不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ

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放浪編

何が起きたのか

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「もしも~し、生きてますか~?」
「うっ……その声、ホネミンか?」
「ある意味惜しいですけど違います。貴方の愛する天使のアイリスですよ」
「アイリス……?」


耳元に聞きなれた声が響いたレナが目を覚ますと、そこには夢の世界でしか遭遇出来ないはずのアイリスの姿が存在した。どうして彼女が見えるのかとレナは驚くが、いつの間にか自分の周囲に白霧のようにぼやけた世界に存在する事に気づく。


「あれ、ここってもしかして……」
「はい、狭間の世界ですよ。あ、正確に言えばそれに模した世界なんですけどね」
「ややこしいな……つまり、夢の世界というわけか」
「そういう解釈で間違ってないです」


過去に何度か訪れた事があり、レナの夢を通して彼女は姿を見せる事が出来る。しかし、この世界にいるという事は現実のレナは意識を失っていることを意味しており、一体何が起きたのかをアイリスに尋ねる。


「アイコン、現状を報告しろ」
「誰がアイコンですか。オ〇コンと名前を合体させないでください」
「待たせたなっ!!」
「その有名な台詞も止めてください。この作品を終わらせる気ですか?」


何故か久しぶりに感じるアイリスとの邂逅にレナは雑談を行いながらも起き上がろうとすると、何故か身体が上手く動かずにアイリスの元へ倒れこむ。


「うわっ!?なんだっ?」
「いやん、そんないきなり人の胸元に飛び込むなんて……レナさんも遂に年齢相応の性欲の虜になったんですか?」
「ちゃうわい……でも、意外と大きいな」
「ああ、いやん……って、天使相手に何をしてるんですか貴方はっ」


アイリスの意外と豊かな乳房に包まれながらもレナは自分の身体を見つめ、特に異変は無いことを確認するが、何故か無重力の空間にいるように上手く身体が動かない事に気づく。以前にこちらに訪れたときは得に身体に異常はなかったが、今回は妙に身体が動きにくい。


「なんか、身体が自由に動かないんだけど……何が起きてるの?」
「その前にちょっといいですか?ああ、やっぱり……急にレナさんとの繋がりが弱まったので不思議に思っていたんですが、やっぱりこれを身に着けていましたか」
「え?どういう事?」


アイリスはレナの右腕を掴むと、彼女が掌を翳した瞬間にレナの右腕に「風の聖痕」が現れる。夢の世界でも聖痕が発言した事にレナは驚くが、アイリスは難しい表情を浮かべる。


「まさかレナさんがこの聖痕を受け継ぐ事になるとは……盲点でしたね」
「どういう意味?この聖痕のせいで俺の身体に異変が起きているの?」
「そういう事ですね。この聖痕はレナさんの物ではなく、もともとはハヅキが宿していた力です。分かりやすく言えば他人から埋め込まれた力です」
「それがどうかしたの?」
「いいですか?基本的に私がこちらの世界に干渉できるのはレナさんのような別世界の人間の魂だけです。あ、勇者のような存在は別ですけど……ともかく、この聖痕は受け継ぐ際に前の所有者の魂の一部を宿します。そのせいでレナさんの魂に影響を受けて上手く交信出来ない状態に陥っているんです」
「魂……」


レナは風の聖痕を発動させた際に脳内に響いたハヅキの言葉を思い出し、あの時の言葉は聖痕に宿っていたハヅキの魂がマリアの危機を救うために伝えたのかと考える。しかし、ハヅキの声は別れを告げたので彼女の魂も完全に消えたのかと思い込んでいたが、アイリスによるとレナの宿した聖痕には未だにハヅキの魂の一部が残っているという。


「本来、聖痕を受け継ぐ儀式には順序が存在します。ですけどハヅキはその順序を無視してレナさんに聖痕を渡してしまったんです。だから変な形でハヅキの魂が未だに聖痕の中に宿っていますね」
「じゃあ、御祖母様とはまた話せるの?」
「いえ、残っているといっても魂の残滓程度です。ハヅキの意識を形成するほどの力はないでしょう。問題なのはその魂の残滓がレナさんの魂に付着していることで私との交信が上手くいかないんです」
「そうなのか……どうにもならないの?」
「時間が経過すればいずれはハヅキの魂の残滓も消えるはずです。だけど、私の予想だと一か月ぐらいは掛かると思いますね……何とかレナさんの意識だけをこの世界に呼び寄せる事が出来ましたけど、目が覚めてもしばらくは私との交信が出来ないと思ってください」
「そうなのか……なんか、最近そういう事が多いな」


昔と比べてアイリスと交信出来ない事態が多くなり、それでも夢の世界を通せば彼女と会える事だけは幸いと言える。ここでレナはやっと自分の状況を思い出し、一体何が起きたのかを彼女に問いただす。


「アイリス、俺達の何が起きた?というより、どうして途中から交信出来なくなったの?」
「う~ん……説明したいところなんですが、それほど時間に余裕はないんですよ。もうしばらくすればレナさんは現実世界で目を覚ますでしょうし」
「なら、重要な事だけでいいから教えてよ。皆は無事なの?」
「はい、それは保証します。少なくともレナさんと交流のある方々は生きてますよ……但し、かなり厄介な問題に陥っているようですが」


意味深な発言を行うアイリスにレナは疑問を抱き、普段の彼女ならばどんな質問もはっきりと答えるのに今回のアイリスはどのように説明を行えばいいのか悩んでいる様子だった。
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