文字の大きさ
大
中
小
308 / 2,093
闘技祭 決戦編
連れ去られる王子
「き、貴様……僕をどうする気だ?」
「あら、まだ意識が残っていたの。でも、説明をする時間はないから寝ていなさい」
「うっ……」
ホブゴブリンに抱えられていた王子がにキラウに問い質すと、彼女は王子の顔の前に掌を近づけただけで王子の意識を断つ。その光景を目撃したジダンは身体を拘束されながらもキラウに襲い掛かろうとしていたが、徐々に力が抜けていく。
「ぐううっ……!?」
「大した男ね。私の黒蛇に絡みつかれて魔力を根こそぎ奪われているはずなのにまだ意識があるの……でも、ここまでよ」
「待てっ!!」
ジダンに止めを刺すためにキラウが杖を構えた瞬間、馬車から国王とノルが現れる。二人は拘束された騎士達と連れ去れられる王子を見て血相を変え、キラウに怒鳴りつける。
「儂の息子を何処へ連れて行く気だ!!」
「お兄様を離しなさいっ!!」
「あら……美しい家族愛ね」
デブリとノルは両手を構えて風の精霊を呼び寄せ、攻撃態勢に入る。しかし、そんな二人を見てキラウは嘲笑うように杖を構えて魔法を放つ。
「でも時間切れよ。今回は貴女達に用はないの……本当はあの王女の方が使い道が多そうだったのに」
「何だと!?」
「お待ちなさいっ!!」
「私に命令するなっ!!」
キラウの言葉を聞いてデブリとノルは魔法を発動させようとしたが、先にキラウは杖先から大量の黒霧を放出し、煙幕のように馬車を取り囲む。黒霧に覆われた二人は激しく咳き込み、折角集めた風の精霊が四散してしまう。
「くっ……アルン!!」
「お兄様ぁっ……!!」
「ふぐぅうっ……!?」
デブリ、ノル、ジダンの虚しい叫び声が黒霧の中から響き渡り、キラウは笑い声を上げながらその場を立ち去った――
――時刻は少し前に遡り、闘技場では各国の代表が集まって宴を行っていた。その中には試合に参加した選手の姿もあり、闘技場に配備されていた治癒魔導士の治療を受けて完全に回復していた。
「済まねえタイガさん……全力は尽くしたつもりだが、まさか予選で負けるなんて……」
「がはははっ!!何を言っている、いい試合だったぞ!!」
「グガン様、申し訳ありません」
「おおっ……見事な試合だったぞゴウよ」
予選試合ではゴウライとリンダに敗れたタイガとゴウは自国の国王の前で跪き、謝罪を行う。しかし、二人の王は特に気にした風もなく二人を労う。バルトロス国王の前にも試合で勝ち抜いたミドルとレミアが跪き、二人に盃を授ける。
「ミドル、レミアよ。よくぞ強敵を打ち破り、試合を勝ち抜いたな。これは褒美じゃ、受け取るがいい」
「あ、ありがとうございます」
「……感謝致します」
グラスに注がれたワインに二人は受け取り、その場で飲み干す。その様子を離れた場所から剣聖のハヤテが見守り、彼女の姿を見かけた国王は疑問を抱く。
「ところでどうしてあのような子供が宴に参加しているのだ?誰が招いたのだ?」
「あの方は剣聖のハヤテ様です。王妃様の知人らしく、この場に招待しました」
「ぬっ……そうか、サクラが呼んだのか」
王妃の名前が出た瞬間に国王の表情が一瞬だけ歪むが、すぐに何事もなかったように振舞う。国王は周囲を見渡し、肝心の自分の家族を探す。
「そう言えばサクラとナオはどうしたのだ?どうして姿を見せん?」
「王妃様は間もなく訪れるはずです。ナオ様に関しては体調を崩したらしく、この場には居合わせておりません」
「何!?ナオは無事なのか?」
「ご安心ください。今は闘技場の治癒魔導士が様子を見ているはずです」
「安心できん!!すぐに見舞いに行かなければ……」
「え~お父様、何処へ行くの?」
ナオが体調を崩したと聞いて国王は彼女の元へ向かおうとしたが、二人の少女が国王の前に立ちふさがる。その姿を見た瞬間、国王は表情を緩めて二人を抱き寄せる。
「おおっ……お主達も来てくれたのか」
「当然ですわ。お父様が開いてくれた宴ですもの」
「もう料理食べていいの?」
ナオの妹であり、前王の子供であるシオンとリアナが現れるとバルトロス国王は機嫌を直し、二人を歓迎する。シオンとリアナは国王の両腕を掴むと、何処にも行かせないとばかりに微笑む。
「お姉様なら大丈夫ですよ。さっき、顔を合わせましたけどもう気分も良さそうでした」
「後で迎えに来てくれるって言ってたよ?」
「そうかそうか、ではお主達を他の者に紹介しよう。付いてきなさい」
双子の娘の話を聞いて国王は思い直し、各国の国王の元へ二人を招く。その様子を見ていたミドルにシオンが振り返り、黙って首を頷く。それを確認したミドルは礼を告げるように両手を合わせ、隣に立っているレミアに声を掛ける。
「さて……レミア君。君に色々と聞きたいことがある」
「……何でしょうか?」
「そんなに警戒しなくていいよ。僕等は同じ大将軍じゃないか……遠慮はいらないさ」
口調は穏やかだが、逃がさないとばかりにミドルは目つきを鋭くさせてレミアを睨みつける。しかし、宴の席では武器の持ち込みは禁止されており、今現在のミドルは槍を装備していない。一方でレミアの場合は魔鎧術を利用すればあらゆる武器を作り出して対応出来るため、生身の状態ではレミアが圧倒的に有利だった。
「あら、まだ意識が残っていたの。でも、説明をする時間はないから寝ていなさい」
「うっ……」
ホブゴブリンに抱えられていた王子がにキラウに問い質すと、彼女は王子の顔の前に掌を近づけただけで王子の意識を断つ。その光景を目撃したジダンは身体を拘束されながらもキラウに襲い掛かろうとしていたが、徐々に力が抜けていく。
