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闘技祭 決戦編
閑話 〈マリアの苦労〉
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――時刻は現在に戻り、マリアは闘技場に赴かずに冒険都市に残っていた。彼女は自分のギルドの自室にて二人の人物と顔を合わせていた。普段は冷静沈着で大事が起きても滅多に取り乱さないマリアではあるが、目の前の二人を相手にしていると表情を曇らせ、頬を引く付かせながら質問する。
「それで……今回の件はどういう事かしら。バル……それと姉さん」
「えっと……何から説明すればいいのかしら」
「あはははっ……すいませんでした」
マリアの視界には困惑した表情を浮かべるアイラと顔色が悪いバルが存在した。少し前までは顔を合わせる度に悪態を吐いていたバルも今回ばかりは自分に非がある事は自覚しており、素直に謝罪の言葉を口にする。そんな彼女の姿を見てマリアは深い溜息を吐き出し、事に至った経緯を問い質す。
「どうして姉さんが闘技祭に参加していたのかを教えて貰おうかしら?いえ、だいたいの予想は出来ているのだけど、御二人の口から教えて貰いたいわね」
「マリア、バルちゃんを怒らないで!!全部私が悪いの!!」
「ちょ、その言い方だとあたしの方が悪人に聞こえるんですけど!?」
「いいから説明しなさい!!」
アイラの発言にバルが慌てて言い繕うが、マリアは珍しく怒気を滲ませて怒鳴りつけると二人は叱られた小さな子供のように大人しく座る。その様子を見ながらマリアは頭を抑え、最初にアイラから話を伺う。
「まずは姉さんから答えて貰うわ。色々と聞きたい事はあるのだけど、最初にこれだけは聞かせて頂戴……どうしてよりにもよってあの衣装を選んだの!!」
「えっ!?」
「あ~……やっぱりそこだよな」
マリアの発言にアイラは意表を突かれた表情を浮かべるが、隣に座っているバルも彼女の来た衣装に関しては思うところがあり、この際に尋ねる。
「あの、あたしからも聞きたかったんですけど、どうしてアイラの姐さんはあの鎧を選んだんですか?正直、昔から不思議に思っていたんですけど何であんなに露出の多い鎧を着てたんですか?」
闘技祭に赴いた時のアイラが装着していたのは所謂「ビキニアーマー」であり、露出度が激しい鎧だった。全身の大部分の肌を晒すので鎧としては防御の面がお世辞にも高いとは言えず、外見の方も良く言えば見栄えが良く、悪く言えば装着する人間の羞恥心を計る鎧である。優れた点があるとすれば動きやすいという事だが、そもれも鎧なので下着や衣服と比べると重量が大きく、速度を重視するのならば軽量の皮鎧を身に付けた方が効率的に思われるが、アイラは堂々と言い放つ。
「勿論、あれじゃないと私が本気で動けないからよ!!普通の金属や皮製の鎧だと動きにくいから駄目なの!!」
「いや、でもアイラさんぐらいの身体能力なら別に普通の鎧でも問題ないんじゃ……」
「そうよ。実際の姉さんも一時期は普通の鎧を身に付けて行動していた事もあったじゃない?」
「あの時はあの人が無暗に肌を晒さないで欲しいと願ったから仕方なく普通の鎧を身に付けていただけよ。でも、やっぱりあの鎧じゃないと本気を出せないのが身に染みて分かったわ……これから戦う時はやっぱりあの鎧に限るわね!!」
「姉さん……お願いだからもう止めて」
「姐さん……」
既に40代を迎えている年齢に至ってもアイラはビキニアーマー以外の装備を身に付ける事を嫌い、今後もビキニアーマーのみを装着することを宣言する。そんな彼女に妹であるマリアは顔を抑え、バルも頭を抑えられずにはいられない。
(不味いわ……若い頃の姉さんならまだ受け入れられたけど、今の年齢になってもあの恰好で戦う姉さんを他の人間が注目するのがこんなにも恥ずかしいなんて……バル、どうして貴方は止めなかったの!!)
(うわ、そんな目で見るなよ……あたしだって頑張って説得しようとしたんだよ!!でも、この人にお願いされると昔から断れないのは知ってるだろ!?)
