにマリアの考えを話した。
「……ここまで移動すればいいでしょう」
通路を歩いてから数十秒後、いい加減に痺れを切らしたシズネがレミアに話しかける。すると彼女は通路の前後を見渡して兵士が居ないことを確認すると頭を下げた。
「申し訳ありません。レナ様の部屋はこちらではありません」
「だろうね。途中で見かけたもん」
「通路から少し離れた場所にあったでござるな」
「それで、わざわざ私達をここまで呼び出したのはどんな理由があるのよ」
レナの部屋は階段側の通路から少し離れた場所に存在し、既に通り過ぎていた。それでも3人がレミアの後に続いたのは彼女の目的を確かめるためであり、シズネが尋ねるとレミアは頷く。
「先日、私の元に手紙が届きました。差出人は氷雨のギルドマスターからです」
「手紙?」
「おお、無事に届いていたでござるか!!」
レミアは一通の手紙を取り出し、それを見たハンゾウが嬉しそうに声を上げる。どうやら内密にレミアの元にマリアは手紙を送ったらしく、彼女は深刻な表情を浮かべながらレナに問い質す。
「我がルトリア家が王国の忠誠の証として預かっていた神器「アスカロン」を氷雨が所有している旨が記されていました。とても信じられませんが、もしも事実ならば見過ごす事は出来ません」
「だから返せと言うの?」
「はい……あの神器はルトリア家が何百年も守り続けてきた家宝なのです。どうかお返しください」
懇願するような言葉とは裏腹にレミアの表情は険しく、返答次第によっては戦闘を行う覚悟もあるのか、両手の拳を握りしめていた。しかし、レナとしても初めて知った話であり、困った風にハンゾウに振り返る。
「どうしようか?神器は叔母様が持っているだろうし、俺達に言われてもね」
「そうでござるな。後でマリア殿も訪れるようでござるし、その時に本人と話してみてはどうでござる?」
「それは無理です……私が自由に動ける時間は限られています。選手として試合に出場し、他の時間は王妃様の護衛部隊と協力して闘技場の警備も行わなければなりません。とても貴方達のギルドマスターと会う暇はありません」
「別に私とレナは氷雨の冒険者ではないけど……要するにマリアに話を通せばいいのね」
「ご理解いただけたようで助かります」
シズネの言葉にレミアは頷き、安心した表情を抱く。そんな彼女の反応に3人は疑問を抱き、妙に緊張感を抱いているレミアにレナは問い質す。
「随分と張りつめているようだけど、何かあったの?」
「……神器アスカロンの奪還こそルトリア家の悲願だからです。私の母も祖母も盗まれたアスカロンを捜索し続けていましたが、犯人の手掛かりさえ見つかりませんでした」
「そこが不思議な話よね。どうしてルトリア家はアスカロンを奪われたの?それほど大切な物なら大事に保管していたのでしょう?」
「それは……」
レミアは一瞬だけ口ごもるが、意を決したようにアスカロンを奪われた日の事を話す。
「まだ私が生まれる前の話になりますが、アスカロンは表向きは盗難された事になっていますが、実際は奪われたのです」
「奪われた……誰に?」
「正体は分かりません。しかし、恐ろしく強い剣士がルトリア家に乗り込み、厳重に保管されていたアスカロンを奪い、逃走したと聞いています。相手は吸血鬼だったそうです」
「吸血鬼……?」
吸血鬼の剣士と聞いてレナの脳裏に「ゲイン」が思い浮かび、もしかしたら彼がルトリア家から神器を盗み出したのかと考えたが、確証はない。別人の可能性もある以上、敢えて口を挟まずにレミアの話の続きを聞く。
「アスカロンを奪われた事で当然ながらルトリア家は王家からの信頼を失い、一時期は貴族の位も奪われそうになりました。しかし、神器が奪われてから数日後に王都周辺に牙竜が出現し、当時のルトリア家の当主が命と引き換えに牙竜の討伐を果たしたことで功績が認められ、家の取り潰しは避けられたと聞いています」
「牙竜?」
「竜種の中でも獰猛で危険な竜でござる」
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「結果的にはルトリア家の失態は当時の当主の最期の功績によって償われました。しかし、それ以降はアスカロンの奪還こそがルトリア家の宿命であり、今は亡き先祖の名誉を回復させるためにも私はどうしてもアスカロンを取り戻さなければなりません」
レミアは強い意思を感じさせる瞳を向け、ルトリア家の宿願を果たすため、彼女はアスカロンの返却を要求する。しかし、アスカロンをただで彼女に渡す訳にはいかず、レナは言いにくそうにマリアの考えを話した。
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