不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ

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都市崩壊編

王子の行方

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「……もう一度だけ聞くわ。どういうつもりなの?どうして貴女がこの女を庇うの?」
「それは……」
「殺せっ!!私を殺せっ!!お前らの思い通りになるぐらいなら……ここで死んでやる!!」


マリアの質問にハヅキが答える前にキラウは喚き散らし、醜態を晒す事も構わずに怒鳴り散らす。そんな自分の娘の姿にハヅキは唇を噛みしめ、ここまで彼女を追い詰めたのかと苦しむ。


「……マリア、お願いだからどうか私にこの子を渡しなさい。それが一番なの」
「気は確か?この女がこの街にどれほどの被害を及ぼしたのか分かっているの?いいえ、この街の人間だけじゃないわ。この女の行いでどれほどの人間が……」
「分かっています!!」


母親の行動が正気とは思えないマリアは詰問するが、それを予想していたようにハヅキは頷き、キラウの犯した罪が決して許されるものではない事を理解している。それでも彼女はキラウをこの場から連れ去らなければならない理由があった。


「私がこの子を連れて行く理由は……母親としての判断ではありません」
「それは、どういう意味かしら?」
「半刻ほど前、第一王子が連れ去られました。現在はヨツバ王国の兵士達に捜索させています……そして誘拐犯はっこの子です」
「っ……!?」


ハヅキがこの場に訪れたのは母親として二人の娘の争いを止めるためではなく、彼女は王子を誘拐した犯人を捜すために訪れたことを話す。ハヅキは王家の護衛役を任されており、王子を連れ戻すために直属の部下を連れて王子を誘拐したキラウを捜索していたという。


「どうか素直に答えてください。王子は無事なのですか?」
「はっ……何だ、そういう事だったのね。結局、ここに来たのはあの役にも立たない王子様を探しに来たってわけ?」
「アイラ!!」
「その名前で呼ぶなっ!!」


キラウの本名であり、本来ならば家系を継ぐはずの人間に与えられる「アイラ」の名前をハヅキが口にした途端、キラウは憎悪を露わにして怒鳴りつける。その気迫にマリアとハヅキは後退り、護衛が武器を構える。しかし、今の彼女は身体を動かす事もままならず、激しく咳き込みながら地面にうつ伏せに倒れこむ。


「げほげほっ……忌々しい!!何処まで私を愚弄すれば気が済む……!!」
「アイラ……」
「うるさい!!その名前を聞くだけで頭がおかしくなる……早く私を殺せっ!!」


痛々しい娘の姿にハヅキは顔を反らすが、それでも彼女は王家に使える者として王子の居場所を探さねばならない。そのためには王子を誘拐したアイラから情報を聞き出す必要があり、彼女はアイラに尋ねる。


「アイラ……お願い、どうか答えて下さい。でないと……私は貴女を」
「……そんなに知りたいの?なら、答えてもいいわ……」
「妙に素直ね?何か企んでいるのかしら?」


キラウは口元に笑みを浮かべ、そんな彼女の反応にマリアは訝しむと、キラウはマリアに視線を向けてハヅキに答えた。


「王子の居場所を知りたければそこの女を殺しなさい。私の前であんたが娘を殺せば話してあげてもいいわ」
「そんな事……出来るはずがないではないですかっ!?」


娘であるマリアの殺害を命じたキラウにハヅキは咄嗟に怒鳴るが、そんな彼女を見てキラウは瞳に憎悪の光を宿して怒鳴り返す。


「私の事を見捨てた癖にっ!!」
「っ……!?」
「どれだけ綺麗ごとをほざこうと……あんたはもう、娘を一度裏切っているのよ。それなら二度目は抵抗感なんて湧かないでしょう」
「…………」


キラウの発言にハヅキは衝撃を受けた表情を浮かべ、マリアは黙って二人のやり取りを見つめる。二人がどのような行動を取るのかを黙って見守り、あくまでも傍観を行う。二人の関係はマリアは良く知らないが、それでも下手に話を割り込む事は出来ないと判断した。


「アイラ……どうして貴女はそこまで」
「お前のせいだ……お前があの時、私を見捨てたから!!」
「……私は貴女を救おうとしたのです!!」


100年以上前、確かにハヅキはキラウをハヅキ家から追放させた事実は変わらない。だが、彼女も本意でキラウを追い出したわけではなく、このままでは自分の娘の立場が危ういと感じた彼女はキラウを想ってハヅキ家から追い出したつもりだった。

しかし、ハヅキの思いとは裏腹にキラウは彼女を憎み、そして森人族という種族全てを妬む様になった。彼女の中で家族呼べる存在は自分を拾い上げた「吸血鬼」だけであり、キラウは既に母親の事を敵としか人していない。だからこそ彼女はハヅキが最も苦しむ方法で彼女に復讐を願う。


「お前の言葉は私には響かない……王子を取り返したければ娘を殺せ」
「……貴女を捕まえ、拷問にかける事も出来るのですよ?」
「構わないね。そんな事をされても私は何も話さない……そうなれば困るのはお前だけになる」
「アイラ……貴女はそこまで堕ちたのですか?」
「私をここまで苦しめたのはあんたよ」
「もういいわ」


どうしてもハヅキの質問に答えるつもりはないキラウに対し、黙って見守っていたマリアはこれ以上の問答は無駄だと悟り、杖を構えた。
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