マリアとバルは視線を交わすだけでお互いの考えている事を読み取り、長年の間どちらもアイラの起こす問題に度々悩まされていた。しかし、今回ばかりはアイラの行動を咎めない訳にはいかない
「とにかく!!今後姉さんは私のギルドで大人しくしてもらうわ!!これ以上の勝手な行動は許さないわよ!!」
「でもマリア!!私はどうしてもあの人と……」
「言い訳は聞かないわ!!もしも姉さんに何かあったらレナはどうなるの!?あの子は今でも姉さんの事を心配しているのよ!!」
「ううっ……」
レナの名前を出すと流石のアイラも反論出来ず、彼女としても正体を隠さずにレナと再会したいと考えている。しかし、アイラはどうしてもレナと出会う前に国王と話をしたいと考えていた。
「駄目!!やっぱりまだレナちゃんと会えないわ!!私はあの人ともう一度ちゃんと話し合いたいの!!」
「聞き分けがないわね!!もうあの男の事は諦めなさい!!」
「駄目よ!!きっと話し合えば分かり合えるはずなの!!」
「そういいながらレナが殺されたと勘違いして国王に殴り込みをかけた癖に!!」
「あ、あの時は冷静さを失っていたから……それにあの人だってきっと反省しているはずよ!!」
「ああ、もう……落ち着いて下さいよ二人とも!!」
姉妹喧嘩を始めた二人をバルは必死に宥め、昔から仲の良い姉妹ではあったが意見が食い違うと延々と誰かに止められるまで言い争いを続けるため、いつもバルを筆頭に彼女達の仲間が苦労していた。しかし、今回ばかりはアイラとマリアもお互いに引く気はなく、同時に立ち上がる。
「もういいわ!!それなら久しぶりに手合せを行いましょう!!勝った方が相手のお願い事を聞くの!!」
「構わないわ!!久しぶりに姉さんを叩きのめしてあげるわ!!」
「あら!?今までの戦績は私の方が上のはずよ!!」
「寝ぼけないで頂戴!!108戦54勝54敗で引き分けよ!!でも、今日の勝負で私が勝ち越しになるでしょうね!!」
「言ってくれるわねマリア!!久しぶりに貴女の泣き顔が見れそうで楽しみだわ!!」
「ちょ、何言ってんだあんたら!?英雄の領域に至った人間同士の決闘なんて……え、ちょっ、ここで始める気かい!?待って、あたしは無関係……うわあああああっ!?」
――数秒後、冒険者ギルドに存在した人間は地震が起きたのかと錯覚するほどの建物内に激しい振動が伝わった。
「それで……今回の件はどういう事かしら。バル……それと姉さん」
「えっと……何から説明すればいいのかしら」
「あはははっ……すいませんでした」
マリアの視界には困惑した表情を浮かべるアイラと顔色が悪いバルが存在した。少し前までは顔を合わせる度に悪態を吐いていたバルも今回ばかりは自分に非がある事は自覚しており、素直に謝罪の言葉を口にする。そんな彼女の姿を見てマリアは深い溜息を吐き出し、事に至った経緯を問い質す。
「どうして姉さんが闘技祭に参加していたのかを教えて貰おうかしら?いえ、だいたいの予想は出来ているのだけど、御二人の口から教えて貰いたいわね」
「マリア、バルちゃんを怒らないで!!全部私が悪いの!!」
「ちょ、その言い方だとあたしの方が悪人に聞こえるんですけど!?」
「いいから説明しなさい!!」
アイラの発言にバルが慌てて言い繕うが、マリアは珍しく怒気を滲ませて怒鳴りつけると二人は叱られた小さな子供のように大人しく座る。その様子を見ながらマリアは頭を抑え、最初にアイラから話を伺う。
「まずは姉さんから答えて貰うわ。色々と聞きたい事はあるのだけど、最初にこれだけは聞かせて頂戴……どうしてよりにもよってあの衣装を選んだの!!」
「えっ!?」
「あ~……やっぱりそこだよな」
マリアの発言にアイラは意表を突かれた表情を浮かべるが、隣に座っているバルも彼女の来た衣装に関しては思うところがあり、この際に尋ねる。
「あの、あたしからも聞きたかったんですけど、どうしてアイラの姐さんはあの鎧を選んだんですか?正直、昔から不思議に思っていたんですけど何であんなに露出の多い鎧を着てたんですか?」