「ぐううっ……!?」
「大した男ね。私の黒蛇に絡みつかれて魔力を根こそぎ奪われているはずなのにまだ意識があるの……でも、ここまでよ」
「待てっ!!」
ジダンに止めを刺すためにキラウが杖を構えた瞬間、馬車から国王とノルが現れる。二人は拘束された騎士達と連れ去れられる王子を見て血相を変え、キラウに怒鳴りつける。
「儂の息子を何処へ連れて行く気だ!!」
「お兄様を離しなさいっ!!」
「あら……美しい家族愛ね」
デブリとノルは両手を構えて風の精霊を呼び寄せ、攻撃態勢に入る。しかし、そんな二人を見てキラウは嘲笑うように杖を構えて魔法を放つ。
「でも時間切れよ。今回は貴女達に用はないの……本当はあの王女の方が使い道が多そうだったのに」
「何だと!?」
「お待ちなさいっ!!」
「私に命令するなっ!!」
キラウの言葉を聞いてデブリとノルは魔法を発動させようとしたが、先にキラウは杖先から大量の黒霧を放出し、煙幕のように馬車を取り囲む。黒霧に覆われた二人は激しく咳き込み、折角集めた風の精霊が四散してしまう。
「くっ……アルン!!」
「お兄様ぁっ……!!」
「ふぐぅうっ……!?」
デブリ、ノル、ジダンの虚しい叫び声が黒霧の中から響き渡り、キラウは笑い声を上げながらその場を立ち去った――
――時刻は少し前に遡り、闘技場では各国の代表が集まって宴を行っていた。その中には試合に参加した選手の姿もあり、闘技場に配備されていた治癒魔導士の治療を受けて完全に回復していた。
「済まねえタイガさん……全力は尽くしたつもりだが、まさか予選で負けるなんて……」
「がはははっ!!何を言っている、いい試合だったぞ!!」
「グガン様、申し訳ありません」
「おおっ……見事な試合だったぞゴウよ」
予選試合ではゴウライとリンダに敗れたタイガとゴウは自国の国王の前で跪き、謝罪を行う。しかし、二人の王は特に気にした風もなく二人を労う。バルトロス国王の前にも試合で勝ち抜いたミドルとレミアが跪き、二人に盃を授ける。
「ミドル、レミアよ。よくぞ強敵を打ち破り、試合を勝ち抜いたな。これは褒美じゃ、受け取るがいい」
「あ、ありがとうございます」
「……感謝致します」
グラスに注がれたワインに二人は受け取り、その場で飲み干す。その様子を離れた場所から剣聖のハヤテが見守り、彼女の姿を見かけた国王は疑問を抱く。
「ところでどうしてあのような子供が宴に参加しているのだ?誰が招いたのだ?」
「あの方は剣聖のハヤテ様です。王妃様の知人らしく、この場に招待しました」
「ぬっ……そうか、サクラが呼んだのか」
王妃の名前が出た瞬間に国王の表情が一瞬だけ歪むが、すぐに何事もなかったように振舞う。国王は周囲を見渡し、肝心の自分の家族を探す。
「そう言えばサクラとナオはどうしたのだ?どうして姿を見せん?」
「王妃様は間もなく訪れるはずです。ナオ様に関しては体調を崩したらしく、この場には居合わせておりません」
「何!?ナオは無事なのか?」
「ご安心ください。今は闘技場の治癒魔導士が様子を見ているはずです」
「安心できん!!すぐに見舞いに行かなければ……」
「え~お父様、何処へ行くの?」
ナオが体調を崩したと聞いて国王は彼女の元へ向かおうとしたが、二人の少女が国王の前に立ちふさがる。その姿を見た瞬間、国王は表情を緩めて二人を抱き寄せる。
「おおっ……お主達も来てくれたのか」
「当然ですわ。お父様が開いてくれた宴ですもの」
「もう料理食べていいの?」
ナオの妹であり、前王の子供であるシオンとリアナが現れるとバルトロス国王は機嫌を直し、二人を歓迎する。シオンとリアナは国王の両腕を掴むと、何処にも行かせないとばかりに微笑む。
「お姉様なら大丈夫ですよ。さっき、顔を合わせましたけどもう気分も良さそうでした」
「後で迎えに来てくれるって言ってたよ?」
「そうかそうか、ではお主達を他の者に紹介しよう。付いてきなさい」
双子の娘の話を聞いて国王は思い直し、各国の国王の元へ二人を招く。その様子を見ていたミドルにシオンが振り返り、黙って首を頷く。それを確認したミドルは礼を告げるように両手を合わせ、隣に立っているレミアに声を掛ける。
「さて……レミア君。君に色々と聞きたいことがある」
「……何でしょうか?」
「そんなに警戒しなくていいよ。僕等は同じ大将軍じゃないか……遠慮はいらないさ」
口調は穏やかだが、逃がさないとばかりにミドルは目つきを鋭くさせてレミアを睨みつける。しかし、宴の席では武器の持ち込みは禁止されており、今現在のミドルは槍を装備していない。一方でレミアの場合は魔鎧術を利用すればあらゆる武器を作り出して対応出来るため、生身の状態ではレミアが圧倒的に有利だった。
感想 5,097
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
『ベルンハルト・フォン・バーデンは平穏に暮らしたい』
GamaFrog男爵家三男、ベルンハルト・フォン・バーデン。
家督継承権はなく、本来ならどこかの官職に就くか、他家へ仕えるか、婿入りするか――そんな将来が待っているはずだった。
しかしベルは少しだけ優秀すぎた。
小遣い稼ぎのつもりで始めた商売は成功し、気付けば父親より金を持ち、長男より領地経営に詳しく、次男より商売が上手くなっていた。
本人に出しゃばる気はない。
