不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ

文字の大きさ
303 / 2,091
闘技祭 決戦編

初級魔術師とは

しおりを挟む
――観客席にて最後の試合を見届けた4人は黙り込み、レナは自分に視線が集まっている事に気付く。顔を向けると全員が困惑した表情を浮かべており、意を決したようにダインが口を開く。


「なあ、レナ……さっきのアルミナが使っていた魔法ってさ」
「俺の初級魔法と同じだね」
「……だと思ったわ」


アルミナが使用した魔法は間違いなく「氷塊」であり、レナも多用している初級魔法である。初級魔法は誰もが扱える魔法ではあるが、魔法の熟練度を上昇させる事で真価を発揮し、砲撃魔法にも劣らない強力な魔法へと変貌する。但し、レナとアルミナの場合は同じ初級魔法でも使い方が異なっていた。


「俺の場合は初級魔法は戦闘の補助に利用するけど、アルミナの場合は完全に魔法の力だけで戦っていたね。正直、あの氷の鎖を利用して一瞬で相手を拘束するなんて器用な真似は俺には出来ないかも」
「じゃあ、アルミナはレナ以上に初級魔法を扱えるのか?」
「だろうね。正直、俺以外に初級魔法を戦闘に利用する人なんて初めて見たよ」
「アルミナは初級魔術師よ」


レナの言葉を聞いたシズネがアルミナの職業を明かし、彼女は自分が知る限りのアルミナの情報を説明する。


「アルミナ・レスト……王国貴族のレスト家の一人娘だけど、冒険者として活動している変わり者、というのが世間の評判ね。勘当されたという話は聞いた事がないけど、両親との関係はあまり良いとは言えないらしいわ。だけど、希少な初級魔術師の職業の人間よ」
「初級魔術師?」


あまり聞きなれない単語の職業にレナは疑問を抱き、どのような職業なのかシズネに尋ねようとしたが、先にダインが答えた。


「……初級魔術師というのは文字通りに初級魔法しか扱えない魔術師なんだよ。だけど、魔術師の中では魔力容量は支援魔術師に次いで多いし、それに初級魔法しか扱えない代わりに魔法の熟練度の上昇率も高いし、普通の魔術師と比べればレベルも上がりやすい職業だよ」
「……く、詳しいのね」
「別にこれぐらい普通だろ……ちなみに冒険都市の名前が「ルノ」なのは大昔に召喚された異世界人の英雄の名前からとったんだけど、このルノというのが実は初級魔術師の職業なんだよ。でも、初級魔術師は「固有職」の人間にしか覚えられないからアルミナは他に職業は覚えていない事になるな」
「へえっ……そうなんだ」


ダインの説明にレナは初級魔術師の職業を理解すると、アルミナが初級魔法を巧みに操った理由を悟る。彼女もレナと同様に普通の魔術師が扱う「砲撃魔法」を覚えられないらしく、初級魔法の応用で戦闘を勝ち抜いた理由が判明した。しかし、初級魔術師が初級魔法しか扱えないのならばレナの支援魔術師よりも不遇な扱いを受けそうだが、ダインとシズネによると初級魔術師の職業の人間は重宝されているらしい。


「本当に初級魔法しか扱えないの?他の魔法は?」
「だから言っただろ?初級魔術師は固有職の人間にしか覚えられない、つまりは他の魔術師の職業を習得できないから本当に初級魔法だけしか覚えられないんだって!!だけど、それを補って余りある程の能力を持っているから凄いんだよ!!」
「初級魔法の事なら貴方の方が詳しいでしょう?誰にでも扱える魔法でも、使い方によっては強力な攻撃に利用できるの」
「まあ、確かに」


一概にも初級魔法と言っても組み合わせによっては強力な効果を発揮する事も多く、実際にレナが普段から使用する「合成魔術」が良い例である。初級魔法の最大の利点は応用性の高さであり、各属性の魔法を組み合わせる事で砲撃魔法にも匹敵する強力な魔法を生み出す事も出来る。そして初級魔術師とは初級魔法のみに特化した優れた職業である。


「普通の人間と初級魔術師の扱う初級魔法はそもそも性能が大きく異なるわ。そもそも一流の魔術師だとしても貴方やアルミナのように初級魔法を巧みに扱える人間なんて存在しないわよ」
「そんなに難しいかな?誰でも練習すれば出来ると思うけど」
「無理に決まっているでしょう。それは貴方が特別なだけよ」
「ちなみに僕の闇魔術師も闇属性の魔法しか使えないよ……くそっ、理不尽だな」


闇魔術師の場合は闇属性の魔法は全て習得する事が出来るが、他の属性の魔法は一切扱えない。なので支援魔術師のように不遇職扱いを受けてもおかしくはないが、実際の所はダインの扱う「影魔法」のように魔物との戦闘では役立つ場面も多く、能力的に他の魔術師に劣っているわけではない。


「つまり普通の人間はアルミナや俺のように初級魔法の応用は出来ない、という事でいいの?」
「ええ、そういう解釈で間違ってはいないわ」
「やはりレナは凄いな……魔法が使えない俺には羨ましい話だ」


基本的にゴンゾウのような巨人族は魔法を不得手としており、巨人族の魔術師というのは存在しない。しかし、彼等の場合は魔法を利用する魔力を肉体の強化に利用しているからこそ巨人族は強靭で巨大な肉体に成長するという説も存在する。


「……そろそろ戻りましょう。兵士に見つかったら何か言われるわよ、事件の参考人として同行してくれと頼まれる前に退散しましょう」
「そうだね。じゃあ、氷雨のギルドに戻ろうか」
「レナ、俺は一度自分のギルドに戻る。ギガンさんから顔を出すように言われたからな」
「分かった。気を付けて帰ってね」


ゴンゾウは一足先に立ち去り、残った3人は兵士に見つからないように冒険都市へ戻る事にした――
しおりを挟む
感想 5,095

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

離婚する両親のどちらと暮らすか……娘が選んだのは夫の方だった。

しゃーりん
恋愛
夫の愛人に子供ができた。夫は私と離婚して愛人と再婚したいという。 私たち夫婦には娘が1人。 愛人との再婚に娘は邪魔になるかもしれないと思い、自分と一緒に連れ出すつもりだった。 だけど娘が選んだのは夫の方だった。 失意のまま実家に戻り、再婚した私が数年後に耳にしたのは、娘が冷遇されているのではないかという話。 事実ならば娘を引き取りたいと思い、元夫の家を訪れた。 再び娘が選ぶのは父か母か?というお話です。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。