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闘技祭 決戦編
ミドルの忠誠
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『では試合を終えた選手は退場してください。勝敗に関係なく、選手の場合は観客席の中でも特等席を用意しています!!どうぞご堪能ください!!』
「へえ、そんなサービスもあるのか」
「うっ……すいません、肩を貸して貰って……」
「いいって、ついでに武器も直しといたから」
ジャンヌに肩を貸しながらレナは試合場を後にすると、他の2人の選手も闘技場の兵士が運び出す。その光景を見て試合に敗れると兵士に身を任せない事を知り、決して油断できない事をレナは悟る。
(試合が終わっても油断は出来ないな。用心しないと……)
負傷したジャンヌを連れて試合場の北門から通路に出ると、レナの前に少し前に顔を合わせた人物が現れた。
「やあっ」
「あっ……ミドル、さん?」
「さん付けはいらないさ。呼び捨てで構わないよ」
姿を現したのは異様なまでに長い槍を身に付けた大将軍のミドルであり、全長は4メートルは軽く超える槍を掲げながら笑いかける。特に敵意や殺気は感じられないが、試合場で待機せずに通路で待ち構えていた彼にレナは警戒心を抱く。
「どうしてここに?」
「君と少し話をしたかったんだが……その子は友達かい?治療が必要なら治療室に行くといいよ」
「平気です。レナ様から回復魔法を施されているので……」
「無理するなって……」
ジャンヌがミドルの言葉に反応すると、彼は苦笑いを浮かべながら道を開け、槍で行き先を示す。
「この先の通路を真っすぐに行くと上の階段に続くけど、そこには兵士が待機している。途中で別の通路があるからそこから迂回するといいよ」
「……どういう意味ですか?」
「信じられないなら僕の言葉は無視してもいい。だけどね、僕としてはレナ君にはこんな所で試合に出られないようなるのは困るんだよ」
「言っている意味がよく分からないけど?」
ミドルの発言にレナは不思議に思うと、彼は神妙な表情を浮かべ、自分の目的を話す。
「僕はね、ずっと王国に仕えてきたんだよ。もう20年以上もね」
「えっ……ちょっと待ってください。貴方、何歳ですか?」
「今年で42だけど……?」
「いや、外見若すぎでしょ!!」
どう見ても外見は20代半ばにしか見えないにも関わらず、ミドルの実年齢は40才を超えているという話にレナは驚く。そんな彼の言葉にミドルは苦笑いを浮かべ、自分の腕を見つめる。
「僕が大将軍に任命されてから18年……君が生まれる前から僕はこの国を支えてきたんだよ。だけどね、本当の事を言うと僕が忠誠を誓っているのは王国じゃないんだ」
「それは……どういう意味ですか?大将軍が王国に忠誠を誓っていないなんて……」
「レミアが怒りそうな発言ですね」
「レミア君か……彼女は本当に凄いね。僕の年齢の半分も生きていないのに、僕よりも立派な軍人だ」
堂々と王国に忠誠を誓っていないと告げたミドルにジャンヌは戸惑うが、レナは驚かない。最初に会った時からこの人物は油断ならないと剣鬼の本能が告げており、彼が忠誠を誓う人物を問い質す。
「貴方の忠誠を誓っている相手は……王妃ですか?」
「……そうさ、僕はあの方のために生きている。最初に彼女と出会った時から僕の人生は彼女に全てを捧げるためにあると思った」
「えっ……」
ミドルの言葉にジャンヌは目を見開き、その言葉はまるで王妃に忠誠を誓うというよりは彼女に思慕を抱いているようにしか見えなかった。しかし、王妃は形式上は国王の妻であり、彼は自分の恋敵の配下として20年以上も仕えていたことになる。
「ああ、勘違いしないで欲しいだけど僕は別に国王様に不満があるわけじゃない。あの方の事を嫌っているわけじゃないよ。先王の時代から色々と気を配ってくれたからね。それに僕は王妃様と恋仲になりたいわけじゃないんだ……ただ、あの方の傍に何時までも仕えていたい、そう思うんだ」
「そのためにどれだけの人間を苦しめてもいいの?王妃の行動で一体何人の人間が犠牲になった?」
レナは王妃の犯した罪を突きつけると、ミドルも流石に眉を顰めるが、それは王妃の犯した悪行の罪悪感からではなく、彼女の事を侮辱されたと感じたからだ。
「王妃様のお陰でこの国は間違いなくいい方向に進んでいる。多少の犠牲はやむを得ないさ」
「王妃が旧帝国と繋がりを持っていたのは明らかだ。腐敗竜が現れた時、あんた達は何もしなかった。そのせいでどれだけの人間が犠牲になったと思っている?」
「関係ないね」
旧帝国の件を持ち出してもミドルは顔色一つ変えず、二人の横を通り抜ける。そんな彼の態度に怒りを通り越して呆れてしまい、レナは背後を振り返って告げる。
「国よりも……あの王妃を取るのか」
「そうさ。僕にはあの方しかいない、あの方だけなんだ」
ミドルの迷いのない言葉にジャンヌは言葉を失い、レナは溜息を吐いて立ち去ろうとした時、背後からミドルの言葉が響く。
「観客席に向かうなら急いだ方が良い。僕の試合はそれほど長くはかからないからね」
