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都市崩壊編
ハヅキの願い
「レナ……そこに、いるのですか?」
「御祖母様?」
「もう、目が見えま、せん……手を……」
「…………」
マリアに抱えられたハヅキの言葉にレナはすぐに彼女の元へ訪れると、差し出された右手を掴む。血塗れの掌は既に冷たく、徐々に彼女の肉体が死に近づいている事を嫌でも思い知らされる。周囲の人間たちは何も言葉に出来ずにレナとハヅキのやり取りを見守り、マリアは黙ってハヅキの左手を握りしめた。
娘と孫に両手を握りしめられたハヅキは掌越しに感じる感触に笑みを浮かべ、それと同時にこの場には存在しない二人の娘の事を想う。自分のせいで子供たちには大きな不幸を負わせた事にハヅキは負い目を感じていたが、同時に子供達と和解したいと思っていた。だが、このままでは自分が助からない事を理解したハヅキはせめて愛する娘の子供であるレナに自分の「力」と「願い」を託す。
「レナ……頼みが、あります……」
「御祖母様、もう喋らないで……」
「聞きなさい……貴方にしか、出来ない事……です」
「俺に……しか?」
祖母の言葉にレナは戸惑い、どうしてマリアではなく自分に頼むのかと疑問を抱くが、既にハヅキは視力を失い、手を握りしめる力も弱まっていた。それでもレナに自分の力を託すため、体内に残された魔力を右手に集中させた。
「受け取りなさい……これが、ハヅキ家が代々守ってきた力です」
「っ……!?」
ハヅキの右腕に「渦巻」を想像させる紋様が出現した瞬間、緑色の光がレナの掌に流れ込む。いったい何が起きているのかレナには理解できなかったが、ハヅキの手を通して魔力が流れ込み、やがてレナの右腕にもハヅキと同様の紋様が浮かんだ瞬間、ハヅキの腕に輝いていた紋様が消え去る。
「これは……!?」
「……風の、聖痕です。ハヅキ家の継承者のみに受け継ぐ事が許される力です」
聖痕という言葉にレナは過去にアイリスから教わった知識を思い出し、魔法の力を増幅する事が出来る特別な術式である事を思い出す。バルトロス王国の大将軍のレミアも所持しており、彼女の場合は十字架を想像させる紋様を額に宿していた。
――ヨツバ王国の中でもハヅキ家は三大貴族と称される程に王家からの信頼が厚く、歴代の当主は重要な地位を与えられていた。だが、ハヅキ家が重要視されている本当の理由はこの「聖痕」が関わっており、ハヅキ家の当主は代々この「風の聖痕」を継承していた。
どうしてヨツバ王国が聖痕の所有者を大切にしていたかというと、この力は魔法の効果を高めるだけではなく、聖痕の所有者の子供は非常に高い確率で優れた才能を持つ子供が生まれやすいと信じられていた。実際に当主であるハヅキを筆頭に現在のハヅキの家系であるマリアとキラウは魔法方面に優れた才能を持つ。魔法を不得手とするアイラでさえも格闘家や剣士としては非常に優秀のため、才気に溢れた人材と言える。レナに関してもアイリスの助言があったとはいえ、この年齢で普通ならばあり得ない技能や能力を習得している。
森人族の中に聖痕の所有者が現れたのはヨツバ王国が建国される以前の話であり、ハヅキ家の先祖である「アイラ・ハヅキ(初代)」は聖痕の所有者ではなかったが、歴代のハヅキ家の家系の人間は何らかの分野で優秀な功績を残していた。それだけにヨツバ王国は聖痕を所有するハヅキ家を重要視しており、他の守人家やミドリ家と同等に扱っていた。
「がはぁっ!?」
「母様!!」
「御祖母様!!」
ハヅキ家にとって最も重要な聖痕の力をレナに託したハヅキは一気に魔力を消耗した事で容体が悪化し、生命の源とも言える魔力を消耗した時点で彼女の肉体は死に誘われる。それでも最後の願いを告げるため、ハヅキは見えないはずの瞳をレナの顔に向け、涙を滲ませながら頼む。
「どうか……アイラを……あの子達を、救って……」
「あの子達……御祖母様!?」
最後に自分の娘の救済を願うと、レナの手を握りしめる力がなくなり、ハヅキは空を仰ぐように目を開いたまま命を落とす。最後の最後まで自分の娘の事を気にかけた彼女にマリアは言いようのない感情を抱き、レナは茫然とハヅキの死に顔を覗く。
(死んだ……そんな、何で……こんな事に)
自分を庇ったが故に死んでしまったハヅキにレナは無意識に涙を流し、触れ合った時間は短いがそれでもハヅキはレナの事を孫として認め、祖母として接していた。彼女の死に顔は自分の事を最後まで忘れずにいてくれたアリアの顔と被り、レナはまたしても自分の目の前で大切な人を失ってしまう。
「う、ああっ……ああああああああああっ!!」
声が抑えきれずにレナはその場でハヅキの右手を掴んで泣き叫び、そんな彼の姿を見るに堪えず、全員が視線を逸らす。その一方でマリアも冷たくなった母親の遺体を何時までも抱きしめ、目元に涙を流していた――
