不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ

文字の大きさ
370 / 2,090
都市崩壊編

地竜討伐戦 その1

しおりを挟む
『オオオオッ……!!』
「あ、やばいっす!!流石にこっちに標的を変えましたよ!?」
「大丈夫、予定通りさ」


甲羅を執拗に狙うアルミナとエリナに対して地竜は標的を変更し、二人の立つ建物に向けて左前足を振り翳す。しかし、巨体なだけに鈍重なので攻撃が届くまでに時間が掛かり、その間にアルミナは氷塊の魔法を利用して足元に円盤型の氷を生み出す。


「よし、これに乗るんだ」
「うぃっす!!」
『オアアッ!!』


氷塊の円盤に乗り込んだ二人は上空へと飛翔した瞬間、地竜の前脚が建物を薙ぎ払い、粉々に崩壊する。中に人間が居なかった事は幸いしたが、建物は完全に崩壊してしまう。速度は遅いが凄まじい破壊力を誇り、真面に受ければ並みの人間どころか大型の魔獣でも一撃で葬る威力は存在した。


「流石にこいつの攻撃は僕の魔法でも防げないな……エリナ君、事前に僕の渡した矢は使いきったかい?」
「はい!!全て撃ち終えました!!」
「よし、いい子だ!!」


エリナが地竜の甲羅に射抜いた矢は全てアルミナが事前に用意していた物であり、矢の先端の鏃の部分に細工を施した特殊な矢だった。アルミナは甲羅の隙間に食い込んだ矢に視線を向け、準備を整えたと判断して両手を構える。


「連続、螺旋氷弾!!」
「おおっ!?」
『ウオオオッ……!?』


先程の砲弾型とは異なり、今度は弾丸程度の大きさの氷塊を撃ち込む。威力は落ちるが乱機銃のように地竜の背中に氷塊の弾丸が撃ち込まれ、先にエリナが甲羅の亀裂に撃ち込んだ矢に衝突した瞬間、鏃の部分が破壊して冷気が発生した。


『アアアアッ!?』
「どうだい?僕の特製の水属性の魔石の鏃はきついか?」
「おおっ……凄いっす!!」



――エリナが使用した矢はアルミナが独自に作り出した水属性の魔石を削り取って作り出した「鏃」が嵌め込まれており、形状は特別だが魔石である事に変わりはないのでアルミナの魔法に反応して魔石は内に秘めた水属性の魔力を冷気として発散する。その結果、甲羅の亀裂から大量の冷気が湧き出た地竜は悲鳴を上げて倒れこむ。



地竜の外殻はは土竜やゴーレムと同様に水を浴びると泥のように変質してしまう弱点が存在し、冷気に対しても非常に弱い。甲羅から発生した冷気は地竜の肉体を飲み込み、動作が明らかに鈍る。その隙を逃がさずにアルミナは円盤を移動させ、地竜の顔面に狙いを定めて魔法を撃ち込む。


「今度は大きいぞ……螺旋氷弾!!」
『ガアアッ!?』
「やった!!」


地竜の右目の部分にアルミナが氷塊の砲弾を撃ち込まれ、高速回転が加えられた砲弾は右目を貫く。その光景を見てエリナは歓喜の声を上げるが、攻撃を仕掛けたアルミナは容赦なく次の攻撃に移ろうとした。


「次は反対の目だ!!」
『アガァッ!!』
「何っ!?」


円盤を移動させ、今度は左目をアルミナが狙おうとした時、地竜は顎を開いて口内に残っていた瓦礫を放つ。空中に浮上していた円盤に瓦礫の破片が衝突し、アルミナとエリナはバランスを崩して円盤から転倒してしまう。


「うわぁっ!?」
「くっ……いかん!!」


咄嗟にアルミナは自分の足元に新しい氷塊の円盤を作り出して体勢を整えたが、エリナは精霊魔法を使う暇もなく地上に向けて墜落してしまう。慌ててアルミナが彼女を救い出そうとしたが、アルミナが動く前に地上の方から突風が発生してエリナの身体を浮上させる。


「おらぁっ!!」
「わわっ!?」
「うわっ……だ、大丈夫か?」


下から噴き出した風に身体を押し上げられたエリナをアルミナは慌てて抱き上げ、どうにか地上への落下は食い止められた。一体誰が彼女を助けたのかとアルミナは地上にっ視線を向けると、そこには折れた剣を構えるシュンの姿が存在した。


「くそっ……目を覚まして早々にこんな化け物と鉢合わせするとはな。どういう状況だよおい?」
「泣き言を抜かすな、怖いなら下がっていろ」
「まさかこのような街中で竜種と戦う事になるとは……」


地上に存在したのはジダンとエリナを除く「王国四騎士」のアカイ、リンダ、そして元王国四騎士候補の剣聖であるシュンが存在した。エリナを救い出した突風は彼等が生み出した魔法らしく、三人は地竜と向かい合うとそれぞれの武器を身構える。


「あれは王国四騎士か……だが、無茶だ。魔術師ではない君達に対応できる相手じゃない!!すぐにここから離れるんだ!!」
『…………』


アルミナは現れた3人に対して逃走するように指示を与え、普通の人間にしてみれば彼女の言葉は真っ当な正論である。確かに相手が人間やあるいはミノタウロスやサイクロプス程度の魔人族ならば戦闘職(武術系の職業)の人間でも対抗できるが、圧倒的な質量を誇る大型の魔獣に対して魔法以外の戦技が通用する事は滅多に存在しない。しかし、この場に現れた3人は「常識」から掛け離れた実力者であり、アルミナの言葉を聞いても3人は逃げる素振りすら見せなかった。
しおりを挟む
感想 5,092

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―

ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」 前世、15歳で人生を終えたぼく。 目が覚めたら異世界の、5歳の王子様! けど、人質として大国に送られた危ない身分。 そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。 「ぼく、このお話知ってる!!」 生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!? このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!! 「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」 生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。 とにかく周りに気を使いまくって! 王子様たちは全力尊重! 侍女さんたちには迷惑かけない! ひたすら頑張れ、ぼく! ――猶予は後10年。 原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない! お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。 それでも、ぼくは諦めない。 だって、絶対の絶対に死にたくないからっ! 原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。 健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。 どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。 (全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。