文字の大きさ
大
中
小
314 / 2,093
都市崩壊編
まさかのゲイン(変装)
(……急ごしらえの変装だけど、どうやらばれていないな)
混乱しているパイルを睨みつけながらもレナは周囲の人間に自分の正体がばれていない事に安堵する。服の裏に隠れていたスラミンとヒトミンの協力の元、レナは髪の毛と顔を変装してかつて自分と対峙した「ゲイン」に化けていた。
(前に遊びでスラミンとヒトミンを利用して変装した事があったけど、まさかよりにもよってこいつの顔に変装する事になるとは……)
ゲインの顔をスラミンとヒトミンに教えていた事が幸いし、幸いと言うべきかアイリスによればゲインの存在を知る人間は少ない。彼は旧帝国に所属する吸血鬼ではあったが、旧帝国は既に王妃の目論見で殆どの人員が死亡している。生き残った人間の中でゲインの存在を知っているとしたら彼を溺愛していたキラウ程度だろう。
「全く、僕は日焼けが嫌いなんでね。もう顔は確認したなら十分だろう?」
「そんな馬鹿な……しかし、確かにさっき見た時は……」
「団長?」
一流の傭兵であるパイルは「観察眼」や「遠視」さらには視覚系のスキルを強化する「視覚強化」と呼ばれているスキルを覚えており、彼は城壁の上からでもレナの存在を確認していた。だからこそ民衆の前で彼の正体を明かし、捕縛しようとしたが、スライムという隠し玉を偶然持っていたレナが上手だった。
「君達も僕の仲間に触るんじゃないよ!!いい加減に離してくれないか?」
「えっ?えっと……」
「……もういいでしょう。何時まで無関係の私達に武器を向けるつもりよ?」
口調まで出来る限りゲインに近づけてレナは兵士に囲まれた二人を解放するように指示すると、王国兵は戸惑った表情を浮かべてパイルに指示を仰ぐ。しかし、判断を委ねられたパイルは自分が見間違いしたとは信じられず、疑うようにレナに視線を向ける。
「……変装の可能性もある。このまま我々と共に来てくれようか」
「はっ!!変装だって?そんな事を言い出せば僕以外の人間だって十分怪しいじゃないかっ!!そんな理由で連行なんかされたらたまったものじゃないよ!!」
「そうだそうだ!!」
「兵士だからってなんでもしていいのかよ!?」
レナの煽るような発言に周囲の住民も賛同し、王国兵の対応に怒りを抱いていた民衆がパイルの行動を咎める。雲行きが怪しくなった王国兵は不安そうな表情を浮かべてパイルに視線を向けると、彼は深いため息を吐き出す。
「……ならばそのフードを全部脱いで貰おうか。もしも暗殺犯と同じ服装をしていた場合、お前が変装している証拠になるだろう」
「往生際が悪いね……男を脱がせる趣味があるなんて気持ち悪い」
「いいから見せるんだ!!」
予想していた言葉にレナは遭えて小馬鹿にするような表情を浮かべて大げさに振舞うと、いい加減に我慢の限界を迎えたパイルが腕を伸ばしてくる。しかし、それを待っていたとばかりにレナは突き出された右腕を掴み取り、パイルを睨みつける。
「やれやれ……今度は力尽くで抑えつけるつもりかい?」
「貴様……ぬ、ぐうっ!?」
「団長!?」
右腕を掴まれたパイルは苦痛の表情を浮かべ、恐ろしい握力で握りしめてくるレナを睨む。まるで万力に挟まれたように握りしめられる腕にパイルは目を見開き、レナは彼に聞こえる声量で囁く。
「弱虫」
「……き、さまぁっ!!」
「あっ!?」
パイルは怒りの表情を浮かべて左腕を振り翳し、レナの腹部に向けて拳を叩きこむ。その瞬間、腕に装着されていた破城槌のような武器も叩きこまれ、レナの肉体が後方に吹き飛ぶ。その光景を目撃した民衆は驚愕し、兵士に囲まれていたダインとシズネも反応する。
「なっ……お前、僕の友達に何てことするんだ!!」
「……どういうつもり?一般人に手を出すなんて……傭兵の恥晒しね」
「黙れ!!こいつが先に仕掛けたんだ……!?」
二人の言葉にパイルは言い返そうとしたが、周囲の人間が自分に見つめる視線に気付き、非常に不味い状況だと理解する。傍目から見れば傭兵であるパイルが明らかに力尽くで連行しようとした少年を唐突に殴りつけたとしか思えず、今まで黙っていた人間達も彼を罵倒した。
「おい!!何も殴る事はないじゃないか!!まだ子供だぞ!?」
「そうよ!!だいたいあんたが勝手に勘違いしただけじゃない!!」
「おい、大丈夫か坊主?怪我はないか?」
「うっ……」
「ち、違う!!俺は……」
倒れ込んだレナの元に民衆が集まり、パイルは必死に言い訳を考えるが既に状況はレナ達に味方しており、ダインとシズネを取り囲んでいた兵士達にも他の人間が詰め寄る。
「もういい加減にそっちの二人も離してやれよ!!友達が殴られてたんだぞ!?」
「さ、下がれ!!邪魔をするな!!」
「うわっ!?おい、こいつ今俺に刃を構えたぞ!!こんな横暴が許されるのか!?」
「何が王国兵だ!!だいたいお前等、肝心な時に何もしないくせにいちいち偉そうにしてんじゃねえっ!!」
冒険都市周辺の住民はバルトロス王国の兵士を嫌う傾向があり、理由としては腐敗竜が現れた時に王国は軍隊を派遣しなかった事が原因である。そのため、今回の王国兵の横暴も我慢できず、レナ達を取り囲む兵士を見て民衆も我慢の限界を迎えていた。
混乱しているパイルを睨みつけながらもレナは周囲の人間に自分の正体がばれていない事に安堵する。服の裏に隠れていたスラミンとヒトミンの協力の元、レナは髪の毛と顔を変装してかつて自分と対峙した「ゲイン」に化けていた。
