324 / 2,086
都市崩壊編
閑話 〈王妃とアリア〉
しおりを挟む――レナが生まれた直後、国王の指示でアイラとレナが深淵の森に存在する屋敷に送り込まれた時、王妃は自分に使える最も有能な暗殺者を送り込んだ。その人物こそが「アリア」であり、彼女は王妃が今の座に就く前から仕えていた。
「王妃様、どうして今回の任務を私に与えたのですか?」
「あら……貴女が仕事の事で私に文句を言うのは初めてね」
「……失礼しました」
アイラが飛行船に乗り込むのを城の二階の窓から確認している王妃に全身をフードで覆い込んだ女性が跪き、自分に命令を下した王妃に尋ねる。彼女はこれまでに王妃の命令を幾度も受けてきたが、今回の任務に関しては素直に承諾出来なかった。
「ですが王妃様、私が侍女に扮してアイラの動向を伺う場合、私も当然ながら深淵の森で暮らさなければなりません。そうなると王妃様に仇を為す輩を葬る事が出来ません」
「別に暗殺を命じるだけなら貴方の代わりは幾らでもいるわ。だけど、今回の任務は貴女にしか出来ないと判断した上で命じているのよ」
「確かに私は演技として一般人に化ける事は出来ます。しかし、何年も共に暮らす事になればアイラも他の人間も私の正体に気付かれる恐れが……」
「別に失敗しても貴女を咎めたりしないわ。それに私の配下の中で最も人間味がある貴方だから頼んでいるのよ」
「私が……ですか?」
王妃の言葉に暗殺者は戸惑い、そんな彼女に王妃は笑みを浮かべながら彼女の顔を掴み、自分の元へ引き寄せる。その行動に暗殺者は驚愕し、表情が恐怖に染まる。
「ひっ……!?」
「どうしたのかしら?私は顔を近づけただけよ……その気になれば貴女なら私の事を簡単に殺せるでしょう?」
「わ、私は貴女に逆らう真似は……」
「そんな事は理解しているわ」
あっさりと暗殺者の顔を離すと王妃は窓の外の光景を確認し、ゆっくりと浮上する飛行船を確認する。この数日後に森の中で過ごすのに必要な物資を運ばれる手筈が整っており、その際に王妃はアリアを送り込むつもりだった。
「貴女を選んだ理由……それは貴女が私の事を恐れているからよ」
「わ、私は決してそのような事は……」
「それでいいのよ。一流の暗殺者とは人殺しの道具ではなく、内に人としての意思を持つ人間よ。命じられた事だけに従うような人形なんて私は必要としない」
「では……王妃様は私が王妃様を恐れているからこそ自分の傍から離れるように命じられたのですか?」
信じられないという風に暗殺者は冷や汗を流し、敢えて自分に恐怖を抱き、内部事情を知っている存在を手元から離す行為を平然と命じる王妃の考えを暗殺者は理解できない。しかし、王妃は気にした風もなく彼女に淡々と告げる。
「数日後、物資を乗せた飛行船が出発するわ。それまでに準備をしておきなさい……アリア」
「アリア?」
「それが貴女の新しい名前よ」
それだけを告げると王妃はその場を立ち去り、残された暗殺者は「アリア」という人物が自分の変装する相手だと理解すると、彼女の情報を調べるために黙って立ち去った――
「王妃様、どうして今回の任務を私に与えたのですか?」
「あら……貴女が仕事の事で私に文句を言うのは初めてね」
「……失礼しました」
アイラが飛行船に乗り込むのを城の二階の窓から確認している王妃に全身をフードで覆い込んだ女性が跪き、自分に命令を下した王妃に尋ねる。彼女はこれまでに王妃の命令を幾度も受けてきたが、今回の任務に関しては素直に承諾出来なかった。
「ですが王妃様、私が侍女に扮してアイラの動向を伺う場合、私も当然ながら深淵の森で暮らさなければなりません。そうなると王妃様に仇を為す輩を葬る事が出来ません」
「別に暗殺を命じるだけなら貴方の代わりは幾らでもいるわ。だけど、今回の任務は貴女にしか出来ないと判断した上で命じているのよ」
「確かに私は演技として一般人に化ける事は出来ます。しかし、何年も共に暮らす事になればアイラも他の人間も私の正体に気付かれる恐れが……」
「別に失敗しても貴女を咎めたりしないわ。それに私の配下の中で最も人間味がある貴方だから頼んでいるのよ」
「私が……ですか?」
王妃の言葉に暗殺者は戸惑い、そんな彼女に王妃は笑みを浮かべながら彼女の顔を掴み、自分の元へ引き寄せる。その行動に暗殺者は驚愕し、表情が恐怖に染まる。
「ひっ……!?」
「どうしたのかしら?私は顔を近づけただけよ……その気になれば貴女なら私の事を簡単に殺せるでしょう?」
「わ、私は貴女に逆らう真似は……」
「そんな事は理解しているわ」
あっさりと暗殺者の顔を離すと王妃は窓の外の光景を確認し、ゆっくりと浮上する飛行船を確認する。この数日後に森の中で過ごすのに必要な物資を運ばれる手筈が整っており、その際に王妃はアリアを送り込むつもりだった。
「貴女を選んだ理由……それは貴女が私の事を恐れているからよ」
「わ、私は決してそのような事は……」
「それでいいのよ。一流の暗殺者とは人殺しの道具ではなく、内に人としての意思を持つ人間よ。命じられた事だけに従うような人形なんて私は必要としない」
「では……王妃様は私が王妃様を恐れているからこそ自分の傍から離れるように命じられたのですか?」
信じられないという風に暗殺者は冷や汗を流し、敢えて自分に恐怖を抱き、内部事情を知っている存在を手元から離す行為を平然と命じる王妃の考えを暗殺者は理解できない。しかし、王妃は気にした風もなく彼女に淡々と告げる。
「数日後、物資を乗せた飛行船が出発するわ。それまでに準備をしておきなさい……アリア」
「アリア?」
「それが貴女の新しい名前よ」
それだけを告げると王妃はその場を立ち去り、残された暗殺者は「アリア」という人物が自分の変装する相手だと理解すると、彼女の情報を調べるために黙って立ち去った――
11
お気に入りに追加
16,646
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。
たかなしポン太
青春
僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。
助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。
でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。
「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」
「ちょっと、確認しなくていいですから!」
「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」
「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」
天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。
異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー!
※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。
※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。
最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした
服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜
大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。
目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!
そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。
まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!
魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します
ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!!
カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。
[完結]異世界転生したら幼女になったが 速攻で村を追い出された件について ~そしていずれ最強になる幼女~
k33
ファンタジー
初めての小説です..!
ある日 主人公 マサヤがトラックに引かれ幼女で異世界転生するのだが その先には 転生者は嫌われていると知る そして別の転生者と出会い この世界はゲームの世界と知る そして、そこから 魔法専門学校に入り Aまで目指すが 果たして上がれるのか!? そして 魔王城には立ち寄った者は一人もいないと別の転生者は言うが 果たして マサヤは 魔王城に入り 魔王を倒し無事に日本に帰れるのか!?
発明家アレンの異世界工房 ~元・商品開発部員の知識で村おこし始めました~
シマセイ
ファンタジー
過労死した元商品開発部員の田中浩介は、女神の計らいで異世界の少年アレンに転生。
前世の知識と物作りの才能を活かし、村の道具を次々と改良。
その発明は村の生活を豊かにし、アレンは周囲の信頼と期待を集め始める。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。