不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ

文字の大きさ
327 / 2,090
都市崩壊編

どちらが初級魔法を極めているのか?

しおりを挟む
「一応は言っておくけど、僕はある人物に頼まれて君を拘束しに来た。殺すつもりはないよ」
「いや、避けなかったら真っ二つになってただろ」
「あの程度の攻撃を避けられないはずがないだろう?ああ、それと君達に関しては別の何も言われてないから邪魔をしなければ何もしないよ」
「ガアアッ!!」


アルミナの目的はあくまでもレナだけらしく、ウル達に興味はない事を示す。しかし、ウルは自分の主人に攻撃を仕掛けた彼女に牙を向き、攻撃を仕掛けようとしたがレナが制止する。


「ウル!!お前は先にバルの元へ行け!!」
「ウォンッ!?」
「お前の鼻ならすぐに見つかるだろ……コトミンとダインも頼んだよ」
「……分かった」
「えっ!?コトミン!?」
「ほう……仲間を先に逃がすか、いい男だね」


レナの言葉にコトミンが頷き、ダインは驚くが彼女はウルの頭を軽く叩いて移動するように促す。主人の命令にウルは渋々と頷き、屋根の上から跳躍した。


「ウォンッ!!」
「うわわっ!?」
「レナ、頑張る!!」


最後にコトミンがレナに声援を送ると、それに応えるようにレナは右腕を上げ、それを見たコトミンは笑みを浮かべて立ち去る。その様子を見届けたアルミナは杖を構え、街道を挟んだ建物の上からレナと向かい合う。


「お別れは済んだかい?なら……ここからは魔術師同士の戦いだ!!」
「おっと!!」


レナに向けてアルミナが杖を突き出した瞬間、まるで削岩機のような氷の塊が出現し、弾丸のように高速回転させながらレナに解き放つ。それを目撃したレナは退魔刀を構え、正面から迫りくる氷塊の砲弾を迎え撃つ。


螺旋氷弾ドリルガン!!」
「受け流しっ……うわっ!?」


ドリル状の氷の砲弾がレナの退魔刀に触れた瞬間、別方向に攻撃を受け流そうとしたがあまりの勢いと回転力に刀身が弾かれ、レナの身体が後ろに倒れこむ。砲弾を回避する事には成功したが攻撃を受け流す事も出来ず、次の攻撃は回避に専念しなければならない。


「流石だな!!この攻撃を初見で受けたのは君で3、4人目だ!!」
「結構居るな……うわっとと!!」


続けてアルミナは杖を前に突き出すと、今度は無数の氷の鎖が出現してレナの元へ向かう。まるで蛇のように動いて接近してくる氷鎖に対してレナは退魔刀を異空間に収納して逃走に専念する。


「風圧!!」
「へえっ……そんな使い方も出来るのか」


空中に跳躍したレナは両手から強烈な風圧を発生させて飛距離を伸ばし、別の建物の屋根の上へ逃げ込む。それを確認したアルミナは杖を構えてレナの背中に向けて先ほどの丸鋸型の氷塊を放つ。


「回転氷刃!!」
「またそれか……火炎刃!!」
「甘い!!」


高速回転しながら接近してくる氷の円盤に対してレナは右手を構え、三日月状の火炎の刃を放つ。しかし、それを見たアルミナは杖を下ろす動作を行うと、回転氷刃は軌道を変更して火炎刃を回避させる。


「嘘っ!?」
「さあ、どうする!?」


自分の攻撃魔法を避けた回転氷刃に対してレナは慌てて屋根の上を駆け抜け、どうにか回避しようとするが執拗に回転氷刃は追跡する。魔法で破壊すればいいのだが、下手な攻撃魔法では避けられる恐れがあり、仕方なくレナは本体を狙う。


「火炎槍!!」
「おっと」


アルミナに向けてレナは火炎の槍を放つが、彼女は冷静に数歩だけ移動して攻撃を回避する。逃走している間に何時の間にかアルミナとの間に距離が出来てしまっていた。本体の意識を阻害して魔法を解除する事は難しく、もっと距離を詰めなければレナの魔法は回避されてしまう。


(面倒な相手だな……そうだ!!)


