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都市崩壊編
本当は……
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「レナ……もう手を離してあげなさい」
「でも……」
「落ち着きなさい……もうその人を楽にしてあげなさい」
ハヅキの手を痛いほどに握りしめるレナをマリアとシズネが諭すと、仕方なくレナは手を離す。先ほどまで確かに自分を握りしめていたハヅキの手が地面に落ちて動かなくなり、マリアが開かれた母親の瞼を閉じさせる。その様子を見たシュンは歯を食いしばりながら視線を逸らし、他の人間はレナとマリアを気遣う。
「御祖母様……」
「レナ……こっち来る」
「クゥンッ……」
大切な家族を二度も亡くして茫然自失しているレナをコトミンが後ろから抱き寄せ、ウルも悲し気な表情を浮かべながら二人を毛皮の中に抱き寄せる。スラミンやヒトミンもレナを慰めるように体にすり寄り、シズネとダインとゴンゾウも傍に近寄る。
「ぷるぷるっ……」
「ぷるるっ……」
「レナ……今は泣いてもいいのよ」
「その……くそっ、こういう時になんて言えばいいのか分からないけど……無理するなよ!?悲しいときは泣いたっていいんだよ!!」
「そうだぞ。我慢しなくていいんだ……」
「レナたん……」
「兄貴……」
ティナとエリナも目元を涙で滲ませながらレナの様子を伺い、二人もハヅキとはそれなりに親交があった。厳しい人物ではあるが職務に忠実な森人族としてヨツバ王国の住民からも尊敬された存在であり、王家からの信頼も厚い人物だった。
しかし、今は悲しみに暮れるわけにはいかず、マリアは冷たくなった祖母の遺体を抱き上げながら空を仰ぐ。耳をすませば何処かで建物の崩壊する音や住民の悲鳴が聞こえ、地竜を倒したところで都市全体の事態は解決したわけではない。
「シュン、ジャンヌ、ロウガ、ゴウライ……貴方たちは周囲の探索を続けなさい。私は……この人をデブリ国王の元へ連れて行くわ」
「それなら俺が護衛をする……いいですよね?」
「好きにしなさい……それとハンゾウとシノビが戻り次第、私の元へ訪れるように伝えておきなさい」
『はっ!!』
マリアの言葉に4人は従い、それぞれが行動を開始する。その一方でマリアは放心状態に陥ったレナに顔を向け、今はレナの傍にいる仲間達に任せることにした。慰めたいのは山々だが、マリア自身も和解しかけていた母親の死には心を痛めており、今は一刻も早く遺体を安全な場所へ運んでおきたかった。
「……レナの事は貴方たちに任せるわ。落ち着いたら、氷雨のギルドに向かいなさい。私もすぐに戻るわ」
「分かったわ……その、貴女も辛いでしょうけど」
「下手な慰めはいらないわ……家族を失うのは初めてじゃないのよ」
「そう……」
シズネの言葉にマリアは冷たく返し、彼女は父親の死を直面している。しかし、シズネも幼少の頃に両親を失っており、二人の気持ちはよく理解できた。だからこそ黙ってはいられず、マリアに話しかける。
「それでも……余計なおせっかいかもしれないけど言わせてもらうわ。大切な人を失うのは辛い事は分かってる。でも、いつかは必ずその死を乗り越えないといけない事よ……」
「……知っているわ。痛いほどね」
「それなら……もう少しお母さんを優しく抱えなさいよ」
死んだ人間は戻らない、それは魔法が実在するこの世界でも常識の話であり、どれほど悲しもうと後悔しようとハヅキが生き返る事はない。そんな事は理解しているが、マリアは無意識にハヅキの肉体を強く抱きしめていた。自分の行動に気づいたマリアは戸惑い、同時に自分が想像していた以上に自分の中で母親という存在が大きかった事を自覚した。
