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都市崩壊編
閑話 〈王妃とアリア〉
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――レナが生まれた直後、国王の指示でアイラとレナが深淵の森に存在する屋敷に送り込まれた時、王妃は自分に使える最も有能な暗殺者を送り込んだ。その人物こそが「アリア」であり、彼女は王妃が今の座に就く前から仕えていた。
「王妃様、どうして今回の任務を私に与えたのですか?」
「あら……貴女が仕事の事で私に文句を言うのは初めてね」
「……失礼しました」
アイラが飛行船に乗り込むのを城の二階の窓から確認している王妃に全身をフードで覆い込んだ女性が跪き、自分に命令を下した王妃に尋ねる。彼女はこれまでに王妃の命令を幾度も受けてきたが、今回の任務に関しては素直に承諾出来なかった。
「ですが王妃様、私が侍女に扮してアイラの動向を伺う場合、私も当然ながら深淵の森で暮らさなければなりません。そうなると王妃様に仇を為す輩を葬る事が出来ません」
「別に暗殺を命じるだけなら貴方の代わりは幾らでもいるわ。だけど、今回の任務は貴女にしか出来ないと判断した上で命じているのよ」
「確かに私は演技として一般人に化ける事は出来ます。しかし、何年も共に暮らす事になればアイラも他の人間も私の正体に気付かれる恐れが……」
「別に失敗しても貴女を咎めたりしないわ。それに私の配下の中で最も人間味がある貴方だから頼んでいるのよ」
「私が……ですか?」
王妃の言葉に暗殺者は戸惑い、そんな彼女に王妃は笑みを浮かべながら彼女の顔を掴み、自分の元へ引き寄せる。その行動に暗殺者は驚愕し、表情が恐怖に染まる。
「ひっ……!?」
「どうしたのかしら?私は顔を近づけただけよ……その気になれば貴女なら私の事を簡単に殺せるでしょう?」
「わ、私は貴女に逆らう真似は……」
「そんな事は理解しているわ」
あっさりと暗殺者の顔を離すと王妃は窓の外の光景を確認し、ゆっくりと浮上する飛行船を確認する。この数日後に森の中で過ごすのに必要な物資を運ばれる手筈が整っており、その際に王妃はアリアを送り込むつもりだった。
「貴女を選んだ理由……それは貴女が私の事を恐れているからよ」
「わ、私は決してそのような事は……」
「それでいいのよ。一流の暗殺者とは人殺しの道具ではなく、内に人としての意思を持つ人間よ。命じられた事だけに従うような人形なんて私は必要としない」
「では……王妃様は私が王妃様を恐れているからこそ自分の傍から離れるように命じられたのですか?」
信じられないという風に暗殺者は冷や汗を流し、敢えて自分に恐怖を抱き、内部事情を知っている存在を手元から離す行為を平然と命じる王妃の考えを暗殺者は理解できない。しかし、王妃は気にした風もなく彼女に淡々と告げる。
「数日後、物資を乗せた飛行船が出発するわ。それまでに準備をしておきなさい……アリア」
「アリア?」
「それが貴女の新しい名前よ」
それだけを告げると王妃はその場を立ち去り、残された暗殺者は「アリア」という人物が自分の変装する相手だと理解すると、彼女の情報を調べるために黙って立ち去った――
「王妃様、どうして今回の任務を私に与えたのですか?」
「あら……貴女が仕事の事で私に文句を言うのは初めてね」
「……失礼しました」
アイラが飛行船に乗り込むのを城の二階の窓から確認している王妃に全身をフードで覆い込んだ女性が跪き、自分に命令を下した王妃に尋ねる。彼女はこれまでに王妃の命令を幾度も受けてきたが、今回の任務に関しては素直に承諾出来なかった。
「ですが王妃様、私が侍女に扮してアイラの動向を伺う場合、私も当然ながら深淵の森で暮らさなければなりません。そうなると王妃様に仇を為す輩を葬る事が出来ません」
「別に暗殺を命じるだけなら貴方の代わりは幾らでもいるわ。だけど、今回の任務は貴女にしか出来ないと判断した上で命じているのよ」
「確かに私は演技として一般人に化ける事は出来ます。しかし、何年も共に暮らす事になればアイラも他の人間も私の正体に気付かれる恐れが……」
「別に失敗しても貴女を咎めたりしないわ。それに私の配下の中で最も人間味がある貴方だから頼んでいるのよ」
「私が……ですか?」
王妃の言葉に暗殺者は戸惑い、そんな彼女に王妃は笑みを浮かべながら彼女の顔を掴み、自分の元へ引き寄せる。その行動に暗殺者は驚愕し、表情が恐怖に染まる。
「ひっ……!?」
「どうしたのかしら?私は顔を近づけただけよ……その気になれば貴女なら私の事を簡単に殺せるでしょう?」
「わ、私は貴女に逆らう真似は……」
「そんな事は理解しているわ」
あっさりと暗殺者の顔を離すと王妃は窓の外の光景を確認し、ゆっくりと浮上する飛行船を確認する。この数日後に森の中で過ごすのに必要な物資を運ばれる手筈が整っており、その際に王妃はアリアを送り込むつもりだった。
「貴女を選んだ理由……それは貴女が私の事を恐れているからよ」
「わ、私は決してそのような事は……」
「それでいいのよ。一流の暗殺者とは人殺しの道具ではなく、内に人としての意思を持つ人間よ。命じられた事だけに従うような人形なんて私は必要としない」
「では……王妃様は私が王妃様を恐れているからこそ自分の傍から離れるように命じられたのですか?」
信じられないという風に暗殺者は冷や汗を流し、敢えて自分に恐怖を抱き、内部事情を知っている存在を手元から離す行為を平然と命じる王妃の考えを暗殺者は理解できない。しかし、王妃は気にした風もなく彼女に淡々と告げる。
「数日後、物資を乗せた飛行船が出発するわ。それまでに準備をしておきなさい……アリア」
「アリア?」
「それが貴女の新しい名前よ」
それだけを告げると王妃はその場を立ち去り、残された暗殺者は「アリア」という人物が自分の変装する相手だと理解すると、彼女の情報を調べるために黙って立ち去った――
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