レナは追跡する回転氷刃を見てアルミナが操っている事に気付き、彼女の視界を塞げば追跡を逃れるのではないかと判断し、両手を合わせて魔法を発動させた。


「ダイン、魔法を借りるよ……はああっ!!」
「何っ!?」


ダインの初級魔法の「闇夜」とレナが得意とする「風圧」の合成魔術を発動させ、両手から黒霧が誕生した瞬間に風の力で広範囲に広がる。まるで煙幕のように黒霧が周囲に広がり、屋根の上のレナの姿を完全に覆い隠す。


「くっ……これは闇属性の魔法か?」


煙幕の範囲外に存在したアルミナは警戒するように後退し、回転氷刃を操作して煙幕の中のレナに攻撃を仕掛けるが、相手の姿が確認できないので勘でレナの位置を探るしかなく、眉を顰める。


「まさか闇属性まで使えたとは……だが、奇襲を仕掛けるつもりなら無駄だぞ」


アルミナは回転氷刃を解除させると空中に向けて杖を構え、円盤状の氷塊を生み出す。屋根の上から円盤の上に乗り込んだアルミナはそのまま氷塊を上昇させ、全方向に警戒を行う。


「中々面白い魔法だったが、これで僕に攻撃を仕掛ける事は難しくなっただろう。君が砲撃魔法は使えない事を知っている……さあ、今度はどう動く?」


空中に避難したアルミナは警戒心を緩めずにあらゆる方向からの攻撃を想定し、迎撃の準備を行う。仮に敵が即効性に秀でた砲撃魔法の使い手ならば空を浮かぶ彼女を光線で狙う事も出来るだろうが、レナの職業上の問題で彼が砲撃魔法を扱えない事はアルミナも知っていた。


(……どうした?何故攻撃を仕掛けてこない?)


しかし、空中に上昇してから十数秒後、アルミナはレナが攻撃を仕掛けてこない事に疑問を抱く。何時の間にか屋根の上に蔓延していた煙幕も消え去っており、煙に隠れていたはずのレナの姿も確認できない。ここで彼女はある事実に気付き、冷や汗を流す。


「まさか……逃げた?」


――相手の攻撃を必要以上に警戒していたアルミナに対し、既にレナは煙幕を利用して屋根の上から地上へ降り立ち、逃走を開始していた。
しおりを挟む
感想 5,092

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

侯爵家三男からはじまる異世界チート冒険録 〜元プログラマー、スキルと現代知識で理想の異世界ライフ満喫中!〜【奨励賞】

のびすけ。
ファンタジー
気づけば侯爵家の三男として異世界に転生していた元プログラマー。 そこはどこか懐かしく、けれど想像以上に自由で――ちょっとだけ危険な世界。 幼い頃、命の危機をきっかけに前世の記憶が蘇り、 “とっておき”のチートで人生を再起動。 剣も魔法も、知識も商才も、全てを武器に少年は静かに準備を進めていく。 そして12歳。ついに彼は“新たなステージ”へと歩み出す。 これは、理想を形にするために動き出した少年の、 少し不思議で、ちょっとだけチートな異世界物語――その始まり。 【なろう掲載】

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

Re:Monster(リモンスター)――怪物転生鬼――

金斬 児狐
ファンタジー
 ある日、優秀だけど肝心な所が抜けている主人公は同僚と飲みに行った。酔っぱらった同僚を仕方無く家に運び、自分は飲みたらない酒を買い求めに行ったその帰り道、街灯の下に静かに佇む妹的存在兼ストーカーな少女と出逢い、そして、満月の夜に主人公は殺される事となった。どうしようもないバッド・エンドだ。  しかしこの話はそこから始まりを告げる。殺された主人公がなんと、ゴブリンに転生してしまったのだ。普通ならパニックになる所だろうがしかし切り替えが非常に早い主人公はそれでも生きていく事を決意。そして何故か持ち越してしまった能力と知識を駆使し、弱肉強食な世界で力強く生きていくのであった。  しかし彼はまだ知らない。全てはとある存在によって監視されているという事を……。  ◆ ◆ ◆  今回は召喚から転生モノに挑戦。普通とはちょっと違った物語を目指します。主人公の能力は基本チート性能ですが、前作程では無いと思われます。  あと日記帳風? で気楽に書かせてもらうので、説明不足な所も多々あるでしょうが納得して下さい。  不定期更新、更新遅進です。  話数は少ないですが、その割には文量が多いので暇なら読んでやって下さい。    ※ダイジェ禁止に伴いなろうでは本編を削除し、外伝を掲載しています。

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。