(前に遊びでスラミンとヒトミンを利用して変装した事があったけど、まさかよりにもよってこいつの顔に変装する事になるとは……)
ゲインの顔をスラミンとヒトミンに教えていた事が幸いし、幸いと言うべきかアイリスによればゲインの存在を知る人間は少ない。彼は旧帝国に所属する吸血鬼ではあったが、旧帝国は既に王妃の目論見で殆どの人員が死亡している。生き残った人間の中でゲインの存在を知っているとしたら彼を溺愛していたキラウ程度だろう。
「全く、僕は日焼けが嫌いなんでね。もう顔は確認したなら十分だろう?」
「そんな馬鹿な……しかし、確かにさっき見た時は……」
「団長?」
一流の傭兵であるパイルは「観察眼」や「遠視」さらには視覚系のスキルを強化する「視覚強化」と呼ばれているスキルを覚えており、彼は城壁の上からでもレナの存在を確認していた。だからこそ民衆の前で彼の正体を明かし、捕縛しようとしたが、スライムという隠し玉を偶然持っていたレナが上手だった。
「君達も僕の仲間に触るんじゃないよ!!いい加減に離してくれないか?」
「えっ?えっと……」
「……もういいでしょう。何時まで無関係の私達に武器を向けるつもりよ?」
口調まで出来る限りゲインに近づけてレナは兵士に囲まれた二人を解放するように指示すると、王国兵は戸惑った表情を浮かべてパイルに指示を仰ぐ。しかし、判断を委ねられたパイルは自分が見間違いしたとは信じられず、疑うようにレナに視線を向ける。
「……変装の可能性もある。このまま我々と共に来てくれようか」
「はっ!!変装だって?そんな事を言い出せば僕以外の人間だって十分怪しいじゃないかっ!!そんな理由で連行なんかされたらたまったものじゃないよ!!」
「そうだそうだ!!」
「兵士だからってなんでもしていいのかよ!?」
レナの煽るような発言に周囲の住民も賛同し、王国兵の対応に怒りを抱いていた民衆がパイルの行動を咎める。雲行きが怪しくなった王国兵は不安そうな表情を浮かべてパイルに視線を向けると、彼は深いため息を吐き出す。
「……ならばそのフードを全部脱いで貰おうか。もしも暗殺犯と同じ服装をしていた場合、お前が変装している証拠になるだろう」
「往生際が悪いね……男を脱がせる趣味があるなんて気持ち悪い」
「いいから見せるんだ!!」
予想していた言葉にレナは遭えて小馬鹿にするような表情を浮かべて大げさに振舞うと、いい加減に我慢の限界を迎えたパイルが腕を伸ばしてくる。しかし、それを待っていたとばかりにレナは突き出された右腕を掴み取り、パイルを睨みつける。
「やれやれ……今度は力尽くで抑えつけるつもりかい?」
「貴様……ぬ、ぐうっ!?」
「団長!?」
右腕を掴まれたパイルは苦痛の表情を浮かべ、恐ろしい握力で握りしめてくるレナを睨む。まるで万力に挟まれたように握りしめられる腕にパイルは目を見開き、レナは彼に聞こえる声量で囁く。
「弱虫」
「……き、さまぁっ!!」
「あっ!?」
パイルは怒りの表情を浮かべて左腕を振り翳し、レナの腹部に向けて拳を叩きこむ。その瞬間、腕に装着されていた破城槌のような武器も叩きこまれ、レナの肉体が後方に吹き飛ぶ。その光景を目撃した民衆は驚愕し、兵士に囲まれていたダインとシズネも反応する。
「なっ……お前、僕の友達に何てことするんだ!!」
「……どういうつもり?一般人に手を出すなんて……傭兵の恥晒しね」
「黙れ!!こいつが先に仕掛けたんだ……!?」
二人の言葉にパイルは言い返そうとしたが、周囲の人間が自分に見つめる視線に気付き、非常に不味い状況だと理解する。傍目から見れば傭兵であるパイルが明らかに力尽くで連行しようとした少年を唐突に殴りつけたとしか思えず、今まで黙っていた人間達も彼を罵倒した。
「おい!!何も殴る事はないじゃないか!!まだ子供だぞ!?」
「そうよ!!だいたいあんたが勝手に勘違いしただけじゃない!!」
「おい、大丈夫か坊主?怪我はないか?」
「うっ……」
「ち、違う!!俺は……」
倒れ込んだレナの元に民衆が集まり、パイルは必死に言い訳を考えるが既に状況はレナ達に味方しており、ダインとシズネを取り囲んでいた兵士達にも他の人間が詰め寄る。
「もういい加減にそっちの二人も離してやれよ!!友達が殴られてたんだぞ!?」
「さ、下がれ!!邪魔をするな!!」
「うわっ!?おい、こいつ今俺に刃を構えたぞ!!こんな横暴が許されるのか!?」
「何が王国兵だ!!だいたいお前等、肝心な時に何もしないくせにいちいち偉そうにしてんじゃねえっ!!」
冒険都市周辺の住民はバルトロス王国の兵士を嫌う傾向があり、理由としては腐敗竜が現れた時に王国は軍隊を派遣しなかった事が原因である。そのため、今回の王国兵の横暴も我慢できず、レナ達を取り囲む兵士を見て民衆も我慢の限界を迎えていた。
感想 5,097
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
『ベルンハルト・フォン・バーデンは平穏に暮らしたい』
GamaFrog男爵家三男、ベルンハルト・フォン・バーデン。
家督継承権はなく、本来ならどこかの官職に就くか、他家へ仕えるか、婿入りするか――そんな将来が待っているはずだった。
しかしベルは少しだけ優秀すぎた。
小遣い稼ぎのつもりで始めた商売は成功し、気付けば父親より金を持ち、長男より領地経営に詳しく、次男より商売が上手くなっていた。
本人に出しゃばる気はない。
ただ普通に生きていただけだ。