正直に言えば母親であるハヅキの事はマリアは昔から苦手意識を持っていた。父親の事故の一件でハヅキとの仲は致命的な溝が出来たと思い込んでいた。しかし、彼女の死を目撃した事で自分の中に存在した母親への愛情に気づき、失って初めてマリアは母親の事を心のどこかでは求めていたことを理解する。
――母親の事を愛していたのかと問われればマリアは断言出来るほどに彼女の事を好いていたとは言えない。しかし、昔の事を許して普通の親子のように接したり、アイラやレナを交えてハヅキと分かりあいたいと考えていた。
だが、マリアの想いも虚しく両腕の中のハヅキの身体は冷たく、もう話すことも動くことも出来ない。マリアはやっと自分が母親の事を許したかったと気づき、無意識に歯を食いしばる。今更後悔しても遅く、それでも責めて彼女の遺体だけでも故郷に返して埋葬したいと考えたマリアはヨツバ王国の一行が避難しているはずの宿屋に向かおうとしたとき、不意に自分の前方に人影が存在する事に気づく。
「……あ?お前、いつの間に戻ってきたんだ?」
シュンの疑問の声が響き渡り、マリアは母親の身体から視線を向けると、そこには自分の側近であるカゲマルが立っている事に気づく。彼はシュンの言葉が聞こえていなかったかのように無言でマリアの元に近寄り、その場に跪く。
「マリア様……只今戻りました」
「シノビ?どうして貴方がここに……」
「あっ!?」
唐突に自分の元へ姿を現しがカゲマルにマリアは声を掛けた瞬間、レナの傍に立っていたエリナが突拍子もない大声を上げ、姿を現したカゲマルを指さして目を見開く。彼女の態度に全員が疑問を抱くが、エリナの隣に立っていたティナも何かを思い出したように驚いた表情を浮かべる。
「えっ……あの人っ!?」
「ティナ?」
「だ、駄目です!!その人に近づいちゃ……!?」
「おい、どうしたんだよ急に!?」
「一体どうしたというんだ?」
唐突に慌てふためくエリナにダインがゴンゾウが落ち着かせようとすると、エリナはカゲマルを指差して叫び声を上げた。
「――その人です!!その男の人が闘技場でティナ様に嘘をついて兄貴の元へ呼び寄せた冒険者です!!」
「でも……」
「落ち着きなさい……もうその人を楽にしてあげなさい」
ハヅキの手を痛いほどに握りしめるレナをマリアとシズネが諭すと、仕方なくレナは手を離す。先ほどまで確かに自分を握りしめていたハヅキの手が地面に落ちて動かなくなり、マリアが開かれた母親の瞼を閉じさせる。その様子を見たシュンは歯を食いしばりながら視線を逸らし、他の人間はレナとマリアを気遣う。
「御祖母様……」
「レナ……こっち来る」
「クゥンッ……」
大切な家族を二度も亡くして茫然自失しているレナをコトミンが後ろから抱き寄せ、ウルも悲し気な表情を浮かべながら二人を毛皮の中に抱き寄せる。スラミンやヒトミンもレナを慰めるように体にすり寄り、シズネとダインとゴンゾウも傍に近寄る。
「ぷるぷるっ……」
「ぷるるっ……」
「レナ……今は泣いてもいいのよ」
「その……くそっ、こういう時になんて言えばいいのか分からないけど……無理するなよ!?悲しいときは泣いたっていいんだよ!!」
「そうだぞ。我慢しなくていいんだ……」
「レナたん……」
「兄貴……」
ティナとエリナも目元を涙で滲ませながらレナの様子を伺い、二人もハヅキとはそれなりに親交があった。厳しい人物ではあるが職務に忠実な森人族としてヨツバ王国の住民からも尊敬された存在であり、王家からの信頼も厚い人物だった。
しかし、今は悲しみに暮れるわけにはいかず、マリアは冷たくなった祖母の遺体を抱き上げながら空を仰ぐ。耳をすませば何処かで建物の崩壊する音や住民の悲鳴が聞こえ、地竜を倒したところで都市全体の事態は解決したわけではない。
「シュン、ジャンヌ、ロウガ、ゴウライ……貴方たちは周囲の探索を続けなさい。私は……この人をデブリ国王の元へ連れて行くわ」
「それなら俺が護衛をする……いいですよね?」
