不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ

文字の大きさ
254 / 2,091
闘技祭 決戦編

ゴウライの戦技

しおりを挟む
『ふむ、これで邪魔者はいなくなったな!!』
「…………」


タイガが倒れ事で試合場で意識が残っている人間は女剣士とゴウライだけとなり、お互いに剣を構える。試合の流れは完全に女剣士に向いており、既に二人の選手を倒している。しかし、彼女が相対する相手は王国一と名高い剣士であり、闘技場が緊張に包まれた。


『最後にこれだけは聞いておきたい。名前を教えてくれ、恥ずかしいようなら誰にも聞こえないように吾輩だけに聞こえるように話してくれても構わんぞ。これほどの腕前の剣士など、滅多に遭えないからな』
「……そうね。なら、誰にも内緒にしてくれるかしら?」
『うむ!!』


ゴウライの申し出に女剣士は他の人間に聞こえないように声を抑え、名乗り上げた。


「私の名前はアイラ・ハヅキ……だけど、冒険者仲間からはアイと呼ばれていたわ」
『ほう、いい名前だな。吾輩と比べると可愛げがあって羨ましいぞ!!』
「か、可愛げ……?」


遂に名乗り上げた「アイラ」はゴウライの言葉に戸惑うが、名前を知った事で満足したのかゴウライはデュランダルを正面に構え、アイラに提案を行う。


『ところでアイラよ。このまま戦闘を続けても構わんが、それだとお前の体力が持たないだろう?何故か知らんが、お前の動きに精彩さが欠けてきた。腕前は素晴らしいが、お前は長い間を剣から離れた生活を送っていたな?』
「流石ね……実を言うと、もう動くのもきつくなってるわ。引退してからも鍛錬を怠っていたわけじゃないけど、やっぱり長らく実戦から離れていると駄目ね。身体が思うように動かなくなってきたわ」
『武に志す人間なら知っているはずだ。鍛錬のみで武力を保つ事は出来ん。適度に実戦を経験し、常に強くなることの探求心を忘れた人間に武神は微笑まんぞ』
「耳が痛いわ……だけど、私は負けるわけにはいかないの」


アイラは両手の剣を重ね合わせると、刃を十字の形に変えてゴウライに構える。そのアイラの行動にゴウライは彼女が次の一撃に全てを賭けると判断し、ゴウライはデュランダルを正面に向ける。


『なるほど、一撃必殺か……良かろう!!受けて立つ!!」
「有難いわ……」


ゴウライが逃げずに受けて立つ事を決めると、アイラは笑みを浮かべ、瞼を閉じて精神を集中させる。甲冑に隠れていて中身は見えないが、ゴウライも集中しているのかデュランダルを上段に構えたまま動かず、静寂が試合場を支配する。

剣の達人同士の決闘が一瞬で終わるように、次の二人の攻撃で試合が終わる事を確信した剣士達は食い入るように試合場に視線を向ける。片方は王国最強と言われた破壊剣聖、もう片方は獣人国の代表を打ち破った女剣士(拳だが……)、どちらが勝利するか予想できる人間は闘技場内でも極僅かだった。


(……動く)


レナは紅色の瞳を無意識に光り輝かせ、二人が攻撃を仕掛ける直前に両者が同時に動き出すことを察知する。レナの予想通り、二人は全く動じに相手に向けて踏み出し、剣を振り翳す。



「十文字切り!!」
「大切断!!」



アイラが重ね合わせた刃を突き出した瞬間、ゴウライはデュランダルを恐るべき速度で振り落とし、両者の剣の刃が触れた瞬間に激しい金属音と衝撃波が試合場に拡散する。そして、二つの刃が空中に飛ばされ、アイラの身体が地面に崩れた。


「くっ……」
『……吾輩の勝ちだ』


立っているのはデュランダルをアイラの顔面の間近まで振り下ろした状態のゴウライだけであり、アイラは力が抜けたようにその場に倒れこむ。全身全霊の一撃を打ち破られ、糸が切れた人形のように力を失い、彼女は折れた刃の剣を掴んだまま気絶する。


『気絶しても尚、剣を手放さないか……流石だな』
『……え、えっと……仮面の女剣士さんの戦闘不能と判断し、試合を終了します!!勝者は……ゴウライ選手です!!』


闘技場に解説役のラビットの声が響き渡り、直後に爆発的な歓声が観客席から上がる。しかし、当のゴウライは倒れたアイラを担ぎ上げ、黙って開け放たれた試合所の北門に向かう。


「……流石ね。あれが私の倒さなければならない敵だと思うと、正直生きているのが嫌になるわ」
「凄いね……本当にそれだけしか言えないよ」


レナとシズネは黙々と立ち去るゴウライに視線を向け、本当に自分達が力を合わせて打ち倒せる敵なのか不安を抱く。はっきり言って今の二人とは剣の技量に天と地の差があり、全く勝てる気がしない。しかし、そんな二人の肩にハンゾウが手を置く。


「御二人とも聞いて欲しい事があるでござる」
「何よこんな時に……」
「どうしたの?」


ハンゾウに二人は振り返ると、彼女は真剣な表情を浮かべて驚くべき言葉を口にした。





「拙者……ゴウライ殿の弱点を見つけたかもしれないでござる」
しおりを挟む
感想 5,095

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

離婚する両親のどちらと暮らすか……娘が選んだのは夫の方だった。

しゃーりん
恋愛
夫の愛人に子供ができた。夫は私と離婚して愛人と再婚したいという。 私たち夫婦には娘が1人。 愛人との再婚に娘は邪魔になるかもしれないと思い、自分と一緒に連れ出すつもりだった。 だけど娘が選んだのは夫の方だった。 失意のまま実家に戻り、再婚した私が数年後に耳にしたのは、娘が冷遇されているのではないかという話。 事実ならば娘を引き取りたいと思い、元夫の家を訪れた。 再び娘が選ぶのは父か母か?というお話です。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。