「御祖母様?」
「もう、目が見えま、せん……手を……」
「…………」
マリアに抱えられたハヅキの言葉にレナはすぐに彼女の元へ訪れると、差し出された右手を掴む。血塗れの掌は既に冷たく、徐々に彼女の肉体が死に近づいている事を嫌でも思い知らされる。周囲の人間たちは何も言葉に出来ずにレナとハヅキのやり取りを見守り、マリアは黙ってハヅキの左手を握りしめた。
娘と孫に両手を握りしめられたハヅキは掌越しに感じる感触に笑みを浮かべ、それと同時にこの場には存在しない二人の娘の事を想う。自分のせいで子供たちには大きな不幸を負わせた事にハヅキは負い目を感じていたが、同時に子供達と和解したいと思っていた。だが、このままでは自分が助からない事を理解したハヅキはせめて愛する娘の子供であるレナに自分の「力」と「願い」を託す。
「レナ……頼みが、あります……」
「御祖母様、もう喋らないで……」
「聞きなさい……貴方にしか、出来ない事……です」
「俺に……しか?」
祖母の言葉にレナは戸惑い、どうしてマリアではなく自分に頼むのかと疑問を抱くが、既にハヅキは視力を失い、手を握りしめる力も弱まっていた。それでもレナに自分の力を託すため、体内に残された魔力を右手に集中させた。
「受け取りなさい……これが、ハヅキ家が代々守ってきた力です」
「っ……!?」
ハヅキの右腕に「渦巻」を想像させる紋様が出現した瞬間、緑色の光がレナの掌に流れ込む。いったい何が起きているのかレナには理解できなかったが、ハヅキの手を通して魔力が流れ込み、やがてレナの右腕にもハヅキと同様の紋様が浮かんだ瞬間、ハヅキの腕に輝いていた紋様が消え去る。
「これは……!?」
「……風の、聖痕です。ハヅキ家の継承者のみに受け継ぐ事が許される力です」
聖痕という言葉にレナは過去にアイリスから教わった知識を思い出し、魔法の力を増幅する事が出来る特別な術式である事を思い出す。バルトロス王国の大将軍のレミアも所持しており、彼女の場合は十字架を想像させる紋様を額に宿していた。
――ヨツバ王国の中でもハヅキ家は三大貴族と称される程に王家からの信頼が厚く、歴代の当主は重要な地位を与えられていた。だが、ハヅキ家が重要視されている本当の理由はこの「聖痕」が関わっており、ハヅキ家の当主は代々この「風の聖痕」を継承していた。
どうしてヨツバ王国が聖痕の所有者を大切にしていたかというと、この力は魔法の効果を高めるだけではなく、聖痕の所有者の子供は非常に高い確率で優れた才能を持つ子供が生まれやすいと信じられていた。実際に当主であるハヅキを筆頭に現在のハヅキの家系であるマリアとキラウは魔法方面に優れた才能を持つ。魔法を不得手とするアイラでさえも格闘家や剣士としては非常に優秀のため、才気に溢れた人材と言える。レナに関してもアイリスの助言があったとはいえ、この年齢で普通ならばあり得ない技能や能力を習得している。
森人族の中に聖痕の所有者が現れたのはヨツバ王国が建国される以前の話であり、ハヅキ家の先祖である「アイラ・ハヅキ(初代)」は聖痕の所有者ではなかったが、歴代のハヅキ家の家系の人間は何らかの分野で優秀な功績を残していた。それだけにヨツバ王国は聖痕を所有するハヅキ家を重要視しており、他の守人家やミドリ家と同等に扱っていた。
「がはぁっ!?」
「母様!!」
「御祖母様!!」
ハヅキ家にとって最も重要な聖痕の力をレナに託したハヅキは一気に魔力を消耗した事で容体が悪化し、生命の源とも言える魔力を消耗した時点で彼女の肉体は死に誘われる。それでも最後の願いを告げるため、ハヅキは見えないはずの瞳をレナの顔に向け、涙を滲ませながら頼む。
「どうか……アイラを……あの子達を、救って……」
「あの子達……御祖母様!?」
最後に自分の娘の救済を願うと、レナの手を握りしめる力がなくなり、ハヅキは空を仰ぐように目を開いたまま命を落とす。最後の最後まで自分の娘の事を気にかけた彼女にマリアは言いようのない感情を抱き、レナは茫然とハヅキの死に顔を覗く。
(死んだ……そんな、何で……こんな事に)
自分を庇ったが故に死んでしまったハヅキにレナは無意識に涙を流し、触れ合った時間は短いがそれでもハヅキはレナの事を孫として認め、祖母として接していた。彼女の死に顔は自分の事を最後まで忘れずにいてくれたアリアの顔と被り、レナはまたしても自分の目の前で大切な人を失ってしまう。
「う、ああっ……ああああああああああっ!!」
声が抑えきれずにレナはその場でハヅキの右手を掴んで泣き叫び、そんな彼の姿を見るに堪えず、全員が視線を逸らす。その一方でマリアも冷たくなった母親の遺体を何時までも抱きしめ、目元に涙を流していた――
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