「好きにしなさい……それとハンゾウとシノビが戻り次第、私の元へ訪れるように伝えておきなさい」
『はっ!!』
マリアの言葉に4人は従い、それぞれが行動を開始する。その一方でマリアは放心状態に陥ったレナに顔を向け、今はレナの傍にいる仲間達に任せることにした。慰めたいのは山々だが、マリア自身も和解しかけていた母親の死には心を痛めており、今は一刻も早く遺体を安全な場所へ運んでおきたかった。
「……レナの事は貴方たちに任せるわ。落ち着いたら、氷雨のギルドに向かいなさい。私もすぐに戻るわ」
「分かったわ……その、貴女も辛いでしょうけど」
「下手な慰めはいらないわ……家族を失うのは初めてじゃないのよ」
「そう……」
シズネの言葉にマリアは冷たく返し、彼女は父親の死を直面している。しかし、シズネも幼少の頃に両親を失っており、二人の気持ちはよく理解できた。だからこそ黙ってはいられず、マリアに話しかける。
「それでも……余計なおせっかいかもしれないけど言わせてもらうわ。大切な人を失うのは辛い事は分かってる。でも、いつかは必ずその死を乗り越えないといけない事よ……」
「……知っているわ。痛いほどね」
「それなら……もう少しお母さんを優しく抱えなさいよ」
死んだ人間は戻らない、それは魔法が実在するこの世界でも常識の話であり、どれほど悲しもうと後悔しようとハヅキが生き返る事はない。そんな事は理解しているが、マリアは無意識にハヅキの肉体を強く抱きしめていた。自分の行動に気づいたマリアは戸惑い、同時に自分が想像していた以上に自分の中で母親という存在が大きかった事を自覚した。
正直に言えば母親であるハヅキの事はマリアは昔から苦手意識を持っていた。父親の事故の一件でハヅキとの仲は致命的な溝が出来たと思い込んでいた。しかし、彼女の死を目撃した事で自分の中に存在した母親への愛情に気づき、失って初めてマリアは母親の事を心のどこかでは求めていたことを理解する。
――母親の事を愛していたのかと問われればマリアは断言出来るほどに彼女の事を好いていたとは言えない。しかし、昔の事を許して普通の親子のように接したり、アイラやレナを交えてハヅキと分かりあいたいと考えていた。
だが、マリアの想いも虚しく両腕の中のハヅキの身体は冷たく、もう話すことも動くことも出来ない。マリアはやっと自分が母親の事を許したかったと気づき、無意識に歯を食いしばる。今更後悔しても遅く、それでも責めて彼女の遺体だけでも故郷に返して埋葬したいと考えたマリアはヨツバ王国の一行が避難しているはずの宿屋に向かおうとしたとき、不意に自分の前方に人影が存在する事に気づく。
「……あ?お前、いつの間に戻ってきたんだ?」
シュンの疑問の声が響き渡り、マリアは母親の身体から視線を向けると、そこには自分の側近であるカゲマルが立っている事に気づく。彼はシュンの言葉が聞こえていなかったかのように無言でマリアの元に近寄り、その場に跪く。
「マリア様……只今戻りました」
「シノビ?どうして貴方がここに……」
「あっ!?」
唐突に自分の元へ姿を現しがカゲマルにマリアは声を掛けた瞬間、レナの傍に立っていたエリナが突拍子もない大声を上げ、姿を現したカゲマルを指さして目を見開く。彼女の態度に全員が疑問を抱くが、エリナの隣に立っていたティナも何かを思い出したように驚いた表情を浮かべる。
「えっ……あの人っ!?」
「ティナ?」
「だ、駄目です!!その人に近づいちゃ……!?」
「おい、どうしたんだよ急に!?」
「一体どうしたというんだ?」
唐突に慌てふためくエリナにダインがゴンゾウが落ち着かせようとすると、エリナはカゲマルを指差して叫び声を上げた。
「――その人です!!その男の人が闘技場でティナ様に嘘をついて兄貴の元へ呼び寄せた冒険者です!!」
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