自信満々に答えたミドルに二人は振り返ったが、既に彼は試合場に足を踏み入れ、門の扉が閉じられた――
「へえ、そんなサービスもあるのか」
「うっ……すいません、肩を貸して貰って……」
「いいって、ついでに武器も直しといたから」
ジャンヌに肩を貸しながらレナは試合場を後にすると、他の2人の選手も闘技場の兵士が運び出す。その光景を見て試合に敗れると兵士に身を任せない事を知り、決して油断できない事をレナは悟る。
(試合が終わっても油断は出来ないな。用心しないと……)
負傷したジャンヌを連れて試合場の北門から通路に出ると、レナの前に少し前に顔を合わせた人物が現れた。
「やあっ」
「あっ……ミドル、さん?」
「さん付けはいらないさ。呼び捨てで構わないよ」
姿を現したのは異様なまでに長い槍を身に付けた大将軍のミドルであり、全長は4メートルは軽く超える槍を掲げながら笑いかける。特に敵意や殺気は感じられないが、試合場で待機せずに通路で待ち構えていた彼にレナは警戒心を抱く。
「どうしてここに?」
「君と少し話をしたかったんだが……その子は友達かい?治療が必要なら治療室に行くといいよ」
「平気です。レナ様から回復魔法を施されているので……」
「無理するなって……」
ジャンヌがミドルの言葉に反応すると、彼は苦笑いを浮かべながら道を開け、槍で行き先を示す。
「この先の通路を真っすぐに行くと上の階段に続くけど、そこには兵士が待機している。途中で別の通路があるからそこから迂回するといいよ」
「……どういう意味ですか?」
「信じられないなら僕の言葉は無視してもいい。だけどね、僕としてはレナ君にはこんな所で試合に出られないようなるのは困るんだよ」
「言っている意味がよく分からないけど?」
ミドルの発言にレナは不思議に思うと、彼は神妙な表情を浮かべ、自分の目的を話す。
「僕はね、ずっと王国に仕えてきたんだよ。もう20年以上もね」
「えっ……ちょっと待ってください。貴方、何歳ですか?」
「今年で42だけど……?」
「いや、外見若すぎでしょ!!」
どう見ても外見は20代半ばにしか見えないにも関わらず、ミドルの実年齢は40才を超えているという話にレナは驚く。そんな彼の言葉にミドルは苦笑いを浮かべ、自分の腕を見つめる。
「僕が大将軍に任命されてから18年……君が生まれる前から僕はこの国を支えてきたんだよ。だけどね、本当の事を言うと僕が忠誠を誓っているのは王国じゃないんだ」
「それは……どういう意味ですか?大将軍が王国に忠誠を誓っていないなんて……」
「レミアが怒りそうな発言ですね」
「レミア君か……彼女は本当に凄いね。僕の年齢の半分も生きていないのに、僕よりも立派な軍人だ」
堂々と王国に忠誠を誓っていないと告げたミドルにジャンヌは戸惑うが、レナは驚かない。最初に会った時からこの人物は油断ならないと剣鬼の本能が告げており、彼が忠誠を誓う人物を問い質す。
「貴方の忠誠を誓っている相手は……王妃ですか?」
「……そうさ、僕はあの方のために生きている。最初に彼女と出会った時から僕の人生は彼女に全てを捧げるためにあると思った」
「えっ……」
ミドルの言葉にジャンヌは目を見開き、その言葉はまるで王妃に忠誠を誓うというよりは彼女に思慕を抱いているようにしか見えなかった。しかし、王妃は形式上は国王の妻であり、彼は自分の恋敵の配下として20年以上も仕えていたことになる。
「ああ、勘違いしないで欲しいだけど僕は別に国王様に不満があるわけじゃない。あの方の事を嫌っているわけじゃないよ。先王の時代から色々と気を配ってくれたからね。それに僕は王妃様と恋仲になりたいわけじゃないんだ……ただ、あの方の傍に何時までも仕えていたい、そう思うんだ」
「そのためにどれだけの人間を苦しめてもいいの?王妃の行動で一体何人の人間が犠牲になった?」
レナは王妃の犯した罪を突きつけると、ミドルも流石に眉を顰めるが、それは王妃の犯した悪行の罪悪感からではなく、彼女の事を侮辱されたと感じたからだ。
「王妃様のお陰でこの国は間違いなくいい方向に進んでいる。多少の犠牲はやむを得ないさ」
「王妃が旧帝国と繋がりを持っていたのは明らかだ。腐敗竜が現れた時、あんた達は何もしなかった。そのせいでどれだけの人間が犠牲になったと思っている?」
「関係ないね」
旧帝国の件を持ち出してもミドルは顔色一つ変えず、二人の横を通り抜ける。そんな彼の態度に怒りを通り越して呆れてしまい、レナは背後を振り返って告げる。
「国よりも……あの王妃を取るのか」
「そうさ。僕にはあの方しかいない、あの方だけなんだ」
ミドルの迷いのない言葉にジャンヌは言葉を失い、レナは溜息を吐いて立ち去ろうとした時、背後からミドルの言葉が響く。
「観客席に向かうなら急いだ方が良い。僕の試合はそれほど長くはかからないからね」
自信満々に答えたミドルに二人は振り返ったが、既に彼は試合場に足を踏み入れ、門の扉が閉じられた――
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