それでも、優秀すぎる三男の存在は家族との距離を少しずつ広げていった。
家に居場所がなくなった。
だからベルは学園へ来た。
貴族だから一応入学した。
家にいるより気楽だったから。
静かに暮らしたかったから。
寄付金を積んで手に入れた広い寮部屋で、本を読み、昼寝をし、卒業後は適当な文官になって平穏に生きる
そのはずだった。
だが現実は違った。
男装令嬢に懐かれ。
王太子に目を付けられ。
商会には囲い込まれ。
気付けば平穏はどこへやら。
本人はただ平穏に暮らしたいだけ。
周囲はなぜか放っておいてくれない。
これは、面倒事を嫌う規格外の天才が、静かな人生を目指して失敗し続ける物語である。
私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました
放浪人政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。
だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。
「彼女は可哀想なんだ」
「この子を跡取りにする」
そして人前で、平然と言い放つ。
――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」
その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。
「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」
【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する
エース皇命【HOTランキング1位獲得作品!!】
最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。
戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。
目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。
ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!
彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!!
※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中
異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?
すずなり。ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。
一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。
「俺とデートしない?」
「僕と一緒にいようよ。」
「俺だけがお前を守れる。」
(なんでそんなことを私にばっかり言うの!?)
そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。
「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」
「・・・・へ!?」
『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!?
※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。
※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。
ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。
真の皇帝は俺です ~面倒だから幼なじみに帝位を任せていたら、婚約者に捨てられました。正体を明かしたら全員後悔してももう遅い~
由香皇帝の仕事が面倒だったレインは、信頼する幼なじみアレクシスに表向きの皇帝を任せ、自身は陰から帝国を支えていた。
だがある日、婚約者エミリアは「権力も将来性もない」と彼を見限り婚約破棄を宣言する。
しかし彼女は知らなかった。
帝国を動かしていた真の支配者が誰なのかを。
これは全てを持ちながら隠していた男と、見るべきものを見失った者たちの後悔の物語。
クラス全員で異世界召喚されたが、俺だけ教室に取り残されたのでとりあえず帰宅した
中山(ほ) クラス全員で異世界召喚されたが、先生と俺が残っていた。
魔法もチートスキルもステータス画面すら表示されない、ただの「残され損」
異世界に行けなかった俺を待っていたのは、世知辛い現実だった。
AI使用状況
GoogleのGeminiさん使ってます〜
誤字脱字チェックと調べ物お願いしてます
99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える
ハーフのクロエ 夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。
主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。