闘技祭に赴いた時のアイラが装着していたのは所謂「ビキニアーマー」であり、露出度が激しい鎧だった。全身の大部分の肌を晒すので鎧としては防御の面がお世辞にも高いとは言えず、外見の方も良く言えば見栄えが良く、悪く言えば装着する人間の羞恥心を計る鎧である。優れた点があるとすれば動きやすいという事だが、そもれも鎧なので下着や衣服と比べると重量が大きく、速度を重視するのならば軽量の皮鎧を身に付けた方が効率的に思われるが、アイラは堂々と言い放つ。
「勿論、あれじゃないと私が本気で動けないからよ!!普通の金属や皮製の鎧だと動きにくいから駄目なの!!」
「いや、でもアイラさんぐらいの身体能力なら別に普通の鎧でも問題ないんじゃ……」
「そうよ。実際の姉さんも一時期は普通の鎧を身に付けて行動していた事もあったじゃない?」
「あの時はあの人が無暗に肌を晒さないで欲しいと願ったから仕方なく普通の鎧を身に付けていただけよ。でも、やっぱりあの鎧じゃないと本気を出せないのが身に染みて分かったわ……これから戦う時はやっぱりあの鎧に限るわね!!」
「姉さん……お願いだからもう止めて」
「姐さん……」
既に40代を迎えている年齢に至ってもアイラはビキニアーマー以外の装備を身に付ける事を嫌い、今後もビキニアーマーのみを装着することを宣言する。そんな彼女に妹であるマリアは顔を抑え、バルも頭を抑えられずにはいられない。
(不味いわ……若い頃の姉さんならまだ受け入れられたけど、今の年齢になってもあの恰好で戦う姉さんを他の人間が注目するのがこんなにも恥ずかしいなんて……バル、どうして貴方は止めなかったの!!)
(うわ、そんな目で見るなよ……あたしだって頑張って説得しようとしたんだよ!!でも、この人にお願いされると昔から断れないのは知ってるだろ!?)
マリアとバルは視線を交わすだけでお互いの考えている事を読み取り、長年の間どちらもアイラの起こす問題に度々悩まされていた。しかし、今回ばかりはアイラの行動を咎めない訳にはいかない
「とにかく!!今後姉さんは私のギルドで大人しくしてもらうわ!!これ以上の勝手な行動は許さないわよ!!」
「でもマリア!!私はどうしてもあの人と……」
「言い訳は聞かないわ!!もしも姉さんに何かあったらレナはどうなるの!?あの子は今でも姉さんの事を心配しているのよ!!」
「ううっ……」
レナの名前を出すと流石のアイラも反論出来ず、彼女としても正体を隠さずにレナと再会したいと考えている。しかし、アイラはどうしてもレナと出会う前に国王と話をしたいと考えていた。
「駄目!!やっぱりまだレナちゃんと会えないわ!!私はあの人ともう一度ちゃんと話し合いたいの!!」
「聞き分けがないわね!!もうあの男の事は諦めなさい!!」
「駄目よ!!きっと話し合えば分かり合えるはずなの!!」
「そういいながらレナが殺されたと勘違いして国王に殴り込みをかけた癖に!!」
「あ、あの時は冷静さを失っていたから……それにあの人だってきっと反省しているはずよ!!」
「ああ、もう……落ち着いて下さいよ二人とも!!」
姉妹喧嘩を始めた二人をバルは必死に宥め、昔から仲の良い姉妹ではあったが意見が食い違うと延々と誰かに止められるまで言い争いを続けるため、いつもバルを筆頭に彼女達の仲間が苦労していた。しかし、今回ばかりはアイラとマリアもお互いに引く気はなく、同時に立ち上がる。
「もういいわ!!それなら久しぶりに手合せを行いましょう!!勝った方が相手のお願い事を聞くの!!」
「構わないわ!!久しぶりに姉さんを叩きのめしてあげるわ!!」
「あら!?今までの戦績は私の方が上のはずよ!!」
「寝ぼけないで頂戴!!108戦54勝54敗で引き分けよ!!でも、今日の勝負で私が勝ち越しになるでしょうね!!」
「言ってくれるわねマリア!!久しぶりに貴女の泣き顔が見れそうで楽しみだわ!!」
「ちょ、何言ってんだあんたら!?英雄の領域に至った人間同士の決闘なんて……え、ちょっ、ここで始める気かい!?待って、あたしは無関係……うわあああああっ!?」
――数秒後、冒険者ギルドに存在した人間は地震が起きたのかと錯覚するほどの建物内に激しい振動が伝わった。
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