不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ

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都市崩壊編

祖母と叔母

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――レナがマリアとハヅキの力に圧倒される一方、二人も背中から流し込まれる魔力を感じ取りながら内心では驚愕と感動を覚えていた。一流の魔術師である二人だからこそ、まだ子供でありながら膨大な魔力を持つレナの力を感じ取っていた。


(この流れ込む力は……やはりこの子は才能があったのね)


マリアは背中に流し込まれるレナの魔力によって自分の力がより研ぎ澄まされる感覚を感じ取り、同時にハヅキも力が湧き上がる感覚に驚きを隠せない。


(これが支援魔術師の支援魔法だと言うのですか……いえ、これはレナの力なのですね)


二人の魔法の力を圧倒されるレナに対し、マリアとハヅキも同時に彼の才能の片鱗を感じ取っていた。ハヅキ家の人間は魔術師の家系であり、殆どの人間が魔法職の人間である。アイラの場合は優れた冒険者の父親の血を濃く受け継いで格闘家となったが、レナの場合はしっかりとハヅキ家の特徴も受け継いでいた。


(この年齢の頃の私でさえもここまでの力は持っていなかった。いえ、恐らくは母も祖母も……もしかしたらこの子の才能はマリアにも匹敵するかもしれません)
(つくづく惜しいわ……普通の魔術師の職業ならきっと誰よりも優れた魔術師になれたでしょうに)


優れた魔術師であるハヅキとマリアだからこそレナの魔術師としての才能に気付き、もしも彼が支援魔術師や錬金術師の職業として生まれていなかったらと考えてしまう。しかし、マリアはすぐに思い直す。


(いえ、違うわね。職業なんて関係ない、これがレナの力なのよ。不遇職であるからこそ、ここまで自分を鍛え上げてきた人間の力なのね)


マリアは父親の事を思い出し、彼もレナと同じように努力家である事を思い出す。魔法を不得手とするアイラも同様に彼女は魔法が使えない代わりに肉体を鍛え上げ、最強の格闘家と剣士になった。生まれや境遇など関係なく、努力を怠らないものが報われるのだ。


(……もしもあの時、私が娘を引き留めていたらこの子は生まれかったでしょう。これが運命なのですか……貴方)


ハヅキは今は亡き夫の事を思い出し、運命の歯車が少しでも違っていればハヅキはレナという存在とは巡り合えなかっただろう。しかし、今は地竜を打ち倒す事に成功し、3人は最後の工程に入る。


「精霊は私が呼び集めます!!貴方は次の準備を!!」
「分かっているわ!!レナ、遠慮せずに魔法を使いなさい!!貴方の家族を信じなさい!!」
「はい!!」


大量の風の精霊をハヅキが集め、マリアは魔法に集中し、レナは二人に送り込む魔力を増加させる。やがて3人の周囲に形成されていた竜巻が徐々に規模が拡大化すると、徐々に地竜の肉体を飲み込み始めた。



――オオオオオッ……!!



地竜の肉体の表面に暴風が襲い掛かり、岩石の外殻の一部が剥がれ落ちていく。その様子を見たマリアは目を見開き、杖を上空に掲げて最後の段階に入った。


「広域魔法!!ブリザード!!」


最上級魔法には劣るが、通常の砲撃魔法を上回り、広範囲に攻撃を行う事が出来る魔法を発動させる。その結果、マリアの杖先から大量の冷気が放出され、周囲に渦巻く竜巻が冷気を飲み込むと、地竜の肉体に冷気の嵐が襲い掛かる。




――オアアアアアアッ……!?




発熱していた肉体が急激に冷やされ、地竜の悲鳴が都市中に響き渡った。高温を帯びていた岩石の外殻が吹雪を想像させる強烈な風圧を浴びて凍り付き、やがて身体の芯にまで冷気が伝わる。ハヅキが呼び集めた風の精霊の力を借りた竜巻にレナの付与強化の魔法で強化されたマリアの広域魔法が組み合わさった合成魔術であり、その威力は決して最上級魔法にも劣らない。


「くっ……!!」
「マリア、あと少しです!!レナも耐えなさい!!」
「は、はい!!」


だが、強力な魔法であるからこそ負担も大きく、マリアは冷気を放出する杖を手放さない様に必死に押し留まり、レナも顔色が悪い。そんな二人に激励を行うハヅキも風の精霊を維持するために全身から汗が止まらず、それでも3人は魔法を維持し続けた。



――ウオオオオオッ!!



しかし、魔法の発生源である3人に対して地竜は最後の悪あがきとばかりに風圧を押しのけながら3人の元へ近づき、巨体を利用して踏み潰そうとする。その光景を目にしながらも3人は動かず、魔法を放ち続けた。


「哀れね……すぐに止めを刺してあげるわ」
「いい加減に……くたばれっ!!」
「これが……ハヅキ家の力です!!」


接近する地竜に対して3人は最後の力を振り絞り、冷気の竜巻の規模を拡大化させ、周囲の建物が凍り付くほどの冷気を拡散させる。その結果、上半身を起き上げた状態で地竜は全身が凍り付き、やがて巨大な氷像と化した。




――オオオッ……!?




上半身を起き上げた状態で地竜は完全に凍り付き、肉体を固定化される。結果的には3人が立っている位置から数メートルしか離れていない距離まで追い詰めたにも関わらず、地竜は完全に死亡した。
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