ただ普通に生きていただけだ。
それでも、優秀すぎる三男の存在は家族との距離を少しずつ広げていった。
家に居場所がなくなった。
だからベルは学園へ来た。
貴族だから一応入学した。
家にいるより気楽だったから。
静かに暮らしたかったから。
寄付金を積んで手に入れた広い寮部屋で、本を読み、昼寝をし、卒業後は適当な文官になって平穏に生きる
そのはずだった。
だが現実は違った。
男装令嬢に懐かれ。
王太子に目を付けられ。
商会には囲い込まれ。
気付けば平穏はどこへやら。
本人はただ平穏に暮らしたいだけ。
周囲はなぜか放っておいてくれない。
これは、面倒事を嫌う規格外の天才が、静かな人生を目指して失敗し続ける物語である。
私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました
放浪人政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。
だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。
「彼女は可哀想なんだ」
「この子を跡取りにする」
そして人前で、平然と言い放つ。
――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」
その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。
「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」
【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する
エース皇命【HOTランキング1位獲得作品!!】
最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。
戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。
目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。
ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!
彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!!
※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中
異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?
すずなり。ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。
一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。
「俺とデートしない?」
「僕と一緒にいようよ。」
「俺だけがお前を守れる。」
(なんでそんなことを私にばっかり言うの!?)
そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。
「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」
「・・・・へ!?」
『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!?
※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。
※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。
ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。
真の皇帝は俺です ~面倒だから幼なじみに帝位を任せていたら、婚約者に捨てられました。正体を明かしたら全員後悔してももう遅い~
由香皇帝の仕事が面倒だったレインは、信頼する幼なじみアレクシスに表向きの皇帝を任せ、自身は陰から帝国を支えていた。
だがある日、婚約者エミリアは「権力も将来性もない」と彼を見限り婚約破棄を宣言する。
しかし彼女は知らなかった。
帝国を動かしていた真の支配者が誰なのかを。
これは全てを持ちながら隠していた男と、見るべきものを見失った者たちの後悔の物語。
クラス全員で異世界召喚されたが、俺だけ教室に取り残されたのでとりあえず帰宅した
中山(ほ) クラス全員で異世界召喚されたが、先生と俺が残っていた。
魔法もチートスキルもステータス画面すら表示されない、ただの「残され損」
異世界に行けなかった俺を待っていたのは、世知辛い現実だった。
AI使用状況
GoogleのGeminiさん使ってます〜
誤字脱字チェックと調べ物お願いしてます
99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える
ハーフのクロエ 夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。
主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。